最終話 業を背負われた者は夕陽を見る
最後の場所。最後の魔物。最後の砦。カースドラゴ。思ったよりも背は低い。体格は私の半分背や胴体が大きい。4本の腕。短い足。
「これがカースドラゴ」
魔力が今までの比ではない。今まで戦ってきた魔物では間違いなく最強だ。
「先手は切らせてもらうわよ!“エレメンタルアイス”(初級魔法)!」
カースドラゴは2つの腕でアリシェの魔法を切り裂いた。早すぎて何した見えなかった。それだけではない。更に見えない速度でアリシェに体当たり。アリシェの体は岩肌にめり込むほど勢いよく吹き飛ばされた。
「先にやられたのは私の方か」
更にカースドラゴは目に見えない速度でアリシェにいた場所に蹴りを入れこむ。アリシェはその場から逃げ出して無事だった。
「確かに人間では追いつけない速度の速さね…」
カースドラゴの追撃。蹴りと打撃の5連撃。宙に打ち上げられ地面に叩きつけられとどめを刺す。一連の動きをまるで一瞬のようにやり遂げる。
「かはっ……」
化け物すぎる。今までの魔物が霞むように弱く感じる。私が倒してきた魔物はカースドラゴと比べて力の差がありすぎる。
「まずい……」
地面に叩きつけられたアリシェに、カースドラゴは空中で魔力を片手に込めている。大技が来る。
「あれはまずい……」
あの技をくらえば確実に死ぬ。だが、体動かない。カースドラゴは下降して魔力を一気に解き放って大爆発を起こした。
──何もできなかった。
『この3年間。洞窟の中で過ごして、力をつけたはずだった』
──結局のところ。私は私のままで弱かったのね。
『他の魔物は全部倒して、最後の魔物もやれると思ってた』
──期待も良いところね。人の人生は一度きり。最後の最後であなたは死んでしまうのよ。
『私には夢がある。会いたい人がいる』
──あなたは死ぬの。諦めるしかない。
『死にたくないよ』
──そうね。あなたは、頑張ったものね。頑張って生きてきた。けど、努力は報われるものじゃないの。時には命すら裏切ることもあるの。
『もう少しで外の世界に行けるのよ』
──もうあなたは空を見ることはない。
『ハクヤに笑顔で会いたいのよ。私のお兄ちゃんなんだから』
──もうあなたは誰にも会えない。このまま命が尽きて死ぬの。
『嫌だ』
──嫌だじゃない。
『諦めたくない』
──諦めが悪くても運命は変わらない。
『変えてやる!』
──あの魔物に一方的にやられ、死にかけたのあなたがどうやってまだ勝てるというの。
『私はまだ本気じゃない!まだ私は戦ってない!すべての力を引き出して、最後の魔物この手で討つ!この絶望から這い上がる!』
──あなたは女であること。人間をあることをやめれるの。
『そうなってもいい。私は生きたい!』
──じゃあ、あなたに翼をあげる。この絶望から這い上がる翼を。
「“ティアリート”(禁断技)」
力が溢れ出る。アリシェは黒に染まった翼を広げて、爆発を反射させた。
「今度は…私から…行かせてもらう!」
カースドラゴの腹に両足で蹴りこみ吹っ飛ばす。
「“エレメンタルバースト”(上級魔法)」
更に吹き飛んだ先に魔法を投げつけてカースドラゴに追撃を入れる。
カースドラゴは受け身を取り、攻撃を振り払ってアリシェに一瞬で詰め寄る。4本の腕でアリシェを殴りかかる。対してアリシェは4本の腕の攻撃を2つの腕だけでガードする。
「遅い!」
アリシェは隙をついて左拳でカースドラゴの顎に目掛けて殴った。後ろに吹き飛ばされ距離ができるが、カースドラゴは意地でもアリシェに詰めより激しく攻撃の手を緩めない。
「くっ……!」
2本の腕では止めきれない。アリシェも攻撃しなければまた一方的にやられるだけだ。
「加速…」
アリシェはカースドラゴの目を眩ますほど更に一瞬だけ早く動いて目の前から姿を消す。カースドラゴは左右を見回すが、アリシェの姿はない。
「“セミエレメンタルソード”(中級技)」
背中に周り、石のナイフに力をこめて、カースドラゴの背中を大きく傷つけた。カースドラゴは傷ついても狼狽えず、振り返って口から蒼いブレスを吐く。
「熱っ!?」
少し浴びたか、この姿だとあまり焼き焦げることはない。そういう自信がある。
「“真空螺旋撃”(上級技)」
アリシェは地面に手をつけ、背を低くしてカースドラゴの体に技をあらゆる方向に走り抜けて入れ込む。
「もう私の方が速いでしょ」
だが、カースドラゴも負けじとアリシェに距離を詰めてくる。今度は速さでの力のぶつかり合いだ。
「…負けない!」
ただの人では到底追いつけない速度。目に追いつけない速度でアリシェとカースドラゴは激しくぶつかる。
「“エレメンタルショット”(中級魔法)!」
魔物も魔力を使い、アリシェの魔法と交差する。お互いに魔法をくらって、それでも互いに立っていた。
「はあ…はあ……」
手強い。力でも速さでも。今の私ならとは思ったけど、まだカースドラゴも負けてはいない。
このカースドラゴはまだ息を切らしていない。私はこの力にリミットがある。いつまで持つかはわからない。なら、勝負してみるしかない。
「私の全魔力を。私の本気をぶつける」
今までに喰らった魔物の数で、私は人間にしてはとてつもない魔力を秘めたのは間違いない。その魔力を全て使い。カースドラゴを討つ。それしか勝つ方法がない。
「覚悟しろカースドラゴ!!」
両手で魔力を全て吐き出す。その魔力の量はカースドラゴが秘める魔力の量を遥かに越える。カースドラゴは魔力で反撃することは諦め、守りにはいる。この限りある空間の中では避けれるとは思えなかったのだろう。
「“フルエレメンタルソード”(禁断技)!」
全ての魔力を解き放ち、魔力で身を固めているカースドラゴに斬撃を放つ。
「うおぉぉぉー!!!」
まだ魔力は引き出せる。無限に続く巨大な魔力の一撃でカースドラゴの守りは崩れた。縦にカースドラゴの身体を貫き、顕現させた剣の魔力は全て暴発して消えた。
「もう無理…体が動かない」
カースドラゴは立っている。私は…勝てなかったのね。翼は今の力を使い果たしたせいで消えてしまっている。
「…あれ、カースドラゴ。さっきからなんで動かないんだろ」
すると、体の半分(頭のある方)が突如消えた。
「…まだだ」
意識は朦朧とする。この魔物を喰わないと、私はまだ寝るわけにはいかない。
「72匹目……」
アリシェは最後の力をふり絞ってカースドラゴを喰らった。
「君がここから抜け出すなんて思ってもいなかったよ」
久しぶりに私は夕陽を見た。崖の上から見る大空が夕陽でも眩しい。目の前には3年ぶりの対面となるゴウがそこにいた。
「僕は君の業だよ。僕がやってきたことは罪だ。君から逃げるわけにはいかない」
「そう……」
私のやることは今でも変わらない。私はこの男に解放されたかった。
「僕を裁く前に、最後に君の力を見せてほしい」
アリシェの目の前に剣が投げ飛ばされた。地面刺さった剣を私は抜き取る。
「行くよ」
ゴウの動きは遅く、鈍く見える。私がここで身に付けた力と比べたら、ゴウの剣を打ち砕くのは簡単なことだ。
「…これが君の力か。恐れいったよ」
「……言い残すことはある?」
このまま、ゴウを殺す。でも、何か1つ言葉を私は聞きたい。
「僕の業はここまでだ。僕が君にやれることはできたと思ってる。君は僕から解放された。君なら夢を叶えられる」
「……さようなら。ゴウ」
この言葉が聞きたかったわけじゃない。私の話なんて、本当はどうでもいい。
「剣を突き刺して、最後に聞くけど…あなた、生きててどうだった」
「……苦しかった…よ。僕は…独りだった…孤独に耐えて…痛みに耐えて。僕は…人の温もりを…知りたかった」
「……そう。本当は人に抱き締められたかったんじゃないの。こういうふうに」
「……うん。そうだね。けど、僕は罪を積み重ねすぎた。君を……恨んで…」
「もういいよ。あなたの覚悟。それは私にとって大きいものだよ。人生を私に捧げた。君のことは憎いけど、私はあなたの業を背負って生きる覚悟をした」
「アリシェ……」
「…だから、死んでくれてありがとう。さようなら。安らかに……ゴウ…」
彼は私の胸の中で息を止めた。寂しかったのは、私も同じだ。何となく、哀れな気がして、抱き締めてしまった。憎かった。殺したかった。それなのに。
「アリシエルともここでお別れね。今までありがとう」
彼の墓にアリシエルの皮で服にして着ていたが、それを脱いで剣に付けて旗のように立てる。アリシエルも彼と同じ場所に一緒に置いていく。もう私は、業から解放されたのだから。
「山を降りよう。アリシェの旅はまだ始まったばかり。お兄ちゃんにまた会えるかな」
サイハテ新章 end
この作品は、このサイトでの初投稿の作品となります。これを書いてる作者本人の感想ですが、なんでこんな物語を作ったんだろ。しかもこれを初投稿作品にするなんて。珍しく完結する作品を書いたので投稿してみようとしたのがきっかけですが、これを書いた作者本人は面白いと思って書きましたが、好みの作品ではありませんでした。物語の内容が黒かったのが原因です。まとめて投稿したので、だいぶ時間もかかって疲れました。誰にも自分は作品を評価されたことがないので、よければコメントして評価してください。良い所だけでなく悪かった所も受け付けます。ツイッターも佐々薙慎という名前で作りましたのでよろしくお願いします。では、次回作は何作ろうかな。




