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「勝負よ」

更新が遅れてしまって申し訳ありません……。

 まずはアレックスのチームのボールから試合が始まった。これは当然の結果だったが。

 月夜は相手チームの選手をひとりひとり素早く観察した。

 やはりアレックス以外に脅威になりそうな選手はいない。つまり彼女を抑え込めば勝機はあるかもしれない。

 パスが回される。思いのほか速い。あっという間にゴール下まで運ばれてしまった。しかもボールを持ったのは……。


「来るよ、止めて!!」


 翠が月夜のチームの二人に指示を出した。二人がアレックスにダブルチームでついた。だがアレックスはそんなことは全く意に介さずにそのままゴールに向かって跳んだ。


 ゴン!! と高い音が響いた。アレックスはそのまま片手でダンクをしたのだ。シュートが決まった今もゴールはギシギシと痛々しい音を立てていた。


「うわあ……」

「マジかよ」

「高校生なんだよね? 高校生なんだよね!?」

「いきなりきついな~」

 ギャラリーは思い思いに感想を口にする。アレックスが長い手足を有しているとはいえいきなりダンクが来るとは月夜も思わなかった。


 スローインして再び試合を進める。

 だが、さっきのダンクで士気が下がったせいかこちらの選手の動きは鈍い。逆に向こうのチームは勢いづき、流れに乗っていた。


 前半終了時のスコアは5対12。試合は残り五分しかないためそこで逆転できなければ負けてしまう。

 月夜のチームは誰も何も話そうとしない。重苦しい雰囲気がそこを支配していた。

「朝日さん……」

 縋るような視線を翠が投げかけてくる。他の選手も同様だった。

 月夜は、一度息を吐くと自分がまとめた考えを話した。

「とりあえず、アレックスさんを私が止める。そこから組み立て直そう」

 話すことが得意ではないため、たったこれしか言えなかった。翠たちは少し戸惑いつつもその作戦に従うことにした。


 後半戦が始まった。月夜がボールを持つと翠たちはそれぞれの役割をこなした。

「これは……アイソレーション?」

 アイソレーションとは特定の選手のために残りの選手がスペースを作ることである。今、月夜とアレックスは孤立している状態にある。


「勝負よ」

「おっ、いいね。来い!!」


 月夜はいきなりフルドライブを仕掛けた。それは確かに速かったが、アレックスを振り切れるほどではなかった。

 アレックスはボールを奪おうとして手を伸ばした。が、それは虚空をつかむだけに終わった。フルドライブをしていたはずの月夜が切り返していたからだ。


「あっ!?」

 反応が遅れる。アレックスが体勢を立て直す頃には既に月夜の後ろ姿は遠くにあった。月夜はそのままゴールに突っ込む。

「させない!!」

 だがアレックスの戻りは速かった。そしてシュートブロックに跳ぶ。その体格で月夜の視界からゴールが見えなくなってしまった。月夜は体を倒してシュートをする。大樹との練習中にも披露したダブルクラッチという技だ。ボールはリングをくぐっていった。


 今度はアレックスのチームの攻撃だ。前半同様、速いパス回しで攻めるつもりだった。しかし月夜がボールをスティールした。攻守が逆転する。

 再び月夜がドライブで切り込む。だがさっきの攻撃を受けたせいでアレックス達の対応は早かった。アレックスを含め二人で月夜にダブルチームだ。

 月夜がドライブを止めた。ここからの選択肢はシュートかパスのどちらかだ。でもまさかこれだけ離れていていきなりシュートは――


「!?」

 月夜はシュート体勢に入っていた。咄嗟にアレックスはブロックをしようとする。

 しかし月夜の狙いはアレックスに飛ばせることだった。ブロックに跳んだアレックスの股を抜くように月夜はパスを出す。その先には翠が走り込んでいた。そのままレイアップを決める。


 ここまでくればアレックスのチームの動揺は隠せないものになっていた。シュートははずれ、ファンブルをし、凡ミスが増えた。

「ちっ!!」

 舌打ちをしたアレックスが再び月夜のマークをする。状況としてはさっきと似ている。ドライブを止めた月夜には、シュートかパスしかない。

 月夜はいきなりシュートを放った。


(!! さっきのプレーのせいで……!!)

 パスを出すかもしれないと的外れなことを予測していた。ノーフェイクだ。しかもスリーポイントだった。


「同点!?」

「すげえ……なにあれ!?」

「しかもちょー美人じゃん!!」


 そう、これで同点。これがアレックスを本気にさせた。

 スローインでボールをもらった瞬間、アレックスはフルドライブをした。

 今までで一番速い。翠を含め、月夜以外の四人はあっさり抜かれてしまった。残りは月夜ただ一人。

 アレックスのドライブはまだ続いている。月夜はスティールを試みた。だがアレックスはロールをし、そのままダンクを決めた。


「もう負けないよ。あなたには」

 アレックスは完全に月夜をライバル視していた。そしてさっきのアレックスの発言は月夜の闘争心に火をつけた。


「なんか楽しそうだね、朝日さん」

「ええ。楽しいわ」

 勝つか負けるか分からない試合が月夜は好きだった。高揚感に支配されて、試合が終われば結果に関わらず満足感が残る。きっとこの試合もそうだ。

 そこからは月夜とアレックスによる技の応酬だった。月夜が点を決めれば、次はアレックスが決める。それが交互に繰り返された。


「なんか……」

「いい試合だな……」

「こんなのめったに見られないよ……」

 二人のプレーは火花を散らし、ギャラリー達の心を虜にした。着々と時間は減り続け、残り時間はあと一回の攻撃で終わるだろうというところにまでになっていた。


 18対20。月夜の攻めが勝てば月夜のチームが、アレックスが守り切ればアレックスのチームが勝つ。

 スリーポイントを警戒してアレックスのチームの二人が月夜のマークについた。だが翠がスクリーンをかけたことで月夜はドライブで切り込めた。


 すぐさまアレックスが飛び出した。今のアレックスとの一対一では勝てないかもしれない。月夜は捕まる前にパスを出した。中にいた味方はパスを受け取りシュートを放とうとした。だがこれにもアレックスは追いついた。

「こっち!!」

 月夜が叫んだ。パスを受け取った月夜は自分のゴールの方へ戻っていった。

「な……何をする気……?」

 だが、すぐに狙いに気付いた。月夜はアレックスが追いつけないほどにゴールから遠ざかりそこからシュートをするつもりなのだ。


(そんな……スリーポイントラインから遥かに遠い……!!)


 この距離からではゴールに届かせるだけでも難しい。渾身の力で月夜はシュートを放つ。アレックスは月夜に目を奪われた。アメリカではストリートのバスケをやっていたが、そこにいるほとんどの人間は自分らしさのスタイルを見つけているがために型にはまらない動きをする。

 しかし、月夜のフォームはとてもきれいで……洗練された正統派だった。


 高弾道のシュートはリングに吸い込まれるようにして決まった。そして同時に試合も終了した。


バスケ難しいです。

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