表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/4

第4話 財団に呼ばれた俺の隣に、なぜか先輩がいた件

研究補助プログラムに応募しました。

三日後。

審査が通りました。

主人公は、

「そんなに早いものなんだな」

くらいにしか思っていません。

周囲は少し困っています。

特に御堂先輩は、たぶん本人が思っている以上に困っています。

よろしくお願いします。


 応募書類を出したのは、プログラムの案内をもらった翌週の月曜日だった。


 財団のWebサイトに記載されていたフォームに必要事項を入力して、レポートのPDFを添付して、送信した。


 作業時間は三十分くらいだったと思う。




 で、その三日後の木曜日。




 浅野先生から電話が来た。




---




「神木透くん、ですね」




「はい」




「浅野です。先日お会いした」




「覚えています」




「書類、拝見しました。審査を通過しました。おめでとう」




 俺は少し間を置いた。




「……三日で審査が終わるんですか」




「あなたの場合はね」




 浅野先生の声が少し笑っていた。


 静かな笑い方は、面談のときと同じだった。




「来週の土曜日、財団の建物に来られますか。事前のオリエンテーションをしたいので」




「はい」




「場所はメールで送ります。あと一つ、確認させてください」




「なんですか」




「あなたの学校の生徒会長、御堂鈴音さんという方ですね」




 俺は少し意外に思った。




「そうです。なんで先輩の名前が」




「彼女から連絡をいただいたんですよ」




「……先輩が?」




「外部機関が生徒に接触する場合は学校側を通す慣例があるそうで、窓口として連絡をくださいました。熱心な方ですね」




「そうですか」




「せっかくなので、当日は一緒に来てもらえますか。こちらも学校側との連携の話をしたい部分があって」




「俺から先輩に伝えればいいですか」




「お願いします」




 電話が終わった。


 俺は少し考えてから、御堂先輩にメッセージを送った。




 *「財団のオリエンテーションが来週の土曜日にあります。浅野先生から、先輩も一緒に来てほしいと言われました」*




 返信は三分で来た。




 *「わかった。集合場所と時間を教えて」*




 早かった。


 なんかずっと画面を見てたのかな、と思ったけど、まあ先輩は忙しい人だからそういうことはないだろう。




 俺はメールで届いた住所を転送した。


---


 土曜日の朝、待ち合わせは最寄り駅の改札前にした。


 約束の時間の五分前に着いたら、御堂先輩はもう改札の前に立っていた。


 制服じゃなくて私服だった。


 白いシャツに、薄いベージュのジャケット。


 なんか、いつもより少し大人っぽく見えた。




 ……別に、それが何かってわけじゃないけど。




「来た」




「おはようございます」




「おはよう。電車、次で来るから」




 先輩が歩き出したので俺もついていった。


 ホームで並んで待ちながら、先輩が口を開いた。




「緊張してる?」




「してないです」




「そう」




 先輩が少し俺を見た。




「……本当に?」




「本当に」




「なんで」




「なんでって言われても。会って話すだけじゃないですか」




「財団の研究員と話すんだけど」




「先日も話しましたし」




 先輩が前を向いた。


 小さく息を吐いた。




「……私は少し緊張してる」




「先輩が?」




「あなたじゃなくて私が、ね」




 俺はそれが少し意外だった。




「先輩、すごい人じゃないですか。生徒会長で、いろんな外部の人と話してるって言ってたし」




「それはそう。でも今日はちょっと違う」




「何が違うんですか」




 電車が来た。


 先輩が乗り込みながら、小さく言った。




「別に」




 またその返事だった。


 俺は乗り込みながら思った。


 先輩の「別に」はたぶん、「答えたくない」と「答えが自分でもよくわからない」の二種類あるな、と。




 今日のはどっちだろう。




 まあ、聞いてもたぶん「別に」と返ってくるだろうから、やめた。


---


 財団の建物は、大学のキャンパスに隣接した場所にあった。


 古い建物じゃなくて、ガラス張りの割と新しい感じの建物だった。


 入口前の看板に《国立青少年科学振興財団》と書いてある。




 俺と先輩は門の前で立ち止まった。




「大きいですね」




「うん」




「思ってたより」




「私も思ってたより」




 先輩が財団の建物を見ながら、静かに言った。


 その横顔がなんか、いつもと少し違った。


 真剣な顔じゃなくて、なんか……少し、どきどきしてる顔に見えた。




 俺はそのことを口に出さなかった。


 言ったら「別に」か「うるさい」のどちらかが返ってくるだけだと思ったので。




「行こう」




「はい」


---


 受付で名前を告げたら、田村さんが出てきた。


 面談のときと同じ女性だ。




「神木くん、いらっしゃいました。こちらが御堂さんですか」




「はい。生徒会長の御堂鈴音です。ご連絡させていただきました」




 先輩がすっと頭を下げた。


 俺の横にいる人が同じ先輩なのに、なんか急にきりっとした。




「ご丁寧にありがとうございます。浅野も楽しみにしておりまして」




「こちらこそ、よろしくお願いします」




 田村さんが俺を見た。




「神木くん、今日は別に難しいことはないので安心してくださいね。プログラムの説明と、研究テーマのヒアリングが主な内容になります」




「わかりました」




「では、こちらへどうぞ」




 田村さんが廊下を案内してくれながら歩いた。


 壁に額縁に入った写真が並んでいて、プログラムの過去参加者らしい高校生たちが写っていた。




 みんな難しい顔をして、何かの機器の前に立っている。




 先輩がその写真を見ながら歩いていた。




 俺は少し考えた。


 やっぱり先輩は今日、いつもと違う。




---


 案内されたのは、中くらいの広さの部屋だった。


 会議室とも違う、なんか研究所っぽい雰囲気がある。


 丸いテーブルに椅子が四つ。




 浅野先生が既に座っていた。




「来たね。座って」




 俺と先輩が向かいに座った。


 田村さんも端に座った。




「改めて、プログラムへの参加、おめでとう」




「ありがとうございます」




「御堂さんも来てくれたんですね。連絡してくれてありがとう」




「いえ、学校として責任を持って関わるべきだと思いまして」




 先輩がまた真剣な顔で答えた。


 浅野先生が少し微笑んだ。




「頼もしいですね。今日はプログラムの説明の後、神木くんの研究テーマについて少し話したいと思っています。御堂さんにも一緒に聞いていただけると助かります」




「はい」




 浅野先生がテーブルに資料を広げた。


 プログラムの概要が書いてある。




「まず全体像を説明します。このプログラムは年間を通じて行うもので、参加者には担当の研究員がつきます。月一回、ここで面談をして研究の進捗を確認します。費用は財団が負担するので、神木くんの持ち出しはありません」




「研究テーマは自分で決めるんですか」




「基本的にはそう。ただ、今日のヒアリングで方向性を決めるお手伝いをします」




「なるほど」




「あなたが花粉のレポートで使った分析手法、あれを発展させる方向が一番自然だと思っているんですが、どう思いますか」




 俺は少し考えた。




「花粉の研究を続けるってことですか」




「花粉に限らなくてもいい。気流と粒子の分布、という広いテーマで考えると、応用できる分野はかなり広いんです。医療、建築、環境……いろいろある」




「俺には医療とか建築とかはよくわからないですが」




「わからなくていいよ。あなたはあの式をもっと精密にすることを考えてくれればいい。周辺の知識は担当の研究員がサポートします」




 俺はそれを聞いて、少し整理した。




「式を精密にする、というのは具体的にどういうことですか」




「今のレポートだと、計測ポイントが限られていて、値の誤差が出る場面があります。その誤差の原因を特定して、修正する」




「なるほど」




「気になる?」




「……はい」




 浅野先生が少し笑った。




「じゃあそれでいこう」




 そんなに簡単に決まるのか、と思ったけど、「はい」と答えた。


---


 説明が一通り終わって、田村さんがお茶を出してくれた。


 少し和んだ雰囲気になって、浅野先生が御堂先輩を見た。




「御堂さん、一つ聞いてもいいですか」




「はい」




「彼のこと、最初に気づいたのはどのタイミングですか」




 先輩が少し目を開いた。


 俺も少し意外だった。




「……自由研究の提出後に、学校側で生徒の研究を記録する作業をしていまして。そのとき、神木くんのレポートを見ました」




「読んで、何か思いましたか」




「……正直に言っていいですか」




「どうぞ」




 先輩が少し間を置いた。




「最初、誰かのをコピーしたのかと思いました」




 俺は初めて聞く話だった。




「先輩、そう思ってたんですか」




「思った。一年生が偏微分の変形を使ったレポートを書くのは普通じゃないので。でも調べたら、他のどこにも同じ式がなくて」




「それで声をかけた?」




「はい。直接確認しようと思いまして」




 浅野先生が頷いた。




「御堂さん、あなたが声をかけなかったら、このレポートは財団に届かなかったかもしれない」




「……それは、担任の先生が気づかれたんじゃないかと思います」




「気づいたかどうかはわかりません。でも、あなたが最初に動いた。それは事実です」




 先輩が少し黙った。


 なんか、返事に迷ってる顔だった。




 俺は思ったことをそのまま言った。




「先輩が言ったから財団の手紙を先生に持っていったので、俺もそう思います」




 先輩が俺を見た。




「……神木くん」




「事実なので」




「……うん」




 先輩が前を向いた。


 耳が少し赤かった。


 部屋が少し暖かいのかな、と思った。




---


 オリエンテーションが終わって、俺たちは建物の外に出た。


 空は昼前の白い感じで、風が少し冷たかった。




「終わりましたね」




「うん」




 先輩が少し歩きながら言った。


 さっきまでのきりっとした顔じゃなくて、いつもの先輩の顔に戻ってた。




「どうでしたか」




「どう、って?」




「財団の印象というか」




「……思ったより、ちゃんとした場所だった」




「思ってたよりじゃなかった、ってさっき言ってましたよね」




「それはまあ」




 先輩が少し遠くを見た。




「すごい場所だな、とは思った。毎月ここに来るんでしょ」




「そうなりますね」




「神木くんが、ここで研究するんだな、って」




 先輩が独り言みたいに言った。




 俺はそれを少し考えた。




「先輩、なんか感慨深い感じですか」




「……少しね」




「なんでですか」




「なんでって言われても」




「俺がここで研究することが、先輩に関係あるんですか」




 先輩が止まった。




 俺を見た。




 またいつかと同じ目で、少し長く見た。




「……関係ある、って言ったら?」




「どういう関係ですか」




「生徒会として、学校の生徒が外部機関と連携するときはフォローするのが私の役目だから」




「それって関係あるとは少し違くないですか」




「何が違うの」




「関係があるっていうのは、先輩が俺個人に何か思ってる場合じゃないですか」




 先輩が俺をじっと見た。




 長い沈黙だった。




「……神木くん」




「はい」




「あなた、本当に計算は得意なのに」




「そうですね」




「人の話を聞くのが苦手ね」




「え、聞いてますが」




「聞いてても、読まないのよ」




 先輩が歩き始めた。


 俺は少し遅れてついた。




 よく意味がわからなかった。


 計算なら変数を整理すれば答えが出るのに、人の話は整理しても答えが出ないことが多い。




 不思議な話だ。




---


 駅に向かって歩きながら、先輩が少し真剣な顔で言った。




「一個、確認させてほしい」




「なんですか」




「プログラム、本当にやれそう?」




「やれそう、というのは」




「継続できるか。月一回の面談と、自分で研究を進めることを並行して。学校の勉強もある」




「先輩、心配性ですね」




「心配してない。確認してる」




「同じじゃないですか」




「違う」




 先輩がきっぱり言った。


 でも少し口の端が動いた。


 怒ってるわけじゃないんだろうな、と思った。




「やれます」




「根拠は?」




「楽しいので」




 先輩が俺を見た。




「楽しいから、が根拠?」




「楽しくなければ続かないし、楽しければ続くので、根拠として十分じゃないですか」




「……まあ、そうね」




 先輩が少し前を向いて、また歩いた。




「そういう言い方ができる人だから、あの式が出てきたんだろうな、とは思う」




「どういう意味ですか」




「楽しいから調べる。疑問があるから計算する。誰かのためだから続ける。そういう順番で物事をやれる人」




「先輩は違うんですか」




「私は逆。やるべきことだからやる。その中で楽しさを見つける」




「どっちがいいとかありますか」




「ないと思う。ただ、あなたの順番の方が、たぶん遠くに行ける」




 俺は少し考えた。




「先輩は遠くに行きたくないんですか」




「…………」




 先輩が少し黙った。




「別に」




 三回目の「別に」だった。


 今日一番長い沈黙を伴った「別に」だった。




---


 電車に乗って、二人並んで座った。


 窓の外を街が流れていく。




「一個聞いていいですか」




「なに」




「先輩は大学、理系に行くんですか」




 先輩が少し間を置いた。




「……どうして聞くの」




「財団の話を聞くとき、先輩の顔が少し変わったので」




「変わった?」




「楽しそうに見えた、というか。建物に入ったとき」




 先輩が窓の外を見た。




「……見てたの」




「たまたま」




「たまたまね」




 静かな声で繰り返した。




「理系、かどうかはまだ決めてない。でも……こういう場所には、興味がある」




「研究、ということですか」




「研究というより。物事の理屈を調べる、ということ」




「先輩も楽しいじゃないですか、そういうこと」




「……まあ、そうかもしれない」




 先輩が窓から視線を外して、手元を見た。




「ただ私はあなたと違って、自分から式が出てくるタイプじゃないから」




「そういうのは関係ないと思いますけど」




「え?」




「式を作る人だけが研究をするわけじゃないと思うので。浅野先生だって、俺の式を評価した。評価できるってことは、理解してるってことじゃないですか」




 先輩が俺を見た。




「……神木くん」




「はい」




「そういうこと言うの、わかってて言ってる?」




「わかって言ってますけど」




「慰めてるの?」




「事実を言ってます」




 先輩がしばらく俺を見た。




 それからまた前を向いた。




「……ありがとう」




 小さく、確かにそう言った。


 電車のノイズに混じるくらいの声だった。




 俺はなぜか、それをちゃんと聞き取っていた。



---


 駅で別れるとき、先輩が言った。




「今日のこと、担任の先生に報告しておいて」




「はい」




「あと月一回の面談の日程が決まったら、生徒会の方にも知らせて」




「生徒会の慣例、ですか」




「そう」




「わかりました」




 先輩が少し頷いた。




「じゃあ」




「はい。先輩」




「なに」




「今日、一緒に来てくれてよかったです」




 先輩が少し止まった。




「……生徒会の仕事だから」




「それはそうですが、俺個人としても助かったので」




「……そう」




「先輩がいると、なんか」




「なんか?」




 俺は少し考えた。


 うまい言葉が出てこなかった。




「……落ち着く、かもしれないです」




 先輩がまた俺を見た。


 今度は少し長く見た。




 なんか夕方になりかけていて、駅の外の光が少し橙色だった。


 先輩の顔に、その光が当たっていた。




 先輩はしばらく俺を見てから、




「……帰りなさい」




 と言った。




 声が、少し低かった。


 怒ってる低さじゃなくて、別の低さだった。




「はい。また月曜日に」




「うん」




 先輩が改札に向かって歩き始めた。


 俺は反対の出口に向かった。




 途中でなんとなく振り向いたら、先輩が改札に入るところだった。


 一瞬だけ、こちらを見た気がした。




 気のせいかもしれない。




 確認はできなかった。


---


 家に帰って、机に向かった。


 財団からもらった資料を開いた。




 自分の式を、もっと精密にする。


 誤差の原因を特定する。



 考え始めたら、なんか自然に手が動いた。


 ノートを広げて、最初の計算式を書き出した。




 どこで誤差が出るか。


 変数がいくつあって、どれが不確定要素か。




 気がついたら二時間経っていた。




 母さんが「ごはんよ〜」と呼んで、俺は顔を上げた。




 窓の外は完全に暗かった。




 俺は立ち上がりながら、ふと思った。




 御堂先輩は今、何をしているんだろう。




 べつに理由はない。


 ただ、思った。




 なんでだろう、と自分でも少し不思議だった。


 数式より、答えが出なかった。




---


 月曜日、学校に着いたら廊下で宮沢さんに会った。


 同じクラスの、生徒会の書記をやってる人だ。




「あ、神木くん」




「おはようございます」




「あの、土曜日……財団のオリエンテーション、御堂先輩から聞きました」




「そうですか」




「先輩、帰ってきたとき……その、なんか」




 宮沢さんが少し言いよどんだ。




「なんか、いつもと違う顔してたので、何かあったのかなって」




「違う顔、というと」




「えっと……なんか、その」




 宮沢さんが視線を泳がせた。




「御堂先輩って、いつもすごいきりっとしてるじゃないですか」




「そうですね」




「でも土曜日の帰りはなんか、その……ぼーっとしてるというか、別のこと考えてる感じで」




「疲れてたんじゃないですか」




「…………そうですね、たぶんそうだと思います」




 宮沢さんが何か言いかけて、やめた。


 俺を少し変な顔で見た。




「神木くんって、本当に……」




「何ですか」




「いえ、なんでもないです。おはようございます」




 宮沢さんが歩いていった。


 俺はよくわからなかった。




 まあいい。


 今日は昼休みに先生に報告して、面談の日程が来たら先輩に知らせる。




 やることは整理されている。




 俺はそれだけ確認して、教室に向かった。


---


 そして昼休み。


 廊下を歩いていたら、


「神木くん」


 という声が飛んできた。




 生徒会室の方から先輩が出てきた。




「先生に報告した?」




「これから行くところです」




「そう。あと一個」




「なんですか」




 先輩が少し俺を見て、


 さらっと、でもはっきり言った。




「土曜日、私も行けてよかった」




 俺は少し意外だった。




「先輩がそう思うなら、よかったです」




「…………もう少し、もっと別の返し方があると思うけど」




「そうですか?」




「普通、もっとなんか……ある」




「俺には先輩が言ってくれたことが素直にうれしいので、それ以外の返し方が出てこないです」




 先輩がまた俺を見た。


 今度は少し長く見た。




 なんか。


 なんか、困ってる顔に見えた。


 でも、嫌がってる感じじゃなかった。




「……行きなさい、先生のとこ」




「はい」




「面談の日程、待ってる」




「わかりました」




 俺は歩き出した。


 今度は振り向かなかった。




 でもなんとなく、先輩がそこに立ったまま俺の背中を見ているような気がした。




 確認はしなかった。




 廊下の先、職員室のドアが見えた。


 俺は歩きながら、今日の夜、続きの計算をしようと思った。




 でも同時に、全然別のことも少し考えていた。




 先輩の「行けてよかった」、という声のことを。




 数式より、なぜかずっと、頭に残っていた。


---


≪次回予告≫


月一回の財団面談が始まった。


担当研究員として紹介されたのは、二十代の若い女性研究者・水野さんだった。


水野さんは初対面で「あなた、面白いね」と言った。


浅野先生は「彼女も似たタイプだから」と笑った。


後日、御堂先輩はその話を聞いて三秒間黙った。


「……どういう意味で、面白いって言われたの」


「さあ」


「さあ、じゃなくて」


「褒められたと思いますが」


「…………そう」


先輩の返事が、いつもより短かった気がした。



**第5話「担当研究員の人が俺に興味を持ち始めた件、先輩はなぜか黙った」**


今回の神木透。

・研究補助プログラムに受かる

・財団のオリエンテーションに行く

・研究テーマが決まる

・御堂先輩に何度も意味深なことを言われる

・でも気づかない

相変わらずです。

そして御堂先輩は、

・神木くんの将来が少しずつ広がっていく

・それをうれしく思う

・でも少し複雑

・本人には伝わらない

という状況になっています。

たぶん今後もっと苦労します。

頑張ってください。


次回からは財団での研究活動が本格的に始まります。

担当研究員の水野さんも登場します。

御堂先輩はたぶんまた苦労します。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ