第51話「阿部ちゃん、初めての命名」
経験上
このような状況をそのまま進ませると、碌なことにならない
女の園に男一人、ってのは
責められるか掌の上でからかわれるか
いずれかな事が多い
「そういえば、君も名前はないの?」
猪娘に尋ねるが
「ナ・マ・エ?ですか?」
首をかしげる
すっかりお約束のようだな、この【世界】では
「君と同じ猪人は多いのかな?」
「家族と一緒に大豚を連れて放浪していますが
そうそう見かけることはありません
どれくらい居るかはあまりわからないです」
第一声とは大違いに柔らかいトーンと言葉遣い
印象が、がらっと変わる
こう見ると彼女も美少女だ
三人娘がレベルが高すぎるのだが全く引けを取らない
むしろ、あの蹴りを筋肉もりもりの体ではない
スレンダーどころか華奢な肉付きの彼女が
繰り出してきたのは、猪人の特性なのだろうか
その細身の体に膝まで届く栗色のロングヘアー
毛先は深海のような青
はっきりした顔立ちに青い虹彩、少し縦長の瞳孔
肌の色も私たちに近く
高校生と言われても違和感がないほどの見た目だ
こっちの【世界】
今のところ美女に美少女しか見てないんですが?
おっさんもダンディだったし、家族も美人さんだった
女神もあの見た目だったし、そういう【世界】なのかな?
まさかJC女神の趣味じゃないよね?
気を取り直し、みんなに聞く
「彼女には大豚を中心とした食料確保を
主に担当して貰おうと思う
さっき言ったように、もしも逆らうようならば
今度は容赦しないつもりだ
みんなに彼女を仲間に迎えることをお願いしたい」
頭を下げる
3人娘に阿部ちゃんも加わってなにかを話していたが
「先輩、少し車から出ていてもらえますか?」
と、少々怖い笑顔で言われた
素直に降りてドアを閉める
数分後、ドアが開いて呼び込まれた
「一応、話はつきました
私たちは彼女を仲間として認めます」
「それはいいけど
なんか彼女がおびえてるように見えるんだけど?」
「気のせいですよ」
ひらひらと手を振るが
猪娘はそれを見て、びくっ!と体を固くしたのだった
・・・・・うむ、何があったのか考えないようにしておこう
「ということで無事お迎えしたってことで
彼女にも名前を付けたいと思う
そこで、だ
3人娘は結果、私が【命名】したことになっているが
今回は阿部ちゃんに試してもらいたい
その上で彼女は阿部ちゃんの直下で仕事をして貰う
ということでどうだろうか」
「あべちゃん?」
首を傾げた猪娘に、阿部ちゃんが自分を指さす
途端に彼女の顔が蒼くなり、額からは汗が噴き出した
―冷や汗だろうか
先程の短い時間で、一体何があったのだろうか
あれだけ攻撃的な彼女が、阿部ちゃんにここまで怯えるとは
「名前ですか、分かりました」
私を見て、そう言った後輩くんは、猪娘に向き返り
「私が名前を付けることに、文句はありませんね?」
ニッコリとしながら確認するが
その目は少しも笑ってはいない
猪娘は首を縦に振る
振り続ける
「では、先輩と相談して決めます」
そう告げてこちらにやってくる
「で、なんて名前を付ければいいでしょうかね?」
いつもの阿部ちゃんだ
さっきのはなんだったのだろう?
―深く考えないでおこう
「そうだねぇ
3人娘と同じように考えるなら
髪色や目の色から取るか
流石に解りやすいとは言え
猪だとか付けるのはどうかと思うし」
「そうですねぇ
見た目と連動させるのは
確かに解りやすいですね
3人娘との統一感も出ますし」
深く青い目と髪先の青色からすれば
そっちから取るのがいいかね
交互に思いついた「青」に関する名前を出していくが
あっという間にネタが尽きて日本語になる
悩みに悩んで、その中から阿部ちゃんが選んだのは・・・
「では、これからあなたは【ヴェルーリア】です」
猪娘に告げる
「ヴェルーリア?」
命名時のお約束なのか、やはり気を失った
拘束されたままで、だが




