第36話「魔牛、どうします?」
爆発の後
魔牛と思われる悲鳴なのか鳴き声なのかが
振動と共に響き渡る
震度3くらいの揺れを感じるほど揺れる地面
通り過ぎた後に残った蹄の跡は
50センチくらい沈み込んでいる
普通の牛じゃ、こうはならない
デカい分、重量も半端じゃないんだろう
でかいの3頭
小さいのが1頭
「見た感じ、倒せそうかな?」
傍らにいるアウラムに聞くが返事がない
居るはずの方向を見ると、真っ白になって固まっていた
爆発の衝撃を受けたのは
魔牛だけじゃなくアウラムもだったらしい
・・・・・もしかしたら
人為的な爆発って魔法じゃ再現出来なかったりするのかな?
昭和時代の特撮以上に
盛りに盛った爆発をイメージしたんだけど
やりすぎたか?
何度か肩を揺さぶると
ようやくどこかに行っていた意識が戻ってきた
「あ、あの音と揺れはなんなんですか??
びっくりしたどころじゃありませんわ!!」
目を見開いて食って掛かられる
イヤーマフつけてても
空気を伝わる衝撃と地面からの振動は変わらない
慣れ過ぎて、麻痺してるのは私のほうか
「ごめん、気が付かなかった、大丈夫??」
詫びを入れると、アウラムは息を整えて
「わたくしは大丈夫ですわ
でも・・・・・」
指を差した先は、ミサイルを撃ち込んだ先だった
さっきの巨大な魔牛が3頭
その近くに2tトラックくらいのが1頭
倒れていた
足が痙攣しているから
爆発音のショックで気絶してるっぽい
知ってる牛は4本脚
魔牛は6本あるんだけど
―ホントに気絶してるのかな?
「わかりませんわ
あんな凄い音聞かせたらどうなるか
誰もやったことないでしょうから」
やっぱり【爆発】ってのはメジャーじゃないのか
今のうちにとどめ刺しておくか?
いや、生きてるうちに放血させて
血抜きくらいはやっておけるかな?
体構造さえ解かればなんとかなるんだけど
刃物どうしようか?と考えていたら
アウラムが助言してきた
「これ、オスも居るので、とりあえず拘束しておいて
気絶から醒めた後に、メスの目の前でトドメを刺すことを提案いたしますわ」
「なんで?」
「小さい1頭がオスで、残りはメスですわ
大体リーダーはオスで、ハーレムですの
そこでオスを倒せば、倒した者がリーダーになりますの
動けなくして、リーダーだと思わせて
飼い馴らすのが良いと思いますわ」
アウラムはこう提案してきたのだった
「魔牛を飼う?目的は?」
「繁殖させればいつでも魔牛が食べられますわ!
魔牛はなかなか捕まえらませんが
1頭いれば食材として凄い量がありますわ
増やして、解体した肉を町にも分ければ
無駄せず食べきれていいと思うのですわ」
なるほど
保存技術が無いこの【世界】だと
腐敗する前に食い切る必要があるものね
「でも、あの巨体だよ?
どうやって飼うの?」
「大きくて深い穴を地面に開ければ
易々と逃げられませんわ
5人で土魔法を使えば
この魔牛が入るくらいの穴を開けられますわ
だめでしょうか?」
普通の牛すら飼ったことないけど
逃げられないなら試してみてもいいよね
ダメなら倒せばいいんだし
「ところで魔牛って、乳が取れるのかな?」
「乳って母乳ですか?
聞いたことないですわ」
よし、とりあえず飼ってみよう
もし牛乳取れれば
バターもチーズも作れる可能性が出てくる
ダメなら肉だけでもOK
とりあえず魔牛4頭を縛る
念のため、本当に気絶してるかわからないので
もう1発グレネードを打ち込んでから近づく
長刀をクリエイトして突いたりもしたが反応なし
安心して作業に移る
足が6本あるので、上下左右斜め
それぞれ対角線上に縛る
一抱えもある太さの脚なだけに
念には念を入れて
膝裏もいくつかに分けて縛り上げる
巨木みたいな脚を軽々持ち上げる自分にも驚くが
小さい身体で同じ作業をするアウラムにはもっと驚いた
・・・・・
そりゃあ、あんなハンマー選んで振り回せすわけだわ
縛るロープも当然、【製作:】したのだが
何故かいかがわしさを伴った
真紅のロープが出てきた
・・・・・出てきたってことは
『ご主人様の記憶にあるロープを生成しました』
・・・・・何も言うまい
蔦はこの世界でもあるらしく
アウラムも扱いなれているので
彼女が主に縛っていた
魔牛と呼ぶに相応しい黒々とした脚に
食い込む真紅のロープ
嬉々として縛る筋肉美少女
なんとなく背徳感を覚えるのは、考えすぎだろうか
4頭を縛り終えて改めて見る
どこかの運送会社か?
って位の巨体が4つ、横たわっていた
―焼肉何百人前だろうか
思わず考えてしまう
「飼うための儀式は後にして
まずは全員をここに連れてこよう
それまでアウラム一人だけど、見張りをお願いできる?」
―あれだけ縛れば、魔牛も動けないとは思うけど
頼むと、彼女は快諾してくれた
「わかりましたわ
魔牛もせいぜい、鳴くくらいでしょうし大丈夫ですわ
万が一暴れたら、これで一撃食らわせますわ」
背中のハンマーを揺らして自慢げに笑う
まだ実戦未経験でしょ?そのハンマー
言おうとするのを、ぐっとこらえる
念のため、魔牛が他にも居るかもしれないと考え
対戦車ミサイルを置いていこうとしたが
「これは私には無理ですわ
まださっきの驚きが残っていますもの」
とお断りされた
往復で1時間弱
急ぐわけでもないので
白桃フレーバーの紅茶を改めて淹れて
真空保温ポットに入れて渡す
「おかわりはこれに入れてあるからね」
彼女は嬉しそうに微笑んだ




