第34話「アウラム、初めてのATV」
「ところでその牛、居場所が判る方法ってあるかな?」
フレイア曰く
近くに居て暴れていれば、魔素の変化で判るらしいけど
おとなしくしてると、全く居場所が掴めないらしい
アウラムも妖精を使役して警戒してくれたが
それでも居場所は不明
牛は夜行性だというので、夜まで待ってみては?と
カホルが提案してくれたのだけれど
それだと、町に来て暴れるまで判らないって可能性がある
全員で考えあぐねてしまった
『よろしいでしょうか』
弥生さんだ
『装甲車のセンサーで熱追跡が可能です
先程アウラムが言っていた牛の足跡まで行って検知すれば
追跡出来るかもしれません』
マジかよ
『実際にやってみないと、断言は出来かねます』
打ち合せして、ポータブルの熱追跡装置を新たにクリエイト
昨晩作ったATVと同じものを追加で創り、搭載する
ちなみに”同じATV”だけど
装甲車上部に積載できるように改良している
「これで足跡を追跡できるかもしれないよ
現場確認が必要だから、アウラムと二人で足跡まで行って
可能ならそのあと、牛が居るところまで追跡してみよう」
アウラムが若干、ひきつった顔をした気がするけど
心を鬼にして見ないことにしておく
留守番の3人娘には安全第一を優先することを、
万が一に備え阿部ちゃんには装甲車の運転を教えておく
「基本、車の運転と同じですよね?」
「そうなんだけどさ、君の全開運転だと
2人が気絶するかもよ?」
と、【サーキットでの彼女】を知っているので
一応釘を刺しておく
アウラムにATVと同時に創ったヘルメットをかぶせ
「行ってきます」
と告げて出発
一応、気を使ってかなり控えめの発進をしたつもりだった
直後、アウラムが後ろからベアハッグしてきて
死ぬかと思った
締め付けはアナコンダにでも羽交い絞めされているみたいで
後部座席から女性が抱き着いてきた時にあるはずの
柔らかさなど一切感じられない
良かったよ、こっちで肉体負荷が解放されてて
じゃなかったら、お陀仏だったかもしれない
数分のドライブで町らしきものが見えてきたので
ATVを止める
止まって尚、ベアハッグをほどかないアウラム
手を叩いても緩む気配がない
仕方なく腕を取って、無理矢理引っ剥がす
開いた腕は空中で固まったままだ
気は確かなようだけど
初めてのバイクの体感速度に恐怖したのか
かなり涙目だったりもする
「怖かった?」
ようやく動けるようになったのか、ゆっくりと頷く
「少し休憩してようか
そのあと、足跡があったところまで案内してもらうよ」
そう言ったものの
アウラムはリアシートから立つ気配がない
目前にソファーをクリエイトしてから彼女を・・・・・
抱き上げようとしたら、ひっくり返った
背中にハンマーを背負ったまま乗っていたらしい
どれだけ重いんだ、そのハンマー
自分で作ってるけど、重量は「重い」ってイメージしただけだからね
留め具を外して身軽にし、抱きかかえて片手間に
【製作:】したソファーに降ろす
生き返ってたった何十時間
前世を含めても未体験であろう、早い乗り物に続けて2つも乗ったら
怖くて当然だ
食材は一切持ってきていないから、コンロを【製作:】しても
お茶すら入れられない
でも、このままイヤな思いでアウラムがトラウマ持ったら困るし・・・・・
少しくら、緊張をほぐせればいいのだが
『クリエイトで食材なども作れますよ』
ほんと?
『はい
厳密に言えば、生物そのものは作れないので
【複製】になりますが、それ以外なら【製作:】できます』
それはありがたい
それならば、と普段飲んでいた白桃フレーバーの紅茶を
【製作:】してみる
茶葉が茶筒に入って出てきたから、残りは持って帰ろう
弥生さんのサポートなのか
茶葉だけでなくティーセット一式まで【製作:】されてた
「出先だから、これで勘弁してね」
深めのカップに注いで、まだガチガチの彼女に渡す
「今朝飲んだのとも違う、甘いいい香りがしますわ」
ようやく声が出た
「桃の香り、ってのを茶葉に付けた紅茶なんだよ
中に桃の花とか実を入れる場合もあるけどね」
砂糖なしでも甘く感じるのは、桃の香りのせいだろう
こっちの【世界】に桃ってあるのかな?
「あ、これミルクも砂糖もいりませんわ、おいしいですわ」
やっと笑顔が戻ってきた
少し雑談をしてから声をかける
「これ、また乗れる?」
一瞬、『うっ』という顔をしたが
「少しゆっくりして頂ければ、なんとか我慢しますわ」
絞り出すように答えた
「よし、のんびり走ろうか」
牛の足跡があった場所を目指して、再出発




