第15話「キングキャッスルの構造」
先程、固まってた長命種さんは、更に口も目も開いたよ
「中身もちゃんとできてるとして
こんなにでかい建物2つもいるか??」
あまりの衝撃に、思わず声が出た
『将来、集団を率いたりすれば
生活拠点として必要かと思います』
弥生さんはそう言うけど
この2つ並んだ絵面をずっと残すってわけ?
ちなみに、作った本人曰く
「先輩?
一応先輩は男性ですし
私もサポートさん3人も女性ですよ?
私ら”か弱い女の子”なんですし
同じ建物じゃないほうが良くないですか?」
あれ?
それじゃまるで私が悪い奴、みたいになってません?
まあ、そもそも、中を確認して
使えるかどうかってのもあるけどね
ところで弥生さん?
『なんでしょう?』
この2つの建物は強度的に大丈夫なのかな?
『見た目はご主人様の世界でも古風な建物ですが
躯体全てが魔術で一体成型されたおかげで
既存の技術や魔術では絶対に壊れることはありません』
え?一体成型?
『正確に言えば単結晶構造で基本躯体が作られ
瓦やレンガの外観になるものや桟、門扉など
構成する可動部もそれぞれが単結晶で作られています
現状のこの【世界】の魔術や力では
破壊不可能な物件として創造されました
少なくとも、この【世界】が終わるまで
この建物は存続します』
エッヘン!
そう聞こえそうなほどの声の張りと強さで
太鼓判押してきたよ、弥生さんってば
洞窟探検に行って貰った二人は、まだ帰ってきてない
待っている間、城2つの運用について議論していた
あまりの巨大さに圧倒させられ、すっかり失念していたけど
城の中の確認をして使えるようにする必要もあるわけだし
そろそろご飯と寝床のことも考えないとね
せっかく作って貰ったベッドフレームと椅子だけど
あれじゃ快適に寝られなさそうだし、
私ら現代人には厳しさが過ぎる
とりあえず自分が作った古城に入る
―まあ、そんな気は全くしないのだが
門扉はでっかい鉄扉だが、流石に金属
いくらすっけすけでも、そんなのを一人で開けられるのか?
そう思いながらも観音開きのような鉄扉に手をかけて
片側の隙間に手を入れ、引っ張った
普通、防犯上こういうのは外開き
蝶番も外にあるから、少なくとも内側には開かない
そう判断して引っ張ったのだ
軽い
軽すぎる
普通の家の室内扉よりも軽く開いた
もしこれが、押して開くのだったら
絶対につんのめっているはず
手で触ってみるが、やはり金属の冷たさ
拳を作って軽くノックしてみると
中空材ではない詰まった音が響く
どういうことだ?
『ご主人様の世界と
この【世界】では、負荷がまるで違うのです
参考までに、こちらの人間種がご主人様の世界に行けば
まさにヒキガエルのようになって立つことは不可能
息をすることもままならず、心臓の送る力よりも
重力が強すぎて血流も滞り
結果として生きることができません』
まじか
そりゃあ、1トンくらいありそうな扉がすっと開くわけだ
そうなると3人娘に「なんでやねん!」って
裏拳でツッコミ入れようものなら??
『防御を取らなければ吹っ飛ぶでしょう
肉体そのものが粉々になって』
飛んでいくとかじゃなくって、爆散??
どこぞの戦闘民族ですら、地球人相手でも
そこまでの差はなかったはず
一体、どんだけ地球で生きるのは罰ゲームだったのよ
安易に現地の人へツッコめないじゃないか
『それくらい負荷が強かったのです
今のご主人様ならこの【世界】の一般人を
1000人くらい相手にしても
傷一つ負わず圧勝できます』
いや、別に無双しようとは思ってないけど?
でも、それくらい私らの世界では
常時強い負荷掛かってるってことか
この世界の構成とか
選定者として選ばれたのとか
なにか繋がりあったりするのかな
そんなことを歩きながら考えていたが
それでも城の入り口にすら着かない
門からどれだけあるんだ?
『100mです
ちなみにアヤノちゃんさんの城は
回廊形式になっているので300mほどになります』
・・・あの歴女、利便性よりもリアルさ取ったのか?
現場で見てるだけに、想像のクオリティが高い分
創造されるモノも再現性高い、ってことか
ようやく入り口にたどり着く
扉は重厚な木製に見えるが、これも体感では軽いのだろう
鉄扉ですらあの軽さ、下手すれば蝶番が折れるかもしれない
引き手に人差し指をかけ引っ張る
それでも開くのだった
『建物を構成する建具なども単結晶構造ですから
壊れることはありません』
そうは言っても、力いっぱい開け閉めしてたら
五月蠅くて仕方ないし、品がないよね
そんなことを思いながら、建物内に入る
入ってすぐ玄関ホール
それも某アトラクションとかの城にあるような
優雅な円弧を描く階段が左右にあって、2階に続いてる
最上階まで吹き抜けなのか?
上はどれくらいあるのか?
見当つかないほど高く、何階まであるのかわからない程
そしてこのホールですら
会社の大会議室よりでかい気がする
階段なんか、組閣の時に国のお偉方が並ぶ
ひな壇みたいな階段より幅広いだろ
どこの城をイメージしたのか自分でもわからないけど
全部が全部この調子なのか?
階段の手前に、扉の無い入り口がある
ということは、ゲストルームとかかな?
入ってみる
これまた広い
ホールが大会議室だったのに、こっちは社員食堂サイズだ
ただし、什器はなにも無い
ただ広いだけの部屋だから、ものすごく寒々しく見える
更に天井高は10m近くあるんじゃないか?
奥にも扉があるけど、そこまでも結構な距離を歩く羽目に
これ、家じゃない
東京ドーム12個分ある、うちの工場の建物サイズだよ
こちらは扉があり、調理場か控室のように見える
ホールに戻って、今度は左側の部屋に入る
こちらは幅も大きな、観音開き扉が付いている
引いて開けると、こちらも社員食堂サイズだった
違うとすれば、奥にドアが3つあって
小部屋のようになっているくらいか
小部屋のほうは、それぞれ同サイズの部屋になっている
こっちは工作室とか、そういった感じか?
さて、今度は2階に上がるが・・・・・
階段がとにかく長い
デパートの3階分くらい上がって、ようやく着いた
1階に比べると簡素に見えるドア
こっちは住居スペースか
部屋数は片側6部屋ずつ
片開きのドアを開けてみる
一般家庭のLDKくらいありそうな、広めの部屋があった
他も同様だろうから
通路の最奥にある
頑丈そうな扉へ向かう
建物幅いっぱいの部屋の奥には
らせん階段が見え、尖塔の一つに繋がっていた
サイズとしては、6畳間くらいか?
ガラスエリアが広く、外がよく見える
― 見えるのは、明るい一面の岩肌だけどね
360度ほぼ見渡せるが、城の正面側に暗いエリアが見える
そこからの直線上に2人の人影が見えた
探索に行ってもらった2人かな?
城まではまだ距離があるので
たどり着く前に反対側を見ておく時間はありそう
しかし、らせん階段を降りて社食サイズの廊下を
歩いていってと言うのが続くと流石に疲れる
そんな筈の感じが、まるで無い
―これが、負荷が少ないってことか?
その割には、月面のような小重力環境には感じない
なにかしらの違いがあるんだろうか
あとで弥生さんに聞いてみよう
そんなことを考えながら、ホールを挟んで今度は2階
右側のドアを開ける
こっちも左側と同様の構造だが、ドアの数がかなり多い
ざっと見て20部屋以上
間隔やドアの仕上がりから
左側の部屋に比べると質素な仕上がりに見える
一般スタッフの部屋、と言う感じかな
尖塔は左右にあったと思うから
こっちもどこかに階段があるのかね
とりあえず簡単にチェックしたので、階段を下りて外に出る
私が門に着く頃には、2人も着いてるんじゃないかな?
門から出ると
それはそれは驚愕した顔の2人が
建物を見つめていた
綺麗な顔が台無しですよ
と言いたくなるのを、ぐっと堪える
そりゃそうだよね
洞窟探索して帰って来たらでっかい城が建ってる
しかも2つも
驚かないはず無いよね?
『いえ
こちらでは高層建築物がありませんから
理解が出来ていないものと推察されます』
そりゃあ余計に見上げてあんぐりするよね
とりあえず声をかける
「探索お疲れ様でした
私もまだ見ていないので隣の城に行って
全員で話しましょう」
心ここにあらずな2人は黙ったまま
先に歩き始めた私の後に着いてきた




