その二
やせ細り、苛められていたエルファーナは、今や堂々とした女王となった。
民衆の歓心を得たエルファーナは、晴れやかに輝いていた。
それを感慨深げに見つめていたリゼであったが、兵士に耳打ちされ険しい表情となった。
「どうしたんだい?」
不穏な雰囲気に気づいたカナリスが訊いた。
「ルイーゼが自害したと」
ルイーゼのあの力が実は人工的に作られたものと知った八聖騎士の驚きは、言葉では言い表せなかっただろう。だれも見破ることができないほど精巧で、同じ神の力を宿していた八聖騎士の目も欺いていたのだから。
悪魔崇拝のようないかがわしい施設の存在に、八聖騎士も身を引き締めた。災害が去った今、最大の敵はその施設となるだろう。
「なんだって? 穏やかじゃないねぇ」
「リーシアの情報をふまえると暗殺の可能性も高いですね」
式典が終わってからルイーゼを取り調べるつもりであったリゼは、落胆を隠せなかった。施設の情報が絶えてしまったのだ。
もしかしたら、それを見込んで殺された可能性もある。
犯罪者から、重要参考人となったルイーゼの身辺には気をつかい、常に暗部隊の一人をつけていたのだが、役に立たなかったようだ。
「次は、エルの命かい?」
カナリスの目も冷めていく。
女王となったエルファーナの試練は、これからなのだろう。
けれど、リゼは柔らかな笑みを浮かべた。
「私たちがいます。私たちの使命は、命を賭して女王をお守りすること。恋いこがれていた女王をこうして得た今、私たちに敵う者はいないでしょう」
「言うねぇ! けど、正論だ。アタシたちはようやく女王に仕えることができるんだ。だれであろうと、安穏を妨げる奴は容赦しない」
カナリスの視線は民衆に手を振っているエルファーナに向けられていた。
女王を戴き、真の力を取り戻した彼らに立ち向かえる者などほとんどいないだろう。
エルファーナの身を脅かす施設を討つ。
それが八聖騎士にかせられた新たな任であった。
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