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魔王が復活しそうなので慣例に従って勇者を召喚したらチートすぎた上に個性が強かった  作者:


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アルガ・ロンガ国の王が登場した場合

 時空間管理人たちの突然の行動に驚いていると、一行の後ろに巨大な魔法陣が現れた。


「転移魔法陣?」


 フェリクスが訝しんでいると、魔法陣が強く輝いて十数人の人間が出現した。

 統一された鎧を着た騎士たちと、同じローブを羽織った魔導師たちだが、その装いはシャブラ国のものではなかった。


 一団が着ている服装を見たカミーユが素早く身構える。


「その服はアルガ・ロンガ国の人ですね?」


 カミーユの確信を含んだ言葉にリュネットが一歩下がり、その姿を隠すようにフェリクスが立つ。


 警戒心の塊となっているカミーユたちの前に四十代後半ぐらいの男性が笑顔で出てきた。

 長い金髪を無造作に一つにまとめ、人懐っこい碧い瞳がどことなく警戒心を削ぐ。


 男性は豪快な笑顔で話しかけてきた。


「驚かせて悪いな。おれはアルガ・ロンガ国の王、レンツォ・ラ・アルガ・ロンガだ。おまえたちが魔王とやらを封印する前に、ちょっと実験をさせてくれないか?」


 突然の自己紹介と発言に一同が唖然とする。


 軽装の鎧を身に付け悠然と一行の前に出てきた姿は身を危険に晒せすぎて、とても一国の王がする行動とは思えない。


 フェリクスがカミーユに小声で訊ねた。


「本物か?」


「私は実物を見たことがないので分かりません。ですが、噂では戦争や交渉事などには自ら先陣をきって出向くそうです」


 硬直した空気の中、後方にいた紫依が一行の前に出てきて優雅に一礼をした。


「初めまして。私はノゼの街の勇者として召喚された紫依と申します。何故、王自らこちらに来られたのですか?実験とは何をされるのですか?」


 警戒心なく丸腰で出てきた少女の自己紹介にアルガ・ロンガ国側の人間が響めく。


 だがレンツォだけは楽しそうに笑いながら紫依を見た。


「こんなに可愛らしいのに勇者とはな。情報通りだ。実験っていうのは、勇者でなくても魔王を封印出来るかってことだ。おれはそれを見届けに来たんだ」


 ほぼ丸腰状態で堂々と話すレンツォに対してオーブが呆れたように言った。


「わざわざ実際に見に来なくてもいいだろ。王がそんなんだと側近が泣くぞ」


「おう。数え切れないぐらい泣かしているぞ。だが、これはおれの性分でな。で、おまえは誰だ?その外見だとカルシの街の勇者か?」


「そうだ」


 あっさりと肯定したオーブにレンツォが訊ねる。


「なら、そこの黒髪の別嬪さんと銀髪の兄ちゃんがバルダの街の勇者と王都の勇者か?この人数に囲まれて、まったく警戒も緊張もしていないが、どうしてだ?」


「する必要がないからな。蟻が何匹集まっても象は気にしないだろ?」


 オーブの例えにアルガ・ロンガ国の騎士が眉間にシワを寄せるが、それをレンツォがなだめる。


「待て。実際にその通りなんだから動くな。おれもこんなに緊張するのは久しぶりだ」


 そう言ってレンツォの頬に汗が伝って流れ落ちる。その光景に騎士だけでなく魔導師たちも息を飲んだ。


 その様子に蘭雪が好意的に笑う。


「どこぞの王より、よっぽど見込みがあるわ。そっちの国に召喚されたほうが面白かったかもね」


 蘭雪の発言にフェリクスが落ち込む。


「お願いですから、今はそんなことを言わないで下さい」


「あら、本当のことだからいいじゃない。面白そうだし、その実験してみたら?」


 その意見にオーブも賛成する。


「そうだな。このまま睨み合っても時間の無駄だし、さっさとすれば?」


 二人の言葉に慌ててカミーユが反論する。


「何を言っているのですか?もし失敗したら、どうするのですか?」


 珍しく慌てているカミーユにオーブが首を傾げる。


「失敗したら何か起こるのか?」


「何が起こるか分からないから止めているんです」


 そこに蘭雪が軽く笑いながら言った。


「大丈夫よ。ま、何かあっても私たちが封印すればいいだけだし」


「ですが……」


 渋るカミーユにレンツォが呼びかけた。


「おーい、そろそろ意見をまとめてくれないか?勇者が賛成しているなら、あとの人間は力ずくで黙らせてもいいんだぞ」


 好戦的に笑うレンツォにカミーユとフェリクスが黙る。その二人をオレールが説得する。


「好きにさせるしかないだろ。勇者様たちが賛成しているのだから従うしかない。ここで戦って無駄に魔力を消費しては封印も出来なくなる」


「……わかりました」


 カミーユとフェリクスが渋々頷いて一歩下がる。


 その様子を見ながらレンツォはオレールに向けて意味ありげに笑う。


「じゃあ、好きにさせてもらうぞ」


 そう言ってレンツォが右手を上げる。するとローブを羽織った魔導師が二人一組になり黒い球体を囲むように配置されている石碑の前に立った。


「始めろ」


 レンツォの指示で魔導師たちが同じ量の魔力を手の上に出す。


 その魔力量を見てフェリクスが悔しそうに言った。


「これだけの魔力を持った人間が八人もいるとは」


 カミーユがそっとフェリクスに耳打ちをする。


「ですが、ここですべての魔力を使い切りますから戦力にはなりません。隙をついて撤退することも視野に入れましょう」


 カミーユの提案にフェリクスが無言で頷く。


 そこに魔導師たちが同時にそれぞれの目の前にある石碑に魔力をぶつけた。


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