空から見た場合
すみません、短いです。
うまく話が切れません(泣)
王都全体を覆っている霧を抜けて、この国を囲んでいる山脈の頂上が見える高度まで上昇したとき、リュネットはあるものを見つけて口を抑えた。
その様子にカミーユも同じ方向を見る。
すると、山脈の反対側にアルガ・ロンガ国の大軍が進軍してきている光景があった。
「本当に我が国を目指していますね。しかも、あれだけの大軍ですから、山脈を越えるのに一、二ヶ月はかかるでしょう。それまでに、なんとかできればいいのですが」
カミーユの言葉にオーブが質問をする。
「他国に援軍は頼んだのか?」
カミーユが首を横に振った。
「頼みましたが、期待はできません。少し前まで半島にある小国だったアルガ・ロンガ国を一気に大国にしたレンツォ・ラ・アルガ・ロンガ王を敵に回すような国は、この周辺にはありませんから」
「なら自軍でどうにかするしかないのか」
オーブの言葉にオレールが唸る。
「この国は長いこと戦争から離れていました。兵の数も圧倒的に不足していますが、なによりも戦争経験がありません。そこに別名、戦神といわれているアルガ・ロンガ国王と、あれだけの軍隊がシャブラ国に侵攻すれば戦争にもなりません。一方的な侵略で終わります」
カミーユとオレールの発言を聞いてリュネットの体が崩れた。
「このままでは魔王を封印しても国が……」
「降伏しかないわね」
リュネットが顔を上げて無言で蘭雪を見つめる。
「自分の国を傷つけたくないなら、被害を最小限にしたいなら、それしかないわよ」
「ですが、それではアルガ・ロンガ国に蹂躙されてしまうだけです」
「そこは交渉次第でしょ。向こうだって無駄な争いはしたくないだろうし」
「どのように交渉すればよろしいのですか?」
リュネットの質問に蘭雪は呆れたように言った。
「それぐらい自分で勉強しなさい。と、言っても、この国は平和呆けしているせいか兵法関係の本が極端に少なかったけど」
オレールがどこか他人ごとのように話す。
「それだけ戦争とは無縁の国だったのです」
その姿に紫依が少し悲しそうに言った。
「あなたの故郷はどこでしょうか?」
突然の質問にオレールの返事が遅れる。
「……以前にも話しましたが、畑に囲まれた農村です。今するような話ではないと思うのですが」
そう言ってオレールが紫依から視線を逸らす。
紫依は少し微笑みながら頷いた。
「そうですね。また後で話しましょう。この国のためにも」
最後の言葉は小声だったためオレールたちには聞こえていなかった。
「小さき姫よ、見えたぞ」
ドラゴンが示した先には大河に囲まれた大山があった。
雲より高い山頂には大きなカルデラがあり、その中心に上側が平坦になった小さな島が浮いている。
一行はその浮島へと降り立った。
「城というより神殿だな」
一行が降り立った先には大理石で柱と屋根が造られた建物がある。
「我が力が必要なときは、また呼ばれよ。小さき姫」
ドラゴンが空へと飛び立っていく。
フェリクスは全員の注意を自分に向けるため、建物を指さしながら説明を始めた。
「城の中心に封印の石碑があると言われています。封印の方法は街にある石碑を封じた方法と同じですが、いつ魔物が出てくるか分かりません。注意して進みましょ……って、言っているのですから!先に行かないで下さい!」
フェリクスの言葉を無視してオーブと蘭雪がさっさと建物の中へ入っていく。その後ろをフェリクスたちが慌てて追いかける。
最後尾を紫依と朱羅がゆっくりと歩いていった。
眠そうに前髪をかきあげている朱羅に紫依が話しかける。
「目は覚めましたか?」
「あぁ。シャワーをしていないから、スッキリとは目が覚めないな」
「どこで、あのお二人のことをお話しましょうか?」
「封印をしてからでいいだろう。だが話さなくても近々わかることだ。ほっといてもいいと思うが」
紫依が少し困ったように言った。
「これがお節介というものでしょうか?なんとなく、ほっとけないのです」
「確かにお節介だな。だが、君が望むなら俺も付き合おう」
「ありがとうございます」
笑顔の紫依に朱羅も軽く笑う。
魔物に遭遇することもなく不気味な静けさが漂う城内を一行が歩いていく。
しばらくして建物の奥で天井から光が降り注ぐ広間が見えた。




