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アウト!  作者: 紫乃
2/21

ご飯は大切です

どこまでも続く草原

  うん、日本にもあるね、北海道とか。

  行ったことないけど。

  友達が旅行に行った時のお土産おいしかった。



大きな湖

  ほら、琵琶湖とかあるじゃない!

  なんか色が黄色っぽいけど。

  …硫黄とか!



…噴火する山

  えーと。

  今噴火してる山…外国にあったな。

  アニメとかで見るようなおっきな噴火だなぁ。



……空飛ぶ竜

  えーと。

  模型。

  実は新型の戦闘機。



さすがに現実逃避が難しくなってきた…


明るくなって、私が見たのは現代日本の光景ではありませんでした…



思わず現実逃避に走った自分、悪くない。


気絶という名の二度寝に突入しそうになったんですけど、私の目の前、伸ばした足の上に鎮座する物体Xが…

「ぎゃん!!」

私のデコに激突して目を覚まさせてくださいました…

その物体X。

なんて表現すればいいのか。

大きさはバスケットのボール。

形は真ん丸。

色は真っ黒。

持てばあたたかくて、軽い。

…不明です。



「さて、どうしようかな」

物体のことはとりあえず放置することに決めて、これからのことを考えます。

現実を見ましょう…

「電波…」

携帯は圏外、当然ですね。

「食糧…」

鞄をあさっても、ペットボトルのお茶しか出てきません。

しょうがないよね、仕事だったんだもん。

夜勤に持って行ったおやつの残り、鞄に入れてくれば良かった。

じゃあ、帰る方法を考えながら、食糧さがしかな。

ぼーっとしてる間に時間は過ぎちゃうもの。

とりあえず動くか!

「よっこいしょー…」

ごろん

物体が足から転がり落ちた。

ころころころ

丘の下のほうに勢いをつけて転がっていきます。

あ、なんかちょっと罪悪感。

どうしよう、拾ってきたほうがいいかな。

どんどん転がって見えなくなりそうで、ちょっと慌てて走り出す。

「まってまって!」

ぽすん

そんな音を立てて、物体は岩にぶつかって止まった。

「あっぶな、見失うとこだっ…ぎゃん!」

抱き上げようとした私にまたぶつかってきましたよ、こいつ。

あれ、でもなんか。

「怒ってる?」

うん、雰囲気がね、拗ねた子供みたいな感じ。

ポーンポーンって跳ねてるんだけど、くるくる私の周りをまわってるの。

「ごめんね」

なんだかかわいく思えてきて、笑ってしまった。

人の言葉がわかるのか、ピタリと止まったそれは私をじっとみていた。顔は無いけど、そう思った。

「ネコみたいねぇ」

実家で飼ってたネコを思い出した。



機嫌を直したクロさん(仮名)は私をどこかに連れて行きたいらしい。どういう仕組みか、彼は私を引っ張って行きます。

「クロさんどこ行くの」

どんどん森の中に入っていくから不安になってくる。とっさに荷物つかんできて良かった。

「こんなにゆっくり歩くの久しぶりだな」

そういえばこの頃は仕事ばっかりで、ゆっくり散歩もできてなかった。

「仕事始まった時間・・・」

携帯は始業時間を示している。

「あー、遅刻。首だよきっと」

今日は担当の患者さんの検査があったな。不安がってたから一緒に行ってあげたかったな。

昨日手術だった患者さんの経過は大丈夫かなあ。

「早く帰んないと」

クロさんが返事してくれるわけじゃないから、ずっと独り言。

だんだん寂しくなってきた。

「?、クロさん?」

彼の引っ張る力が弱まった。

ぼーっとして気づかなかったけど、目の前に大きな木があった。リンゴっぽい木の実が生ってる大きな木。

「クロさん、これ食べれるの」

ポンポン。

食べれるらしい。

なんてお利口さん。

慣れてくると可愛いな。



意外においしかったです。

リンゴの味じゃなかったけど、カスタードクリームみたいなバニラの匂いがしました。

あ、クロさんも食べました。吸い込まれてなくなりました。

ほんとどうなってるのかな、これ・・・。




クロさんは私がリンゴもどきを鞄に詰めたのをみとどけると、また私を引っ張りだしました。

今度はどこに連れてってくれるのか、よく分かりません。

でも、不思議なことに怖いとか、警戒心とか全く感じないのですよ。

ふつうあるでしょ。

でも、この変な物体に関して私は全く警戒してないんです、無条件に信頼してるみたいな。

「わかんないなぁ」

クロさんが私を見上げた気がしました。

こんな訳が分からない世界で、変なものを信用して良いのかな。

ま、いいか。

だって他に頼るものないし。

クロさんなんでも知ってそうだし。

…それにしても、さっきからクロさん以外の生物?に全く出会わないのよね。

さっき丘から見た感じでは人外のものとか、怖いものとかいっぱいいそうなイメージがあったのに。

森はどんどん深くなっていくし。

まさかこの向こうに私を食ってやろうとか考えてる魔物が居たりして。クロさんはそいつの手下だったり?

……ないな、そんなに高等な考えなさそう。

ってか、私がこっちに来た理由ってなんなのかな。

ほら、普通の小説とかでは、伝説の勇者様とか、世界を救ったりする巫女さんとか、あるじゃない。

でもねえ、全くそんなんじゃない感じ。

多分ぽっかり空いちゃった穴かなんかに偶然にも落っこちちゃったんだろうね。

たまたま。

ああ、ついてない。



ねぇ、クロさん、そろそろ疲れました。

アラサーの体力のなさ、見くびってはいけませんよ!




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