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vol.21【ずっとそのままで 第5話】

さっきの道を引き返して、渋谷駅に戻る。

タクシーで帰りたかったが、こんな狭い道では通れないし、

捕まらないだろう。幸いオタク男の数は、行きよりは減っていた。


「え? なに? 麻巳子ってこんな時間からバイトしてるの?」

「してないよバイトなんか。逃げ口上。

やっぱ、みうなって宇崎さんのこと好きだったんだね」

「う、うん、まあ……」

「みうな」


突然、麻巳子が立ち止まった。あたしの正面に向き直って、腕組みをする。


「ちょ、麻巳子? 終電行っちゃうよ」

「みうな、これだけははっきり言っておく。

もうお好み焼きとかビールとか、カロリーの高いものは

絶対に食べたり飲んだりしないでね」

「それは、わかってる」

「ならいい。それと、みうながこの先、

モデルとしてどんなに綺麗になっても、

宇崎さんはあんたのこと、相手にしないと思う」

「それもわかってるよ。あたしはモデルとして商品になるんだから。

あの宇崎さんが、商品に手を出すわけないでしょう?」

「そこまでわかってるならいい。

さすが『DIY』に勤めてるだけのことはあるわね」

「でも、麻巳子……」


いつのまにか、あたしの目から涙が溢れてきた。鼻水も。


「あたし宇崎さんのこと、好きになっちゃったよ、

好きになっちゃうよ。なのに、なのに、

よりによって、えみり部長と……」

「それ以上、言わなくていいよ」


麻巳子は、あたしのでかい図体を抱きしめた。

涙も鼻水もドバドバ出てきて、麻巳子の脳天に垂れ落ちる。


「ごめん。翔君って、ちょっと鈍感なとこあるから」

「大丈夫」

「たぶん、初恋だよね。みうなにとっては」

「うん」

「みうなと話してると、たまにその『えみり部長』の話が

出てくるけど、そんなにいい女なの?」

「うん。三十過ぎてるけど、すごくカッコいい人」

「そっか。初恋の相手が、上司と付き合ってるなんて、ショックだよね」

「うん」

「あんまり、宇崎さんのこと、思いつめちゃダメだよ。

そんなに魅力的な恋人がいるんなら」

「うん」

「あたしだって努力して、ワセダの男捕まえたり、

翔君捕まえたりしたんだからさ。

女は誰だって努力すれば、綺麗になれるの」

「うん」

「みうなも、努力して綺麗にならないといけない立場に

置かれたんだからさ、そのままでずっといちゃダメ」

「うん」

「綺麗になれば、宇崎さんよりイイ男、きっと見つかるから」

「……。」


麻巳子の最後の言葉には、返事が出来なかった。


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