vol.20【ずっとそのままで 第4話】
「え? どういうこと?」
「いやぁ、バンドって、俺みたいな悪そうなキャラが
一人いた方がビジュアル的にも目立つでしょ?
それに、俺はやっぱり、お好み焼き屋じゃなくて、
バンドとして成功したいから。ジジイになってもこの格好はやめないよ」
「そっか、翔君にとっても、チャラ男の格好はヨロイ……」
ジュワーーーー!
翔君が、お好み焼きの種を鉄板に流した音で、あたしの言葉はかき消された。
「ん? なんか言った?」
「いや、なんでもない……」
あちゃー「翔君にとっても、チャラ男の格好は鎧なんだね」と
はっきり言って、そこから宇崎の話に持って行こうとしたのに。
それからは翔君の武勇伝ばかり。肝心の宇崎の話はほとんど聞けてない。
終電の時間が迫っていた。あたしは単刀直入に聞いちゃうことにした。
「ねえ、翔君。う、宇崎さんって、彼女いるののの?」
(やばい! 噛んだ!)
翔君は「わかってたよ」とでも言いたげな笑いをあたしに向けてきた。
「宇崎に彼女? ハッハハ! あいつに彼女がいないわけないっしょ。
俺の知ってる限りでは、あいつは女が切れたことなんてないよ。
こないだ宇崎に会ったら『年上の女と付き合いはじめた』って言ってたなあ」
「年上の女と付き合いはじめた。しかも“こないだ”ってことは
つい最近だよね……翔君、その女の名前ってわかる?」
「名前? えーっと確か『えみ』だか『えみこ』だか……」
「えみり?」
「あ、そうそう。えみりえみり。やっと思い出した。えみりだえみり」
「そっか『えみり……』」
「え? どうかしたの、みうなちゃん」
「……部長ってば」
「あ、バイトの時間だ! 翔君ゴメンまた来る。みうな、帰ろう!」
「や、そんなにせかさなくても……」
「帰ろう!」
バタン!
「はて? 俺、なんか変なこと言ったか?」




