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二 – 2

六月も半ばに入ったある日、和那が学校から帰りリビングに入ると、母親に手招きされて台所に呼ばれた。

リビングには雄大もいたのだが、自分だけ呼ばれた和那は嫌な予感がした。

和那は春休みの出来事をすっかり忘れていた。

そして母親から予想もしなかったニュースを聞かされた。


「海ちゃんの赤ちゃん・・・・だめだったって」


母親の言葉に和那はとっさに声が出せなかった。


「いつ・・・」


普段は話し好きな陽菜もさすがに口が重く、低い声で言った。


「赤ちゃんは先月。それでね、海ちゃんは検査で卵巣に腫瘍が見つかって。

手術で片方を取ることになったって」


和那は病院で見た海の表情を思い出して言った。


「海ちゃん・・・また赤ちゃんできるよね・・・」


和那は自分の声が震えているのを感じていた。

そんな和那の肩を陽菜は優しくさすった。


「卵巣はもう一つあるから大丈夫。

海ちゃんは今週の月曜日から入院していて、手術は明日だって。

看護もね、お手伝いさんをお願いするそうだから大丈夫だって。

でも開腹手術をするそうだし、心配だから様子を知りたいのだけど、母さん、金曜日から父さんのところに行くつもりで支度をしないといけないから、面会時間内に行けそうもないの。

明日は面会できないって言われたから、だから和那、明後日の学校の帰りに、病院に寄ってくれない?」


和那の父親はこの春から単身赴任をしていたので、母親は隔週末に新幹線に乗って父親のところに行っていた。

父親に会いに行く前の母親は、まるで恋人と会うかのようにそわそわしていた。和那は母のそんな姿を可愛いと思っていた。

和那は病院で見た海の様子を思い出しながら言った。


「お見舞いはいいけど、私は海ちゃんの役に立つのかな?」


和那にすれば、海を連れて散歩に出ただけのことだった。

陽菜はうなずきながら言った。


「前に和那がお見舞いに行った後、海ちゃんと義彦くんから何度もお礼を言われてね。海ちゃんも明るくなっていたし。

和那はなんだろう、人を元気にするところがあるから」

「母さん、後半は褒めていないでしょう?」

「いつでも元気なのが和那のいいところよ。お願い。

和那の好きなケーキ屋さんでチーズケーキ買ってくるから」


まるで友達のような母の言葉に、和那は根負けして言った。


「ホールで買ってね。雄大にもわけてあげるけど、あたしが大きいのをもらうから」

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