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鬼人の國 -風の英雄譚-  作者: 清涼飲料水
第2章「少年期 帯刀編」
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第11話「焦り」

 

 あれから、鬼は屋敷には現れていない。

 何でも、あの鬼は父さんたちが討ちもらした一匹だったらしい。

 そして、力を蓄える為に屋敷に入った所を俺に見つかった。

 そういった流れがこの間の事件の流れという事だったらしい。


 俺が鬼と戦ってから半年が経った……その間、俺はかなり焦っていた。

 この半年、訓練を続けているのだが……いかんせん成長していないのだ。

 もちろん、繰り返しただけ体力などは付いてきている。

 だが、技術というなんというか……あまり自分で成長している感じがしないのだ。


 こうしている現在も、ヒバリに稽古をつけてもらっている。


「ハアッ!」

「むっ、遅い!」


 俺の渾身の一撃をあっさりと受け流され、カウンターをもらって俺は木剣を取り落としてしまう。


「……参りました」

「はい、お疲れ様です」


 そしていつものように、降参をする俺に対してヒバリが口を開いた。


「どうやら、壁にぶつかっていますな」

「ええ……どうしても先に行けません」


  俺は、現在……壁にぶち当たっていた。

 どうしても、ヒバリと父さんに一撃を入れることができないのだ。

 なぜなのか、渾身の一撃をあっさりと避けられる。


「どうすれば……先に進めますかね?」

「申し訳ありません、私では分かりかねます」


 そうか、ヒバリでも分からないのなら俺なんかでは、どうしようもないのかも知れない。

 うーん、どうしようか……。


「アラシ様、一つ提案がございます」

「提案……ですか?」


 うーん、と唸る俺にヒバリが見かねて一つ提案をしてくれた。


「当主様……総一郎様にご相談なさいましょう」


 やっぱり、最後に頼れるのは父さんだった。



 ---



 そこからの話は早かった。

 ヒバリが父さんの仕事の空き時間に話をさせてくれるように約束を取ってくれる事になった。

 そして今、俺とヒバリは父さんの部屋にいる。


「さて……話とはなんだ、アラシ」

「はい、父さん……実はですね」


 俺は今現在、壁にぶつかっている事を話した。

 そして、どうすればいいのか分からないのかも。


「ふむ……俺も昔、お前と同じ時期があった」

「父さんが?」

「ああ、確かあの時は13の頃だったか」

「そ、その時はどうやって解決したのですか!?」

「ああ、待て、確か……」


 父さんは、そんな俺を見て考えるそぶりを見せて……やがてハッと気づいたような顔をして、口を開いた。


「アラシ……お前、出稽古に行くといい」


 出稽古というと、道場とかか?

 そう思っていると、ヒバリが口調を荒げて反発する。


「当主様、私は反対です!」

「ヒバリ、なぜだ?」

「アラシ様は、まだ若い! 基礎を積ませてからでも遅くはありませぬ」

「基礎など、アラシはすでに出来ているだろう」

「確かにそうですが、しかし……」

「ヒバリ、お前はアラシがなぜ成長出来てないか、分かるか?」


 父さんがヒバリを諭すように、そう呟く。

 すると、ヒバリは声に詰まってから口を開いて言う。


「解りませぬ」

「だろうな、お前は俺達とは少し違う……故にアラシには分からん」

「ど、どう言う事ですか!?」

「アラシは、同年代の強者を知らんのだ」


 父さんがそう言うと、ヒバリはハッとした顔をした後に、ゆっくりと頷いた。


「このヒバリにも、解りました」

「うむ、流石だヒバリよ」


 えっ?

 今ので分かったのか?

 俺にはさっぱりだったんだが。


「そこまで言うならヒバリは止めませぬ。

 して、出稽古先とは、総一郎様は目星をつけているのですか?」

「ああ……」


 おお、あの脳筋の父さんがすでに、修行先を見つけてきている。

 なら、かなりの道場とかに違いない。

 例えば、一子相伝の暗殺拳を授けてくれる家系とか。

 いやもちろん、そんな所は行きたくないが。

 そして、父さんが俺達に向かって、ニヤリとした顔で口を開いた。


「行き先は、炎の使徒……『帯刀』家だ」



 ヒバリの反対の声が屋敷中に、響き渡った。

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