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変わり者と妖精の木  作者: きょんしー
第一王女と第四将軍の出会い
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西方国境④

ティアナの話を聞き終えたクレアは、


「…それでティナが一人で出てきてしまったのですか?」


と、少し厳しい目つきで言う。

その言葉の意味は、ティアナだってわかっているつもりであった。

ティアナがただ頷くと、クレアは、


「それは、一国の姫としてすべきではなかったですね。理由はあなたならばわかっているはずです。」


と、いつもよりも低く、落ち着いた声で言った。

ティアナは頭の中で、自分の言い分を探したが、全て子供の言い訳にしかならなかった。

ひとりで飛び出してきた挙句、このざまなのだから当たり前である。

そもそもティアナは、あのミランという少年が居なければ、クレアに会うこともなくあの場で死んでいただろう。

ティアナは返す言葉もなく下を向いた。

自分がもっと強かったらと、自らの弱さを呪った。

悶々と今までのことを反省していると、ふっと頭に何かが触れ、ティアナがそれがクレアの手だと気づくのに数秒かかった。


「…いや、すみません。本当は、心配して来てくれたこと、嬉しかったんです。ティナ、ありがとうございます」


そんなクレアの言葉に、ティアナは初め、クレアが自分に遠慮して、慰めようとしているのだと思った。だが、顔を上げてクレアの顔を見ると、その本当に嬉しそうな表情に、クレアは本当に思っていることを友達として言ってくれているのだと理解した。

そして、さっきの厳しい言葉は従者として言わなければならない事だったということも。


ティアナはただ生まれて初めて誰かに礼を言われた事が嬉しくて、気がつけば目から涙がこぼれていた。

もっと、役に立ちたいと強く思った。

それを見たクレアは、ギョっとしたように目を見開いて、


「ティ…ティナ!? ど…どうしたんですか、怪我が痛みますか?」


と言いながらオロオロと両手をさまよわせた。

ティアナがそれを首を横へ振って否定すると、さらにオロオロとしだす。


「そ…それじゃあ、俺が言ったことが何か気に触りましたか?それとも…」


それをティアナは遮って、


「…違う、お礼なんて、言われたの初めてで、嬉しいの、すごく…」


と、クレアにまだ涙が止まらない顔で少し笑った。

その時、洞窟の入口の方から、少し大き目の足音と共に、大きな声が響いてきた。


「クレア将軍ーーー!!!」


と。その声にクレアは反応して、ティアナに短く自分の仲間であることを告げると同時ぐらいに洞窟の開けた場所に茶髪で短髪の背の高い兵士が滑り込んできた。その人物は、あちこちに真新しい擦り傷や切り傷があったが、それらを痛がっている様子は無かった。


「妖精の木周辺の西方国境の調査終わりまし…た…」


その兵はクレアに向かってそう報告をしている途中で、ティアナの姿を見つけ、報告をなんとか続けながらティアナのことを凝視した。

急な彼の登場により、不思議なぐらいピタリとティアナの涙は止まってしまった。


「も…もしかしてティアナ姫様ですか!? 何故こんな所に…」


「…帰ってきて早々悪いが、後で色々と説明はするから、先に報告を頼む、カーク。」


カークと呼ばれた兵士は、クレアの言葉を受けて、真面目な表情になって報告をはじめた。


「はい、やはりクレア将軍がよんだ通り、妖精の木周辺の方がオークの数が多いと思われます。ざっと見たところ三十体ほど。姿も、持っている武器も全く同じです。攻撃のパターンも、そして弱点も同じでした。」


そんな報告を受けて、クレアは困ったように眉をひそめながらカークに言葉を返す。


「動きの確認はしなくていいと言ったのに…それでそんなに傷が増えているのか?」


「こんなの何ともありません。あの化物共を皆殺しにしないと気がすみませんから。クレア将軍だってそうでしょ?」


「けど、オークは無限に湧いてくるようだ。今は、城へ帰還して王へ報告することが先だよ」


「でも!何人仲間が殺されたと思ってるんですか!! 最初にあの怪物と遭遇した時、俺の目の前で二十七人殺されたんです! たった一人しか俺は助けられたかった…。しかもやつらは人を喰らうんです。そんな怪物、野放しにしておけません!」


そんな風に声を荒らげるカークだが、その言葉に一番衝撃を受けたのはティアナだった。

クレアが無傷で生きていたことをうけて、勝手に事態を軽視していたのだ。

城で見た人の死の衝撃も、少しだが薄れてしまっていた。

ティアナはまさか、三十人の小隊が二人を残して全滅だとは思っていなかった。

それも、あの巨大な一つ目の怪物に食べられたのだという。

ティアナが最初に滑り落ちた血だまりは、小隊の兵士達が殺された跡だったのだ。

そう思うと、ティアナはゾッとした。

おそらく、カークが助けた一人というのが城へ伝令に来た黒髪の兵士だろう。


「…カーク。それを解決するために、城へ戻るんだ。体勢を立て直してから根絶やしにしてやればいい。とにかく、今は帰ろう。」


クレアの落ち着いた声と、少しの笑顔でカークは冷静さを取り戻したようで、小さく、だが少し不満そうに、わかりました、と返した。

ティアナは、クレアが今黒髪の兵士のことをカークに伝えない理由が、カークがまた冷静さを欠いて憎しみに任せて怪物達を倒しに飛び出してしまわないようにするためだろうと解釈した。

だが、それだとカークは城に戻って初めて自分が助けた仲間が死んでいると知るだろう。

どちらがカークにとって良いのか、ティアナにはわからなかった。

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