☆ ☆ ☆第64話 ペット
残酷な描写があります。苦手な方はご注意ください。
友人のミノリがある日一枚の写真をSNSに載せた。ぐったりと横たわる茶色の猫の写真で、「怪我して弱っていたので保護してみました」の文が添えられている。
気になってコメントを付けてみたが、元が野良なのか逃げ出してきた飼い猫なのかもわからないらしい。様子を見て病院に連れて行くつもりで、元気になったら遊びに来てほしいという。私は「楽しみにしてるよ! お大事にね」と告げて会話を終えた。
それから数日。社交辞令のつもりでいたけれど、ミノリがどうしてもと言うので彼女と会うことになった。家に入るのはかなり久しぶりだ。
玄関に入るなり、嗅ぎ慣れない臭いがむっと迫ってきた。思わず顔をしかめ、猫の臭いはこんなにきつかっただろうかと考える。
部屋の主であるミノリはこの臭いに慣れてしまったのか、私の反応に不思議そうな顔をしながら奥の部屋へと案内してくれた。ソファーに腰掛けて他愛もない会話をいくつか挟み、ようやく件の猫とご対面の時間になった。
「足が悪いみたいで自分で歩かないのよ」
そう言いながらミノリが抱えてきたのは、腐乱した猫の死骸だった。部屋に充満する異臭がさらに濃くなる。脇腹の一部は腐敗した肉が削げ落ち、肋骨や内臓が剥き出しになっていた。
――ミノリ、その子死んでるよ。
私が告げようとしたその時。
生命活動を終えたはずの猫の双眸がぎょろりと動いて、私を睨み付けた。
思いきり悲鳴を上げたことは覚えている。けれど、その後どうしたのかは思い出すことができなかった
あれ以来ミノリとは会っていない。