☆ 第63話 花火
いつか恋人ができたら、一緒に花火大会に行きたいな。
夢見る少女だった私は、夢見る少女らしい蕩けた妄想を胸に生きてきた。けれど、それが現実になることはないまま呆気なく事故死。死んでから自分の生き方の馬鹿馬鹿しさに気付いたけれど、時はすでに遅かったらしい。
「恋人と花火大会に行く」
そんな馬鹿げた未練のために成仏できなくなってしまったのだ。
私の周りで愚痴れる対象は、正体不明のヘンな霊ばかり。小さくて微妙に発光している。人懐っこいから元はきっと犬とか猫みたいな動物だったんだろう。
「幽霊んなってから恋人作ろうってのがまず間違ってると思うのよね」
返事をしない小さな発光体は、身体を擦り付けるように私の周りに集まってくれた。
そこに通りかかったのは、私と同じくらいの年頃の男の子だった。
「あなたが輝いて見えた」
後に彼は私の第一印象をそう語った。彼はそれを「一目惚れ」だと勘違いしていたけれど、あえて訂正はしないでおく。このチャンス、逃してなるものか。
奇遇なことに、彼も私と同じ未練を持った幽霊だった。けれど季節は秋。この辺りじゃ花火大会は軒並み終わってしまったので、私たちが成仏するにはもう一年かかりそうだ。
ため息をついて空を見上げる。それを合図にしたかのように、空に沢山の光が弾けた。音こそ聞こえないものの、それはまさに花火だった。私の周りにいた正体不明のヘンなやつらが、空に昇っては弾けていく。まるで私たちを祝福するように。
未練が晴らされたから、体が消えかけている。気付いていても、私たち二人は手を繋いだまま静かに無音の花火を見上げていた。
たまにはこんな話もいいでしょう?




