第3話 時は金なり
それからしばらくして……
「……血を流しすぎたな」
治療を終えたヴィランはおぼつかない足取りで自身の部屋へと向かった。
「ハァ!ハァ!なんと情けない!
そして、なんと無様なのだ!」
部屋に到着すると輸血パックと痛み止めのパックを引き出しから取り出し、針を自身の腕に刺し、タイマーをセットしてベットに横になる。
(少し……1時間だけ眠ろう。
時間は無駄にできない!時は……金なりだ!)
薬の効果もあってか、すぐに眠りに落ちた。
『と……さ……ん!』
(ん?……誰だ?)
『お父さん!』
(……まさか、そんな!?)
『どうしたの、あなた?
死人を見るような目をして……』
(……嘘だ。妻も娘も……死んだはず……)
『よぉ!我が心の友よ!寝てんのか?
可愛い寝顔しやがって。抱き締めてキスしたくなるぜ!』
(なっ!?……なぜ、貴様がここにいる!?
マッシュ!!)
『ゲハハハ!こんな所で寝ていると風邪引くぞぉボス!』
(……ボビー!!)
『大丈夫?顔色が悪そうね……ボス』
(……レイラ!!)
『仕方ない。このまま寝かせておこうぜ』
『ああ、そうだな』
『そうね』
『奥さん、娘さん。向こうに旦那が俺たちにプレゼントを用意してくれたそうだ。良かったら一緒に見に行かない?』
『ええ、もちろん!』
『行くーー!』
マッシュたちは2人を連れてどす黒い闇の中へと入っていく。その時、マッシュたちが勝ち誇るように邪悪な笑みを俺に見せた。
(そこに行くな!!そこに入るな!!
俺はそこを知っている!!
その闇を知っている!!
そう……俺は知っている……いや、知っていた。
2人の末路を……)
闇の中から血まみれの木箱が2つ現れた。
(……おのれ……おのれぇぇぇぇぇ!!)
ヴィランは突如覚醒し、タイマーのスイッチを押す。
「……なんて悪夢だ」
ヴィランはふとタイマーを見る。
「……59分。ククク……クハハハハハ!
わかってるじゃないか俺!
そうとも!時は金なりだ!」
ドクロの仮面についた自身の血を拭い、再び顔に装着した。次に鏡を見ながら冥界の衣を整え、その後、部屋から出る。行き先は太一を監禁している研究室だ。
中から太一の悲壮感溢れる声が聞こえてくる。
「フッ」
ヴィランが研究室の扉を開けると、手術台で大の字で拘束され裸にされた太一が涙目になりながらヴィランを見つめた。
「ヴィ、ヴィラン!!助けて……」
「……凄い匂いだな。糞便も足らしたのか?
まぁ、その気持ちは痛いほどわかるよ太一君」
「助けて……ください!!」
「……ふん」
ヴィランは引き出しから、ノコギリやトンカチ、ペンチ、鋭利な刃物等々を次々と机に並べる。
「恥ずべきことではない。誰だってそうなる。
俺もね……敵対組織に拉致られて拷問を受けた時にしょんべんを漏らした!!奴ら、爆笑してたな!!もちろん、その後やり返してやったが……」
「助けてくれよ!!ヴィラン!!」
「……ふむ」
ヴィランは太一の頬を優しく撫でる。
「ヒッ!?」
「ふふふ……ひどい顔だな。涙と汗とよだれまみれじゃないか!!ハッハハハ!!」
「助けて……助けてぇ!」
掠れた声で太一は懇願するが、ヴィランはそれを無視する。
「……本当はもう少し、君を生かしておくつもりだったんだが、気が変わってね。
君も知っての通り、明日、神炎学園の始業式が行われるだろ?」
「し、神炎……学園?マッシュさんたちが行く?」
「そう。マッシュさんたちが始業式で演説するだろ?ぜひ、俺からのプレゼントを送りたい!君の首を!」
そう言ってヴィランはトンカチで太一の足指を殴る。
「ぐぎゃあぁぁぁ!?」
「君の絶望し苦悶した表情をした首を渡せば、奴らは、俺の気持ちを理解してくれるだろう!」
もう片方の足指もトンカチで殴る。
「あああああーーー!!」
「……時間はたっぷりある。
頑張ろうな、太一!俺もがんばるよ!」
ヴィランの拷問は数時間続いた。




