プロローグ
とある酒場にて、4人の男女が酒を飲みながら会話していた。
異世界勇者、佐藤太一。
聖騎士所属の精鋭タンク、ギース。
そして、太一の連れである短剣使いの踊り子、クイーン。
最後に……曲芸師であり、このパーティー最弱の荷物持ち。フード付きの黒のマントを羽織り、ドクロの仮面を被った男、ヴィランだ。
「早速だが、ヴィラン……お前をパーティーから追放する」
「え、えぇ!?な、なぜですかぁぁ!?
理由を教えて下さい!!」
「決まってんだろそんなの!てめえが、能無しの役立たずだからだ!なぁ?ギース?」
「はい。太一様の仰る通りです。先程の戦いでも、こいつが荷物をもたつかせたせいで前線が崩れました!」
「い、いや!それは……その……ゾンビの数が多すぎて……」
「結果、私、あんたのせいで怪我したんだけど?」
「この無能の無駄飯食らいが!」
そう言って太一は、丸テーブルの向こう側からヴィランの腹へと、容赦なく蹴りを入れた。
「がはっ……!?」
衝撃で、ヴィランの身体が酒場の床へと転がされる。
「キャハハハ!マジウケるんですけど!」
「お、お願いです!太一様!見捨てないで下さい!このマントも!この顔に被ってるドクロの仮面も呪われてて!自分の力ではどうやっても外すことができないんです!」
そう言ってヴィランは土下座する。
「お金が、お金が必要なんです! 曲芸なんかじゃ、その日の飯を食うのがやっとで……っ!
でも、太一様のような最高の冒険者の下なら、いつか……いつか呪いを解く大金が稼げるって、そう思ったんです! だから……だからお願いです!!……見捨てないで下さい!」
「……フンッ」
太一はギースに目で合図を送ると、ギースは静かに剣の柄を握った。
その瞬間、妖艶な笑みを浮かべながらクイーンが太一に耳打ちする。
「ねぇ、太一様?どーせ殺すなら、もっと面白く殺りません?」
「……面白く?」
「ええ……悪魔の洞穴で、例のモンスターをおびき寄せるエサにしちゃうんですよ。
ヴィランが泣き叫んで死ぬところを見て、ついでにレアモンスターも狩る……一石二鳥だと思いません?」
「……成る程ね!」
太一はニヤリと下品な笑みを浮かべ、軽く手を上げてギースを制した。
抜かれかけたギースの剣が、静かに鞘へと収まる。
「……チャンスをやろう、ヴィラン。
明日、悪魔の洞穴というダンジョンに行く。
そこに……ヒト型で全身銀色のゾンビが出たとか……
そいつを狩れ。お前1人でな。
それで……まぁ、お情けで考えてやる!」
「は、はい!はい!頑張ります!
ありがとうございます!ありがとうございます!」
地面に額をこすりつけるヴィランを見ながら、太一はクイーンの尻を撫でる。
「……期待してるぜ」
「いやん!……うふふ、太一様、エッチすぎますってー!」
「死ぬ気で頑張りますぅぅ!
見ててください、太一様!あなたの恩義に報いて見せます!……必ず!」
涙声でそう叫びながら、ヴィランはなおも床に額をこすりつけ続ける。
フードとドクロの仮面に隠されたその顔が……今、どんな邪悪な笑みを浮かべているかも知らずに。
(……愚か者め)




