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第5話 海魔クラ―ケン

「アナトさん、この冷蔵庫に入っているドリンクってなんですか?」


 バミューダへの移動中、コックピット内に小型の冷蔵庫の存在に気付いたウテナが質問する。


『ああ、それはマナドリンクと云って、魔力が枯渇しそうになった時に飲むものです。ただ…ウテナさんの場合は強力な精神波…ESPと云いましたっけ?それで私の動作に作用しているので、効くかどうかは判りません』


「でも、魔力とESPは似ているんですよね?だとしたら効くのでは?」


 アナトは沈黙する。正直な処、分析をしたわけでもないので答えられないのだ。


「うーん。アナトさんでも判らないのでは仕方ないですね。いざと云う時に試してみましょう」


『え?試しちゃうんですか?効果もわからないのに?』


 ウテナはニコニコしながら頷く。


「はい。だってピンチの時にはイチバチですから」


 ―イチバチ?イチかバチかと云う意味??


 アナトは首を傾げる。やはりこの方は、所々であの方と似たような言動をなさるなと。


『ま、まあ、そうならないように頑張りましょう』


「はい!」










 ―バミューダ海域―


 そこは古き時代より、謎の海難事故多発地帯であり、海だけに限らず空に於いても、摩訶不思議な消失事件などが発生する場所である。今、彼女達はその空域にいる。


『…次元力エンジンに何らかの干渉がありますね。次元境界線が歪んでいるのでしょうか?』


「そうなんですか?さすがバミューダトライアングルです!」


 アナトの心配を余所に、ウテナは興奮気味である。やはりあの世界のウテナと、同類なのであろう…。


『取り敢えず魔導力エンジンの割合を上げますので、気持ち悪くなったら言ってください』


「わかりましたー!」


 元気良く返事をするウテナに、アナトは内心苦笑する。口でもあれば、緩んだ表情にでもなっていた事であろう。





 ピッピッ


 魔力センサーに僅かな反応が見られたのは、それから5分ほどの事であった。



「十時方向!?アナト!!」

『はい!ウテナ様!!』


 思わずアナトを呼び捨てにしたウテナに対し、アナトは様付をして返していた。まるで女神にでも返答するかのように…。そしてアナトは素早く旋回すると、水中へと飛び込んでいた。


『反応値増大!!この値は…魔王クラス!!?』


 アナトの叫びが海中に響くと、海の底からユラーっと大きな島のような物がゆっくりと接近する姿を、モニターは捉えていた。その大きさは400mもあろうか…幾つもの触手が傘のような本体から生え、こちらの様子を窺っているようであった。


「これは…クラゲ?巨大なクラゲの妖魔ですか?」


『…ですね。しかもこの魔力量は尖兵などではないでしょう』


 次元力エンジンがハーフドライブでしか使えない現状に於いて、最悪な相手と遭遇してしまったと、アナトは悔いた。魔導力エンジンとのツインドライブであるなら造作もないのであろうが、魔導力エンジン主体では初心者マークのウテナでは不安があるのだった。


「アナトさん。不安があるのなら、この海域からあのクラゲさんを追い出せばいいんじゃないですか?」


『追い出す?…なるほど。主戦場を変えれば良いんですね』


 アナトは背部から魔導ランチャーを取り出し照準を合わせる。


『ウテナさん、トリガーを任せます。貴女はそれを引くだけで構いません』


「わかりました。このクロスサインが中央に合わさった時で良いのですね?」


『はい。任せましたよ』

「任されました!!」


 水中でありながらも、アナトは音速に近い速度で妖魔に肉迫する。


 それは彼女の機体能力、グラビティー・シールドによる恩恵である。この能力によってコックピット内の重力制御も自在に行える為に、どんなに激しく動いても、操縦者への負担は少なくなっているし、機体周辺の重力値を操作して、圧力や抵抗さえもゼロに等しい状況にできるのである。


「ロックオン!シュートォォオオ!!」


 肉迫しているので、ロックオンも何もないのだが、ウテナは口角を上げながら叫んでいた。


 バシュウウゥウウ


 水中を60mmの弾丸が突き進み、巨大クラゲに突き刺さると、巨大クラゲは声を挙げた(・・・・・)


『貴様ーーーー!この私に…ルーク級邪神兵、海魔のクラ―ケンに名乗りもなく、いきなりの砲撃とは!許さんぞ!!』




「し、喋った!?」

『え、ええ。精神感応(テレパシー)ですね』


 二人からすれば、まさかのリアクションであった。しかし、そこは気を取り直してアナトも返答する事に決める。


『闇雲に暴れ回る尖兵とは違うと気付かず、失礼いたしました。私は機鋼甲冑アナト。別の世界よりこの世界を救う為に遣わされた者です』


『貴様、あのようなポーン共と私のようなルークの見分けがつかんと申したか!?哀れな、所詮は天使級か』


 ―ポーンにルーク…これはチェスの駒と階級が一緒と云う事であろうか?ではその上にはナイト、ビショップ、クイーン、キングが居ると云う事なのでしょうね。キングは勿論…邪神ですか。


『貴方は今、私を天使級と仰いましたね?神の介入を覚悟の上と見ましたが?』


『道理であろう!我ら邪神軍が攻め入れば、必ず神の使徒共が現れる』



 ―なるほど…この世界以外でも彼等は暴れ、それらの経験を積んでいると云う事ですか。




 アナトが思考をする中、コックピットのウテナは、非常に不機嫌な表情になっていた。


 その理由は…




「ちょっとアナトさん!!私にも名乗らせてくださいよ!相棒(バディー)でしょ!?」


『あ…はい。構いませんよ』


 ウテナはゴホンと咳払いを一つして、マイクを睨む。そして名乗りを挙げた。




『我こそは大天使アナトが相棒、ウテナ・ハーゲン!ポークだかルーだか知りませんが、アナトさんと私にかかれば、貴方など一刀両断です!!』




 ウテナさん…お腹が空いてらしたんですね。。。

さあ、そろそろ暗い雰囲気から脱せそうですよ!

いけいけウテナ~♪

頑張れ頑張れアナト~♪

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