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神華牡丹学園物語  作者: 瑞目叶夢
九十九の心人に無し
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ナイト気取りの男の子



煤煙と糜爛が来るのは明日、千李達は真望が話すのを待っていた。


自分達を信じて、隠していることを話してくれないかと待ったが、真望は普通に接しているようでどこかそわそわとして落ち着きがなく、逃げるように離れていくことが多かった。




「もう我慢できない!!」




「ダメよ千李、待ちましょうよ」




ほかの4人は待ったが短気な千李は我慢ができなくなり、後1日と言うところで真望を捕まえる


部屋で聞いてもよかったのだが、最近の真望は千李が寝たころに部屋に戻り、千李が起きるより早く談話室に行って居る、人が居るところでしか捕まえられないのだ




「なんだい千李、痛いじゃないか」




逃げられないように千李は少し強く真望の腕を掴む




「真望、煤煙が原因なの?」




腕を掴まれ逃げられない真望、廊下で人はほとんどいない、千李はできる限り静かに、声を荒らげないように聞く




「原因って何だい?」




真望は至極落ち着いた様に千李に言葉を返す、




「僕たちを避けるのは日本での事件を隠したいのかって聞いているんだよ「千李!」




千李の言葉を美羽がたしなめるが、もう遅く、真望は瞠目してせわしなく目を泳がせる


まるでここから逃げたいように手を引こうとするが、力は幼いころから鍛えている千李の方が圧倒的に強く、逃げることはできなかった。




「どこまで知っているんだい」




はぁと観念したように諦めて真望とは思えないほどに暗い顔になる




「日本で自殺した子をイジメてたやつらが廊下で溺れかけた事だけだよ」






「それだけ?」




気の入っていない真望の声に千李は責めるように言う




「そうだよ!いじめっ子を懲らしめたくらいで僕たちの態度が変わるとでも思ってるのかよ!やり方は間違ってるけど、佳弥子(かやこ)ちゃん、大事な子だったんじゃないの?」






佳弥子と言う言葉に真望は辛そうに笑う




「違うんだよ千李・・・」




「違うよなぁ真望」




聞きなれない声が聞こえて振り返れば、そこに居たのは煤煙だった。




「久しぶりだなぁ真望、金の卵、読んだぜぇ?お前・・・正義のヒーローになんてなったのかぁ?あんなことしといてよぉ」




ニヤニヤとあざ笑うように真望に問いかける煤煙を見て千李達は真望を隠すように真望と煤煙の間に壁を作る




「おうおう、こんなにお友達作ったのか真望、こいつらはお前の罪を知らないみたいだなぁ?なぁ真望・・・」




ニヤニヤと楽しそうに笑う煤煙に千李が反論する




「知ってるさ!水操作でいじめっ子を「違うんだよぉ」




煤煙は千李の言葉を遮って首を振るそしていやらしい笑いかたをしながら千李を見る




「違うんだよなぁ、いじめの原因を作ったのは真望だぞ?」




「は?」




千李は思わず真望を見る




真望は酷く傷ついた顔をして目を背ける




騒がしい廊下に何人かの生徒が様子を見に来る


それに気を良くした煤煙は続ける




「そいつが言った”ちびアホ”と言う軽いからかいを聞いたクラスメイトは真望が居ない時ずっとそれを交えて女をからかった、それまでは大人しくてとっつきにくくて相手にされなかったのにだ、どういう経緯でそんな酷い事を言えたのかしれないが、確実にその悪口は肥大化した。真望の知らないところでな、ところが真望は、自分が居ない時にみなが相手をしてくれているなんて勘違いした、だからイジメになんて気が付かなかったんだ、なぁそうだろう?間抜けな真望、あぁ可哀想な女、守っているつもりのナイトが隣でただ笑っているだけだったんだもんなぁ」




全員が真望を見る、真望は床を見て千李達と目を合わせないようにしている




「可哀想に、自殺した魂は自殺場所から動けず成仏もできない、あの女は今も飛び降りた校舎で一人寂しくお前を恨んでいるんだろうなぁ」






そこに南千珠が現れる




「乱歩、何をしている、学校案内をするから昇降口で待っとけと言ったはずだぞ」




千珠の言葉に不満顔をする煤煙は舌打ちをしながらも千李達の後ろにいる真望を見てニヤッとする




「すみません、旧友が居たもので、じゃぁな、真望、また仲良くしてくれよ・・・学友として、な?」




そう言って煤煙は千珠と共にその場を去った。




それと同時に真望も走って次の授業の理科室に走ったのだった。




昼休み、真望の話はもうすでに学校にめぐっていた。周りの生徒は遠目に真望を見てこそこそと話すからか、真望は大広間には来ていないので千李は美羽に小突かれる




「千李があんなところで捕まえるからよ!!」




「ご、ごめん、でも逃げ続ける真望だってさ、っ!」




千李が言い返そうとすると、美羽にきっと鋭く睨みつけられ、千李は小さくなるしかできなかった。




「ちびアホなんて・・・・・なんでそんな事言ったのかしら」




影姫が悩んでいると癒澄がぽろぽろと泣き出す




「本当に冗談だったはずよ、人を傷つける人じゃない、そうでしょう?周りがそれを使ってイジメたことが悪いのよ、まもりんは悪くない、悪くないわ!」




こっちを見てこそこそ話していた生徒達はそう言ってキッと睨んでくる癒澄を見て黙り、千李達をチラチラ見る事をやめた。




「でも何があったか聞かなきゃ、みんな勘違いしたままだよ、また変な噂になって尾ひれがつくよ」




千李の言葉に、みな難しい顔になる、人は噂が好きでそれだけじゃなく自分の楽しいように妄想して余計な話を付けて話を広げる、こう言うことを正しい方に持っていくには大々的に正しい話を大勢の人が一気に見る必要がある、などと考えていると声がかかる




「まぁた面白い話してんね、思わず来ちゃったよ」




全員が驚いて顔をあげるとそこには栞とライラーズが居た。




「そういうのは新聞にするに限るね」




栞の言葉にライラックが頷く




「それに聞けるのは2人いるんだろ?」




「煤煙に聞いてもいい話にはならないよ」




千李の言葉にライラックは




「違う違う佳弥子ちゃんだよ!霊体なら話せるじゃん」




ライラックの言葉に美羽が難しい顔して言いう




「でも佳弥子ちゃんは日本の呪縛霊のはずですよ?日本になんて私達だけじゃいけません、時間もかかるし・・・」






美羽の言葉に瑙虹、瑙銀がふっふっふと笑い出す




「美羽ちゃん、ライラックには日本人の血が入っているんだぜ?」




「そして、久遠家は日本で一番陰陽師家として力がある家」




「「いけないところなど無いのだよ!!」」




じゃじゃーんとライラックに手を向ける二人と、どや顔で立つライラック




それを見て影姫が驚く




「まさかライラックさん霧雨使えるんですか!?」




「霧雨って雨の事だろ?」




影姫の言葉にそんなこと言うと千李は美羽にバカバカと叩かれる




「霧雨は霧雨歩行の事!虹の女帝も使っていたでしょ!霧雨の霧に入って区間のはざまに消えて移動する術よ!」




「あぁ、あれか」




千李は思い出してちょっと嫌な顔になったが納得した。


岸雄が仕切りなおすようにライラックに聞く




「ライラ、いつの間に使えるようになったの?」




「いんにゃ?つかえんが ?」




ライラックの言葉にみなガクッとこけそうになる




「当り前だろ、霧雨使うには5年生で精霊と契約成功しなきゃできないんだからまだ精霊の森にも入れていないのに使えるわけねぇだろ」




さも当たり前だとでも言うようにライラックが言う




「じゃ、じゃぁ何でそんな自信満々に日本に行けるって言うのさ」




岸雄の言葉にニッとライラックが笑う




「霧雨なんかできなくても移動方法はいくらでもあんだよ、それも一瞬で移動できる技がな、今夜、洋服着てここに集合だお前ら」




ライラックが出した紙には神華学園と牡丹学園の間にある(えんじゅ)の森の地図があるのだった。

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