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神華牡丹学園物語  作者: 瑞目叶夢
九十九の心人に無し
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声聞ける喜び

刀激戦の訓練は日曜日は行われない。


何度目かの日曜日、今日は凛々亜達に呼ばれて永禮低に行くのだが、なぜか夏鈴もついてきていて、最近、影姫と仲のいい氷綺もついてきている。




永禮低の扉をノックすれば白雅が出てきて苦笑する




「また大勢で来たね、いらっしゃい」




そう言って白雅は家の中に入れくれた。




「わぁ!ここが永禮低!!広い!!なんか落ち着く!!」




目をキラキラと輝かせながら夏鈴はぴょんぴょん跳ねてある男の子と目が合う






「が、牙雨!!!なんでここに居るんだよ!!」




牙雨もとても嫌そうに夏鈴を見たがすぐに、真望の方を見る




「真望先輩もいらしてるんですね」




「やぁ牙雨くん、そういえば鍔先輩に案内してもらうと言っていたね、すっかり忘れていたよ、悪かったかな?」




真望がそう言って夏鈴を見ると、夏鈴はいえ、そんなことはと言いながら目をせわしなく動かしてから牙雨を忌々しそうに睨むが、牙雨は素知らぬ顔で出されているお茶を飲みながら鍔に話を聞いている




「僕が先だと思ったのに!あいつに先を越されるなんて!!」




それで悔しがってるのかとちょっと笑う、金の卵の聖地だとか言っていたが、ライバルの方が一枚上手だったらしい




「今度僕らの部屋に招待してあげるから機嫌直しなよ 」




千李の言葉に夏鈴が目を輝かせる




「本当ですか!?」




千李の腕を掴んで必死に確認する夏鈴




「う、うん、別にいいよ、真望もいいよね」




「かまわないぞ!」




真望の承諾を聞いて夏鈴はさらに目を輝かせて飛び上がる






「やったぁ!!!!」






こんなに喜ばれるとはと、千李も真望も顔を見合わせ笑う


夏鈴の声にみんなこっちを見る、近くで聞いていた白雅がクスクス笑い


鍔がなんだなんだと楽しそうに様子を見ていて、牙雨が迷惑そうに夏鈴を見ている


そして動物部屋から水神がひょこっと顔を出す




「岸雄君、みなさん来てたんですね、こちらにどうぞ」






冷静に言う水神に案内されて全員動物部屋に入る




相変わらず動物たちに適した部屋は、広くて、今は春の風景になっている




「ここではさっきみたいに騒がないでくださいね、動物達が驚くので」




びしっと水神に言われて、夏鈴はハイ・・・としょぼくれる。




「わぁ、可愛い・・・」






たくさんの動物や神華獣やヌイグルミなどの神華体が花畑で遊ぶ姿を見て氷綺は嬉しそうに顔をほころばせながらも部屋に入ろうとはしない




「何してるんですか?」




水神が入ろうとしない氷綺に疑問を投げかける




「あ、わ、私が入ったら迷惑かもしれないから」






そんな氷綺に水神はめんどくさそうに言う




「ここの子たちは人慣れしているのであなたに威嚇とかしません、制御アクセサリーもそんなにつけてるんです、ちょっと感情が揺れるくらいでこの空間を歪ませるほど力は出ないはずです、入りたいなら入ればいいんです」




「え、でも・・・」






「入りたいんじゃないんですか?」




「はいり・・・たい」




「じゃぁ入ってください、あの子たちが出たがるじゃないですか早く」




そう言って水神はためらいもなく氷綺の手を取って少し引っ張る




氷綺はおずおずと部屋に入り、水神に連れられるまま大きな熊のヌイグルミのところに連れて行くと、ヌイグルミが氷綺に手を伸ばす




『こんにちは、ハグしよう』




「へ?」




氷綺が戸惑っていると水神が氷綺の手をひいて熊のヌイグルミに座らせると熊のヌイグルミはギュッと氷綺を包み込む




「わぁ、あったかい、それにふわふわで、ゆらゆらしてなんだか・・・ねむく・・・」






眠くと言いながら氷綺はもうヌイグルミの腕の中で寝落ちている




そしてきりっとした顔で水神が千李達に言う




「凛々亜のあったかおねんねベアです冬の時期に大活躍、16000円です」




「あ、はい」




千李が戸惑いながら返事をする、美羽が頭を傾けて疑問を口にする




「なんで氷綺先輩を寝かせたんですか?」






美羽の質問に水神は氷綺を見ながら言う




「手を握ったらありえないほど冷たかったですし、氷系の華人は冷え性が多いです、それに目の下にクマが見えました。あなた達と仲良くすることで脈羅さんが嫌味を言っていると聞きましたしお疲れだと思いまして」






「「「え!」」」




みんな驚いてすやすや寝ている氷綺を見に行くと確かに薄ーくクマが見える




「純血主義って家族を大事にできないの?」




可哀想な氷綺を見て千李は、(いきどお)






「何よりも血と威厳が大事なんだよ、純血ってね」




後ろから言う白雅の言葉がなんだか寂しくて辛そうに聞こえた。




「さぁ、水神ちゃん、岸雄君と深瑠さんに見せたい物があるんだろ?」




「あぁ、そうでした。氷綺さんは寝かせてあげて、皆さんこちらに来てください」






水神に言われて一行が静かに研究室ブースに行けば、凛々亜と雅が何か研究している、その隣には茶色の妖精が飛んでいる




「凛々亜、雅、岸雄君と深瑠さん来たよ」




水神の言葉に2人は顔を上げて興奮気味に立ち上がる




「やっと来たのですね!」「待っていました!!」






千李達が少し引いてしまうほどの勢い、よく見ると、凛々亜の手には生前の深瑠そっくりの人形がある。りりあの作品かと思ったが魂がこもっているようには見えない




凛々亜の神華は人形などの無機物を作って魂を込めるものだ、そのため凛々亜は特に手先が器用で作り出す神華体はとても人気だ、産咲の神華獣と凛々亜の神華体をそろえて持っている人もいる


おとなしくて、なんでも聞き入れてくれる凛々亜は、産咲と違って依頼されて作るので細かい注文もされて、依頼もキリが無いので2か月に5体までの依頼を受け付けるようにしていて、しかも毎回研究の末できたアーティファクトをつけるので依頼が絶えない、


そんな凛々亜が岸雄のもとに走って行って深瑠の前に人形を出す




「深瑠さん!これに入ってみてください!」




凛々亜は自慢げにそれを掲げていて、水神と雅もワクワクとした表情を隠さず成り行きを見守っている。






それに苦笑して白雅が話しかける






「凛々亜、完成して嬉しいのはわかるけど、まずは説明しようよ」






白雅の言葉に凛々亜も水神も雅もハッとして、いそいそと大きなパソコン画面の前に集まる。


そして、人形の映像と説明のようなものが画面に現れる。


凛々亜は興奮したように話しだした。




「この人形は神華体を作るように作っていますが、魂は入っていません、代わりに、妖精や精霊の入れるコアが入っています」




興奮気味に雅が続ける




「そしてこの人形は土の精霊さんの協力を得て、練った土で作られていて、精霊の力を2倍ほど増加する事ができて、普通の陶器と違い、精霊が入ると人間の体のようになります」




水神が自慢げに岸雄と深瑠に言う




「そしてこの人形には特別な力があります」




「「「特別な力?」」」






千李達が首をかしげると凛々亜達は自信満々に答える






「「「妖精の言葉の言語化です!!」」」




まるでタターンと効果音が入りそうな勢いで凛々亜が人形を掲げて水神と雅が手を向けて紹介している




それを聞いて岸雄が大きく反応して、深瑠がスッと飛んで行き、掲げられ居ている人形に入った。すると、人形の背中から羽が出てきて、生きているように瞼を上げて岸雄を見る




『岸雄君』




それは確かに深瑠の声だった。






「深瑠さんの声だっ」






『やっと言葉が伝わるのね!」




深瑠は岸雄の肩に飛びのり幸せそうに笑いあった。




それを寂しそうに影姫が見ていることに真望が気が付いたのか手を握る


影姫はニコッと笑ってその手を引き抜いたのだった。






そこに真望に飛びつく癒澄




「真望くーん!!また深瑠さんが話せるようになってよかったね!」




いつものように真望に抱き着き主人に飛びつく犬のように喜ぶ癒澄、


それを見て鍔が苦笑いする




「難儀だねぇ」




次の日に登校すれば伝言掲示板の新聞に凛々亜達と岸雄と深瑠の姿が映晶石に写っていて


その下の文字が掲げられている




【生き人形三姉妹の精霊ドール】




【産咲親衛隊の生き人形三姉妹が神華人や神華体、神華獣ではなく精霊の宿ることができる人形を発明!これから精霊との親交ができることが期待される】




新聞を見る6人を遠巻きに見る朱雀寮の生徒や精霊クラブに凛々亜達のファン、深瑠&岸雄ファンなどの熱い視線を感じて居心地の悪さを感じる千李とは違い、幸せ絶頂期の岸雄はにこやかに深瑠と話している、人の視線など今は感じないようだ




「すごいなぁ凛々亜さん達は、昨日も言ったがこんな研究をしていただけてたなんてよかったな、岸雄君!」




ポンと岸雄の深瑠が乗ってない方の肩を叩く真望に花が咲くように幸せな顔で岸雄はうん、と頷くその顔に、千李も嬉しくなったがふと影姫を見ると影姫も安心したように笑っている


深瑠を救えなかった事を岸雄は気にしていてあまり元気がなかった。通信眼鏡は気楽に会話ができるのでよくみんなで通話していたが、岸雄の元気がない事は、考えている事を伝えると言う機能ゆえにありありと感じていた。




それゆえにこんなに幸せそうな顔を見れて安心しているのだろう、よかったなと千李も思うのだった。




そこに慌てるように、広報部の人が来る、一人は新聞をもう一枚張り、もう一人は新聞を配っている




「号外!号外!乱歩家の3男と長女神華覚醒!!2年と小等部に転入!」




みんな一気に新聞を配る生徒の方に集まる




「乱歩家って李薇がかばってた危険神華の男の子の家・・・」




千李がそう言った瞬間に癒澄が叫ぶ




「真望君!?大丈夫!?」




真望を見ると、少し青い顔をしている




「真望!?どうしたのさ!」




千李が聞けば真望はいつものように笑う




「なんでもないさ、俺はそろそろ教室に戻るよ!みんなはゆっくり来てくれ」




そう言って真望は癒澄の手をそっと避けて走って行ってしまった。




「真望どうしたんだろう」




千李は真望の走って行った。廊下を見た後、張り出された新聞の水晶、映晶石(えいしょうせき)に映る鷹のような顔でいやらしく笑うの男の子と心なしか豹炎に似ているように見えるほんわかとした女の子を見るのだった。



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