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神華牡丹学園物語  作者: 瑞目叶夢
1章華人の不安と仇の顔
43/62

黄色に輝く三の枝

コース料理【華葉“カヨウ”料理】(飲み物)

箸洗【朝露“アサツユ”】スープ

前菜【小盆】(水)

スープ【水葉“ミズハ”】

サラダ【菜“サイ”】(お茶)

魚【龍恵“モウエ”】(酒or果実水)

肉【施脊“セセキ”】(酒or果実水)

主食【終華“シュウカ”】(酒or茶)お米やパンなど

デザート【華子“カシ”】(お茶or果実水)


千李はもちろん、その招待を受けた。

曲癒にはもう退院をしても問題は無いと言われたので次の日に行くことにした。

小褄唎は止めようとしたが、狗炎に見守るように言われていたらしく、

小褄唎の力である窓の破片をもらった。

小褄唎の力はどこにでも窓を作って、通じることができる力

効果範囲は、桜州内の行ったことがある場所だがこの破片を投げれば

その場に窓が現れて、ライラーズと教師陣が来れて、

桜州の家にいる狗炎とも繋がることができ、

千頭も李薇も取り押さえられるのではないか、と言う考えだ

その作戦で千李達は朧車の迎えに乗って、千頭の家に向かった。


「あぁ!千李君!無事で良かった!目が覚めて本当に良かった!あの大会は本当に寿命が縮んだ!顔をよく見せてくれ!」


千頭は扉を開けた瞬間飛び出してきて、千李の肩を掴み、体を震わせながら言った。

何と白々しいことか、それとも本当に心配しているのか?


「ご心配おかけしました。大切な試合を台無しにしてしまってごめんなさい」


千李がそう言うと千頭はニコっと笑う


「千李君が謝ることではないよ!あの子は猫炎理事会委員長の差し金だったという話ではないか!あの子はねぇ私の屋敷でも働いていて、理事会委員長が気に入って欲しいと言ってくださったから送り出したと言うのに、あんな風に使われて、私は悔しくて堪らないよ!」


拳を握り、目元を拭う千頭、だがそこに罪悪感や怒りなどが本当に感じられない

演技だと全員が納得した。


「まぁ、そんな事よりも、こんな所に立っていないで、中には入りなさい、食事でもしながら私の話を聞いて欲しい、千李君達にも悪い話ではないからね」


そう言って千頭は中に促す、千李達はそれぞれに挨拶をして中に入る

通された部屋はパーティーの時と同じ扉だが中は違った。

だいぶ狭い、本当に狭いわけでは無いが、あんな大々的なパーティーをできるほどの広さは無い


「どうしたんだい?」


入り口で止まる千李に千頭がニコニコと聞く


「あ、いや、この前と違うなって」


千李の言葉に千頭はあぁ!とニコニコ頷く


「拡張術式を展開させていたからね!大きな家ではどこの客室にもある家具術式なんだよ、普段はこの程度の広さで、パーティーの時は術式を展開させて広げる、小さな島国だから広い土地はなかなか取れないが、華族の特権だね!須舘家では無かったのかい?」


千頭の言葉に千李と美羽は、首を振り、美羽が答える


「須舘家は外部の人を呼ぶパーティーをしたことが無いので・・・・・」


美羽の言葉に千頭は哀れむような目で見る


「そうか!そうだねぇ、須舘家はただでさえ隔離された環境であったのに、10年前の戦争のせいで容易に人を呼べる環境で無くなってしまったからねぇ、それは寂しかっただろう、これからはいつでも家に遊びに来なさい!家で良ければ、いつでもこの部屋で大パーティーを開催しよう!」


晴やかに部屋に入って両手を上に挙げてニッコニコと笑って言う千頭

どうせ、美羽を取り入れたいと言う考えなのだろう


「あ、ありがとうございます」


美羽が苦笑いで答えると、千頭は満足そうに頷く


「ささ、そんな事よりも座りなさい、実は料理はもう準備していてね!

ささ、華葉(カヨウ)料理を用意したよ!ぜひ護衛の二人も一緒に食べなさい、君達の話も聞きたいと思っていたのだよ!先ずは家の料理人自慢の朝露がすぐ来るだろう」


そう言いながら千頭は椅子に座るように促す

千李達はおずおずと、席につくとすぐに先付けの朝露である少し具が入った汁物が来る

生姜の薄切りと豆腐に鰹出汁のスープが聞いている小さな器のスープを飲んでいるとすぐに小盆と言われる朝露よりは少し大きい器に前菜が来る

そうやって王華国特有のお茶と果実水(またはお酒)を楽しむための料理が出てくる

確かに自慢と言うとおり美味しくて、子供でも楽しめる味付にしてくれている

料理を楽しみながら千頭の話を聞くが、

どれほど豹炎が可哀想で猫炎がひどい人間か、

千李も豹炎も救いたいのだと力説している

そしてコース料理のさっぱりした魚料理の後に肉料理が来る

豚の煮物のその料理はとても美味しそうで、みんな口を付けている中、岸雄が固まっている

それに影姫が気が付いた。


「岸雄?」


岸雄は箸を投げ捨て、果実水の入ったコップを千頭に向けて投げつけた。


「岸雄!?」


「どうしたの!?」


「落ち着け岸雄くん!!」


千頭はコップを避けて震えている

今にも千頭に飛びかかって殺すんじゃないかと思うほど暴れる岸雄を高天が後ろから羽交い締めて、甲泉が目の前に立って妨害術をかけて抜け出さないようにする


岸雄は、吠えるように言った!!


「この肉はなんの肉だ!!!!この肉はなんの肉だあああああ!!!!」


挿絵(By みてみん)


暴れる岸雄の言葉に全員が岸雄の皿を見る

確かに岸雄の肉だけ何だか様子が違う、脂身が少ないのような、動物の肉にも見えるがそれにしては少し魚に近いような


「ひ、ぶ、豚のに、肉だよぉ」


千頭が椅子の後ろに隠れながらそう言うとまた岸雄が吠える


「なら!!!!なら何で深瑠さんの声が!!!!聞こえるんだ!!!!!!!!!」


全員がハッとする、つまりその肉は・・・・・


そこに不敵に笑う声が聞こえる


「ふふふふ、これはこれは、そんなに絆が深かったか、愛は時間じゃないとでも言うのかねぇ、ふふ、」


奥からゆらっと黒く長い髪をタユタわせた李薇が現れたのだ


全員がすぐに岸雄の周りに集まって臨戦体制をとる、千李がすぐに小褄唎の術の破片を投げたが、読まれていたようで、術で破壊されてしまった。


「怖い、怖い、落ちつて話そうじゃないか坊や」


そう言いながら李薇は椅子の裏で怯えている千頭の近くに行くと

千頭は喜んで李薇の後ろに付く


「申し訳ございません、肉を食べさせられませんでした李薇様」


千頭がそう言って頭を下げると李薇はにぃと笑って千頭の胸ぐらを掴み千李達の方に投げた。


「ひぃ!!り、李薇様!?」


「失敗したなら後始末をきちんとしなさい、妻を殺されたくなければ、美羽以外始末しなさい、人魚は瀕死だし、今回失敗したなら使えない、そこの八百比丘尼の素材も要らないわ」


その言葉を意味することを理解し、岸雄は高天と、甲泉を避けることも振りほどくこともせずにすり抜けて、胸元からクナイを出して李薇に襲いかかる


李薇は、それを意にも返さず扇子で受けて弾いたと思ったら目にも止まらぬ速さで宙に浮いていた岸雄を蹴り飛ばし壁にぶつける


「幼子ごときが私に傷を付けれるとでも思ったのかい?愚かな事だ、部も弁えず怒りだけで襲いかかるとは、、、失敗作と言われる所以だねぇ、ふふ」


あの細い体のどこにそんな力があるのか、岸雄がぶつかったところは凹んでいる、

蹴り飛ばされ、ズルっと落ちた岸雄は、やっとの思いで立ち上がって李薇を睨む

深瑠を瀕死に追いやり、岸雄を馬鹿にし、美羽以外を殺せと命令する

美羽を残すとはどういうことか、残されればどうなるのか


「李薇!!深瑠さんに何をした!!」


千李の言葉にクククと李薇は笑う


「まだ死んじゃいないよ、脚を切り落として料理してやっただけだ、どうせそこの半端者が口にして呪いの肉になったら美羽に食わせる予定だったからねぇ」


李薇の言葉に美羽は息を飲み口を覆う


「なんで美羽を八百比丘尼にしたがる、」


千李の言葉に楽しそうに李薇は答える


「八百比丘尼の美羽の体を使って獄門島の封印を解くためだよ、

封印を解いて魅美様を現世にお連れすることが愛する方の望みだったのに。

八百比丘尼の呪が解けようとする桜姫の魂がそれを封じた!

だが娘の体を八百比丘尼にして桜姫の魂の入れ物さえ用意してやれば、

元の形に戻ろうとその体に魂が引き込まれ、封は説かれると、件が予言したんだよ」


件!!最初に人魚が誘拐された時に変わりに置かれていた死体!!

あの死体が予言したのか!!


「そんな事させないわ!」


影姫が美羽の前に立ち影を広げ、結界の印を描く事で、千李達は結界に囲まれる瞬間に炎のライオンと水の狼を外側に置く、そしていつの間にか数匹の蜂と下位精霊が現れている


ちっと高天が舌打ちをした。


「この屋敷全体がさぁ、大きな結界になってるなぁ、おかげて精霊を外に出せないんだけどぉ?この前はぁ、無かったよねぇ、殺す準備ばんたんじゃーん」


甲泉がコンコンと携帯水晶の腕輪を叩いてみる


「駄目だな、通信も切られてる」


はぁ、とため息をつきながら甲泉は、腰の刀を手に取る

高天も刀を取り、千李達男子は木刀を持つ、

影姫は非戦闘員の美羽、癒澄を後ろにしてもう一つ結界を張る

一応後ろの出入り口を見るが藤の会のマークが浮かんでいる簡易的な選定門とでも言うところか、


「まったく、無駄な抵抗だね」


カランカランと李薇の袖から操り人形が出てくる、瞬間飛び掛ろうと動いた男性陣の

千李以外の動きが止まる、千李は気が付かず李薇に切りかかる


「生意気だねぇ、無効化か、忌々しい」


李薇は、鉄の扇で受けて、千李を忌々しそうに笑いながら見る


「お前の術は僕には効かない!!」


そう言って千李は、李薇の持つ操り人形に火をつける、李薇は舌打ちをしながら

操り人形を投げ捨てる、

操り人形はボウボウと燃えて、固まっていた男性陣は動き出して、それぞれ李薇に切りかかる

李薇は、それでも、ものともせず、2つの扇刀で応戦しながら楽しそうに笑う

まるで遊ばれているようで、歯が立たない動く余裕があるのに、永禮よりも隙が無く

白雅よりも柔軟で、ライラックよりも手数が多く、全く傷をつけられない


動かぬ戦況に、深瑠や寸魏の事を考えて美羽、影姫、癒澄は目を見合わせ、頷き、

影姫が千李に言う


「千李君!私達は深瑠さんと寸魏さんと馬堅君を探しに行くわ!」


「頼んだ!」


千李の声を聞いて、女の子達が動いたが、刀を持って立ちはだかる男、千頭だ


「行かせるわけにはいかない!」


ぴちゃんぴちゃんと水の塊が千頭の周りに数個浮かび

真上に大きな水のレンズのような形ができる

ふんと影姫は鼻で笑った。


「子供だと舐めてませんか?」


そう言って影姫が影を伸ばし、影が千頭の影を捉えようとした時、

一際大きい水の塊が光って千頭を包み、影を消す、それを見て影姫が感心する


「へぇ、明かりに解呪呪文を織り込む事で影術を入れないようにする、

良くできてますね」


影姫があたりを見回すと、ひときわ明るい電気の近くに水の塊が浮いている

解呪呪文の明かり、水は影を作らないから操れない、


相性が


悪い


戦闘系ではない二人を抱えてどう動こうかと影姫は思案する、影姫の影操作は後方支援だ影を捕まえることができなければどうにもできない

影で結界術式の陣を形成しているから、そのまま力技ですり抜けることもできるだろうが、相手は大人で良家の人間、刀激戦をたしなんでいないわけが無い

そうなると、筋力のない影姫達には分が悪い

そこで、思案している影姫の肩を癒澄が叩く


「えいちゃん!私に任せて!えいちゃんはあの明かりをどうにかする手を考えてて!」


癒澄はそう言うと、ダっと結界から出る


「癒澄!」「癒澄ちゃん!」


影姫と美羽が慌てて叫ぶと、癒澄は、警棒を持って千頭に突っ込んで行く


千頭は、鼻で笑って癒澄を斬りつけるが、その刀は床にめり込んだ


癒澄は千頭の後ろの空中に現れて落ちる力に全体重を掛けて

千頭の肩と腕の間を警棒で殴った。


「ぐああああああああ」


思わぬ攻撃に肩を抑えて千頭は、片膝を付く


癒澄は、それを見逃さないように千頭のうなじを警棒で思いっきり殴る


首に与えられる激痛に怒り、千頭は刀を振り回すが

癒澄はそれをすべて瞬間移動で避ける


「ぐああああ!!!ちょこまかと!!刀激戦の試合にも出てない小娘がぁ!!!!」


「お兄ちゃんの稽古相手してるんだもん!力なんかなくても戦術くらい知ってるもーん♪」


癒澄はイタズラっ子のように笑いながら、軽々と暴れる千頭の手を避け

瞬間移動で近づいては弱いところを殴って、水の技を避ける


千頭は1度冷静になったのか頭上の水塊を大きくしたが光が消えてガションと言う大きな音が響き少し部屋が暗くなった。


千頭がそこを見ると、水のレンズで明かりを集めていた証明が落ちていた。

そして、影姫の声が聞こえる


「残念ね、水は影を作らないけど照明器具は影を作ったみたいね?生き物と違って物を操るのって骨が折れるんだけど、間に合ってよかったわ」


恐れていた影術を封じる手が無くなって、千頭は、慌てて他の照明に水のレンズを作ろうとしたが

体が勝手に動いて地面に倒れ込む


ガタガタと影姫の方を見ると、妖艶に笑う


「ゲームオーバーね」「情けない」


その影姫の声にかぶせるように李薇の声が聞こえる


影姫達が戦闘中の千李達の方を見ると李薇の姿はなく千李達がこっちに走ってきている


「もうお前は用済みだ、」


影姫達が千頭の方を見ると千頭の首を持ち上げて居る李薇の姿

その体のどこにそんな力があるのか、千頭の足は浮いている


「おっ、やめっ、くだざい!がな!必ずおやぐに!」


「なら最後に、役立ってもらおうか」


千頭の言葉を聞いて嫌らしく李薇が笑って、千頭の胸に何かの印を切る


「マソワ」


李薇がそう言って千頭を下ろすと千頭はガタガタと震えて体がどんどん大きくなっていくというか筋肉が膨れ足と手が伸びて、爪が尖り、毛が生え、耳が尖り、口が伸び鼻が潰れ

醜い魔獣となった。


ケタケタと高笑いをして李薇は、霧雨に消えた。


「やばいな、魔獣化かよ」


いつの間にか影姫達の前に来ていた。甲泉が苦笑いする。

高天は、霧雨で癒澄の前に立っている


ぐああああああああ!!!!!!!!


魔獣化が終えて雄叫びをあげる怪物


クンクンと鼻を引くつかせ、癒澄の方を見ると、

怪物は、大きな手を振り上げて癒澄と高天に襲いかかる


癒澄は、高天に抱きついて瞬間移動を使い、千李達と合流する


「あれは無理!あれは無理!あれは無理!!」


癒澄は首をブンブンと振って戦えない事を示す

怪物は、居たはずのところに獲物が居なくなって左右を見回して後ろには気が付いて居ない

恐る恐る美羽が言う


「あの状態って元に戻せるんですか?」


美羽の言葉に甲泉が苦い顔をして、高天が答える


「無理だねぇ〜、半獣化とかぁ同化術とかとぉ違ってぇ、神華で補強してんじゃなくてぇ魂から作り変えられてるからぁ、たとえ人間に戻ってもぉ人間を襲う人間になるだろうねぇ」


高天の答えを聞いて李薇は何て酷い術を使うのかと思った。


周りを見ながら鼻を鳴らしてこちらを向く怪物

千頭の面影などなく、醜く悲惨な姿の怪物がこちらに気が付き

雄叫びを上げて走ってくる


こいつは深瑠先輩に酷いことをした。

もしかしたら寸魏先輩も拷問にかけられていたかもしれない

最後まで自分のことだけだった。

自分の事も殺そうとして、豹炎を貶めようとした。


こいつに


同情の余地などない


千李は悲しい顔をして手を向けると巨大な火の玉が怪物を包んで燃やす


「炎の中で苦しめ」


苦しそうな雄叫びを上げながら苦しむ怪物

そんな時に屋敷が揺れた。


「結界が破壊されたねぇ」


高天が天井を見ながらのんびりと言う


怪物が燃え尽きる頃に広間の扉が開かれる


「ママ!!」


マーウが扉の奥から現れる、その後ろにライラーズや、南千珠と小褄唎が居た。

燃え広がりそうな炎を真望が水の塊で消して、チョウチョの形にして気化させる

獣になったからか、魂まで消えたのか、死者の黒蝶は現れなかった。


マーウは真っ直ぐ影姫に抱きつきに行く、もう見た目は40代の女性なので何だか変な感じだ、だが、腕を見ると年齢よりも年を取ったように老婆の腕のようになっている

影姫が驚いてマーウの手を握る


「マーウ!この手はどうしたの!?」


「あの呪い、強力な神華だったの、無理矢理開けたらこんな事になっちゃった」


マーウはにヘラと笑う


「でもママが無事で良かったぁ、この屋敷、外から火が点けられてて血の気が引いたよ」


マーウの言葉にみんな顔を見合わせる、もし火事なんか起きたらどうなっていたことか、真望がいくら強い神華と言えど部屋から出れないのなら火事で壊れた壁材などが落ちて来て部屋が破壊されていれば美羽以外ひとたまりもなかっただろう


ライラックがその後ろから重ねる


「私等が待機場所で待ってたらマーウが飛び込んできてさ、ママの魂がブレてる!!悪いことが起きてる!!て言ったからさ、慌ててキントウン飛ばしたよ」


瑙虹と瑙銀もうんうんと、頷いている


千珠と小褄唎は、燃えて脆くなった骨が転がる消し炭の山を見て何かを話している

影姫は、マーウの手を頬にあてて、悲しそうに笑いながらマーウの笑っている顔を撫でる


「ありがとう、マーウ」


マーウは嬉しそうにニコぉと笑う


瞬間、岸雄が走り出した。


「岸雄!?」


千李は慌てて追いかける


「おい!勝手な行動をするな!」


千珠もそれにすぐ付いていくが、さすが忍者の家系足が早くて捕まらない


岸雄は真っ直ぐ走り、突き当りで止まってもすぐに道を選ぶ

奥の方の部屋に着いて、扉を開けて、壁を当たる


「岸雄?どうしたのさ!」


岸雄は千李の質問にも答えず、一際大きく壁を殴った。


「くそ!!確かに聞こえてたのに!!!」


ガンガンと壁を叩く岸雄の手を千珠が掴む


「ここで聞こえたのか」


千珠の言葉に岸雄は、コクリと頷いた。


千珠が壁を見ると背中から黒いモヤが出て来て壁に入っていくその霧は左右に動いて、ある一点に止まる


「ここか」


千珠がそう言って、壁を見る、そしてコンコンと、壁を叩いてから数珠で印を切る


「ビバル」


印が切り終わるのと同時に壁が爆発した。

その先には通路があった。


岸雄は迷うことなく、通路に入って行き、

他のメンバーも通路を進む


しばらくすると、広い部屋に出て、奥には牢屋があり、寸魏がボロボロになって倒れていて、薬品などが並ぶ机の隣に首を繋がれた。片足が無い深瑠が倒れていた。


「深瑠さん!!」


岸雄は深瑠に駆け寄り抱き寄せた、千李は寸魏の方に行って牢屋を開けようとして見るが、鍵がかかっていて開かない

ガチガチしている千李を無理矢理どけて千珠が鍵に印を刻むと、カチッと音がして、

千珠が扉を開ける千李は慌てて寸魏のとこに行き口元に耳を近づけると、浅い息が聞こえる


「先生!まだ生きてます!」


「千李くんどいて!!」


癒澄は千李をどけて寸魏に手をかざすと淡い光が寸魏を包み、傷口が塞がっていく

そして寸魏がハァッと大きく息を吸い込んだ


「良かった、怪我は最近見たい、跡も残ってないや、早く病院に連れていけば、体力も戻るはずだよ!」


いつの間にかライラックが化粧鏡を出して、そこから担架が出てくる

瑙虹と瑙銀が寸魏を抱えてその担架に載せて運んで行った。


「深瑠さん!」


岸雄の叫びに全員がそちらを見ると、深瑠が薄く目を開けている


「がん・・・ゆ・・・・くん・・・痛い・・・・」


「深瑠さんまだ生きてる!癒澄ちゃん!!早く!!」


岸雄に言われて癒澄が深瑠の方に行こうとすると、甲泉が叫ぶ


「だめだ!!人魚に神華治療はしちゃいけない!!」


甲泉の言葉にみんな固まる、真望がすかさず聞く


「どういう事ですか?早くしないと死んでしまいますよ!?」


真望の質問には高天が答えた。


「人魚はねぇ、精霊に近いんだよねぇ、」


そう言いながら高天が深瑠に近づく


「神聖な存在だから不老不死の力を得る肉を持ってるその代わりどんな状態になっても死ねないわけだけど、呪いを譲渡するか、人魚が、つけた条件を満たすまでねぇ」


高天がそう言いながら指を鳴らすと水色の成人男性ほどの精霊が2体現れる


「半魚人の呪いはぁ桜姫様が後付した呪いだからさぁ、神華を流し込まれたら呪いが消えちゃうしー、最悪、神華暴走しちゃうからぁ、精霊の森の泉で療養するしか無いんだよねぇ、ミズイ達、この子をよろしくぅ」


高天がそう言うと、

2体の精霊は、深瑠を抱きかかえた。


「深瑠さん・・・・!!」


岸雄が盗られた深瑠の手を握ろうとしたが、その姿は霧雨と風と共に消えた。


「精霊の森はぁ精霊に選ばれた人以外ぃ立入禁止だからぁ君は連れて行けないよぉ」


悲壮な顔の岸雄に、高天は言う

岸雄は、その言葉に唇を噛む

はぁ、と高天は、ため息をついてしゃがみ、岸雄の頭を撫でる


「だぁいじょうぶだよぉ、建国記念の日にはぁ、足もぉボロボロの傷もぉ完全に治ってぇ君と踊れるからさぁ、ゆっくり待ってよぉ、ちょいちょい俺も経過報告してあげるからさぁ」


「はい、」


岸雄は力無くうなずた。


「さぁ!ここでたむろってる場合じゃねぇぞ!先生も突き止めてねぇし、馬堅も見つかってねぇんだ!この屋敷に居るはずだ!探すぞ!」


ライラックの言葉に、全員が頷く


そして、屋敷の大捜索の末、瀕死の千頭の妻を見つけ、病院に送り、

翌日、目が冷めた時に聞いた。数学の先生の家に行くと、先生は、自殺をしていたのだった。


馬竪は、李薇と共にいると見て、引き続き捜索される事となったのだった。



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