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神華牡丹学園物語  作者: 瑞目叶夢
1章華人の不安と仇の顔
18/62

刀激戦団体戦、猿武と虎裁

あの後、影姫は美羽、癒澄を誘って青龍寮に向かった。

だから何かが変わったかと言われると、相変わらず影姫は岸雄を避け

岸雄はそんな影姫を無視している

女の子2人は何かを知って岸雄を微妙な顏で見ているのが唯一変わった事か


「ねぇ影姫はなんで岸雄を無視するのさ、美羽は何か聞いたんだろ?」


千李が少しイライラして美羽に聞くと美羽は微妙な顔をする


「聞いたけどまだ言えないよ、影姫ちゃんが心の準備ができたら岸雄君と話すらしいからまだ待ってあげて」


そう言われても中々理解できる物ではないが、無理に聞くわけにもいかず1週間が過ぎ

日曜日刀激戦の団体戦が行われる


澄み渡る空、今日の日を良く見るかのように輝く太陽学園裏、刀技場会場(とうぎじょうかいじょう)に太鼓の音が響き和楽器の演奏が始まる


『さぁ始まりました!クラブ対抗刀激戦団体戦!司会は私、音波神華の久瑠祢音弧(くるね ねこ)がさせていただきます!解説は毎度おなじみ尾佐那仙吾(おざなせんご)先生です!』


会場中に響く音弧の声観客席は熱気に包まれていて学園生徒以外にも桜州の鈴里町の住民や

妖怪達も多く、立見席を埋め尽くし空にもキントウンに乗ったり自分の力で浮いたりして

試合開始を今か今かと待ち望んでいる


『では、今年最初の試合は猿武対虎裁です!猿武は今年の新入生を2名獲得していて注目を受けています!一方の虎裁も日本人の新入生を出すようです!ライラーズの奇策はどんなものか!今年も楽しみですねぇ!尾佐那先生!』


『あの馬鹿どもは刀激戦を存分に楽しんでいるが、今年の猿武には新一年生で一番腕の立つ部員が二人も入ってる、しかも1人はライラーズの弟だ、ライラーズの奇策を読み素晴らしい動きを期待している』


解説の言葉に青ざめる顔が一名


「岸雄大丈夫かい?」


木刀を腰に下げユニホームの赤い袴姿の猿武生達その中でも今回の刀激戦メンバーの岸雄、千李、凱臥、深瑠、寸魏の5人だ



「ぼ、僕が、ききき、切り込み隊長なんて、う、うぶっ」


緊張で吐きそうな岸雄に寸魏がそっと直刀と脇差の木刀を持たせると

岸雄はすっと背筋を伸ばしてまっすぐ前を見据えた。


「よし、岸雄くんの準備もいいみたいだな」


半ば無理やり準備させ、円陣を組む


「いいか、やつらは強く素早い、そして思いもよらない行動をしてくる、だが惑わされるな!

いつも通り切り込み隊長が一人とって、小役がその後に続き、討ちこぼしを守備役が守れ!だが無理をして怪我をしたりはするな!後は大将の俺に任せろ!今年こそはやつ等に討たれず、フェントンを討つ!この試合勝つぞ!!!」


「「「オッス!」」」


気合いを入れて選手達が会場に入る

選手が出てきてワッと会場が湧く

正面から黄色い袴の虎裁のメンバーも出てくる

ライラーズの3人と真望、そしてもう一人は女の生徒だ

他の男の選手達はベンチに座るが猿武の補欠の選手と違いラッパや太鼓を持っていて

明らかに楽しんでいて緊張感がない


一人の赤い鉢巻をした男の選手が前に出る


「ふれーふれーこ!だ!ち!ふれ!ふれ!こだち!ふれ!ふれ!こだち!

真望は今日もカッコいい!」

「はいはいはい!」


(まな)は今日も美人さん!


「ひゅーひゅーひゅー」


「瑙銀、瑙虹は今日もナイスコンビ!」


「いいぞーいいぞーもっとやれ!」


「ライラは今日もずるがしこい!」


「ずるいぞ!ずるいぞ!ら―いら!」


変な応援歌が大音量で聞こえる


「お前ら後で覚えとけ!」


「「「きゃあああ!!!!!!!!!!」」」


ライラックの大きな声で女のような悲鳴を上げる男子生徒達に会場から笑いが起きる


『ライラーズが入ってからの恒例、虎裁の応援歌でした!選手の気合いは入るだろうがベンチの選手はライラ大将のしごきが試合後に待っているようです!』



「「「いやあああああああああああ」」」


音弧のアナウンスに再び悲鳴が上がる

会場には緊張感がなく観客は楽しそうに笑っていて千李もクスッと笑う


「またあいつら神聖な大会でふざけおって!今日こそは叩き切る!!」


凱臥が怒ったように言う


「落ち着いて凱臥、またあの子達のペースに持っていかれるわよ」


憤怒する凱臥に深瑠が叱咤する


「あぁそうだな、すまん」


凱臥は深呼吸して気持ちを落ち着けた。


「虎裁はいつもふざけてこっちの真面目な人を煽るのよ、凱臥なんて真面目で堅物だから普段からライラーズに振り回されているし良い標的なのよ」


深瑠はやれやれと肩をすくめる

それを寸魏はニヤニヤとみる


「にっしっし、去年もそれでペースを乱されたんだよな、まぁ凱臥の実力じゃ他の虎裁はともかく結局ライラーズには敵わないけどなぁにっしっし」


そんなことを言う寸魏に深瑠はキッと睨む


「そんなこと言わないの!凱臥がだって頑張ってるのよ!あなたも見習いなさいよ!小さい頃から賦髄先輩にも言われてるでしょ!」


不機嫌に寸魏を睨む深瑠に、寸魏はにっしっしと笑う


「そう言うなよ、俺だって結構強くなったろ?」


その会話に千李が驚く、


「寸魏先輩は深瑠先輩と小さいころから知り会いなんですか!?」


「にっしっし、幼馴染だよ、にしっ」


寸魏の言葉にピクリと岸雄が反応したように思うが、そこに大きな音弧の声が響く


『さぁ!幼小部の飛騨氏互恵(ひだし ごけい)先生がドラの前に行きました!これから試合が始まります!では飛騨氏先生!開始の言葉をお願いします!』


アナウンス室の下にある大きなドラの前に髪の長い女の先生が袴姿でタスキを結んで大きな(ばち)を持って立っている、もう片方の手でオレンジの数珠を持った手の中指と人差し指を口元に持って行き口を開く


『正々堂々と面白い試合をしてくれることを期待する!後悔無いよう思いっきり切りあえ!』


そしてドラが叩かれ試合が始まる!




動くのは両チーム同時だった。


『おおっとぉ!?猿武から動いたのは切り込み隊長の劉岸雄選手と小役の清千李選手だがぁ?

虎裁から出たのは切り込み隊長の文月真望選手と大将のフェントン選手だぁ!!!これは意外な奇策ですねぇ!尾佐那先生!』


『ふむ、あれは新入りの文月のカバーと普段から良く知っている岸雄の対策だな、劉家は二刀流に長けている家だが岸雄は特別でな、二刀流になると普段の気弱さが嘘のように別人のようになり、面白い動きをするからな』


『そうなんですね!おおおとぉ!?そんな話をしていると両者刃を交えたぁああああ!劉岸雄選手とフェントン選手!文月真望選手と清千李選手がぶつかったぁ!!激しい攻防戦だが文月真望選手は押されているかぁ!?やはり刀を始めたばかりの彼には伝説のシルバーキングの息子の相手はきついのかぁ!?だが始めたばかりにしては健闘しているぞ!一方の劉岸雄選手とフェントン選手はいい勝負だ!岸雄選手が能力を屈指して上下左右から攻め入るがフェントン選手巧みに躱し、扇のような刀で切り込むぞ!岸雄選手が上に登ればフェントン選手も結界を使って上に行くうぅ!!ここで注意事項、

能力は精神操作、身体操作系の物、魁心玉の無効化などの神華でなければなんでもありです!なので飛んでも構いません!怪我には気をつけてください!怪我しても神華学園付属病院の魁利曲癒(かいりぎょくゆ)先生の天国に行くような治療があります!死ななきゃ直してもらえるのでご安心ください‼治すではございません‼直すです!ファイト!!!!』


それを聞いた2組のメンバーから一斉に声がする


「「「「ご遠慮いたす!!!!!」」」」


その言葉に音弧が笑う


『常連の2組は身に染みて体験してるだけあって言葉の重みが違いますねぇ!!皆さんも怪我にはお気を付けください!!さて清千李選手対文月真望選手は真望選手が押されて来て危機的状況だぁ!!ライラック選手対岸雄選手も攻防戦が続いているぅ、これはまさか虎裁劣勢かぁ!?いかがでしょう尾佐那先生』


『うむ、真望選手は刀を始めたばかりにしてはよくやっている、だがきっと幼いころから訓練している千李選手にはかなわんなぁ』


『やはりそうですか、ではこのまま・・・おお??おおっと真望選手が水を出して千李選手の木刀を防ぎ出したぁ!!!そして木刀に水を纏わせて鞭のように扱っている!!それを千李選手が熱気で蒸発させている!!これは熱くなってまいりました!!華人名物、神華刀激戦だぁぁぁぁぁああああ!!!おおっと真望選手水の龍を出して空に逃げる!それを千李選手の炎の鳥が追いかけぶつかり合う!!水と火の戦い!!!これは面白くなってきたぁああああ!!』


『うむ、確かに刀の技術だけでは真望選手に勝ち目はないが神華を使った戦いなら可能性がある、龍の見た目はライラックのアドバイスだろ盛り上がるからな』


『え?相手を畏怖させるなどの戦術的策略では?』


『それもあるが一番は盛り上がるからだろ、ライラーズだぞ?』


「「「そのとおおおおおおり!!」」」



戦闘中のライラックと待機中だった瑙銀瑙虹が動く


『おおおっと!?劉家の双子が岸雄選手に向かっていってライラック選手が下がったぁ!そしてそのまま、瑙銀瑙虹の双子選手対岸雄選手!兄弟対決になったぁ!!2対1だが岸雄選手顔色1つ変えず木刀をさばいていくうう!!流石ライラックと互角の岸雄選手!兄二人など敵ではないのかぁ!?』


音弧が劉家兄弟の戦いに夢中になっていると尾佐那が口を開く


『ライラーズと弟は普段から家で特訓してると聞くからな、どちらも手は熟知しているだろうが・・・・ほれ、場が変わるぞ』


『おお!!千李選手真望選手これまでにない大きな動き!!龍と鳥がぶつかったぁ!そして大きな爆発だぁあああああ結果は!?魁心玉が割れているのは真望選手だあああああ!!千李選手は傷一つない!!そしてそのまま岸雄選手に加勢しに行った!!千李選手が双子の片割れを相手する!!おおっと先ほどまでの攻防戦が動いた!千李岸雄コンビも連携が上手い!双子を押している!!これは意外な展開ですね!尾佐那先生!』


『ほほぉ、凱臥め、初めから連携の練習しかさせてなかったんじゃないか?毎年双子の連携には手を焼いていたからな、ほれ見ろ、あのしたり顏、いい作戦だが、1年に頼りきりはかっこ悪いぞい、はっはっは!』



「「「「そーだそーだ」」」」


尾佐那先生の発言に同調する虎裁に凱臥は顏を赤くする

だが守り役の深瑠と寸魏になだめられ、冷静になったようだ


『お、今年は主将も冷静なようだこれは万年ドベの猿武に勝利の兆しか!?

とか言ってる間に双子のが魁心玉を割られたぁ!!!続いて千李岸雄コンビ虎裁陣営に突っ込んでいくが!?出ました神宮愛(じんぐう まな)選手の超速による一太刀いいいい!!だが⁇われていない!割れていないぞ神童コンビ!ここからはややこしいので割愛して神童コンビで行きましょう!さぁさぁ愛選手何度も切りつけに行くが二人とも上手くよけているようだぁ!!早すぎて私には何も見えないが割れていないことだけはわかりますよぉ!!尾佐那先生見えますか!?』


『流石超速の姫だ、あの速さは並の人間には対処できんだろう、あの二人が避けたり受けたりしているのは日々の鍛錬の賜物だろう』


素早い動きに避けることでていいっぱいな2人、上に逃げてもライラックのサポートで結界を足掛かりにして上ってくる落ち着いて話すこともできない、とわ言っても今の岸雄はうなずくだけで話しなどしないのだが


「チッ、参ったな捕まえるのも難しい」


動かない戦況、防戦ばかりで気の短い千李はイライラしている次の瞬間、岸雄が千李を切りつける


「な!」


びっくりして木刀を構えるとその間に愛が入りこんでいて後数センチで魁心玉に当たりそうだった。


「きゃ!」


愛は素早くのけ反り後ろに下がった。


「あっぶなぁ、何?もう私の動き見切ったの?さすが虚無の天才ね」


愛が嫌そうな悔しそうな顔で言う


「虚無の天才?」


千李が愛に聞き返す


「忍びを学ぶ人間の間じゃ有名よぉ、普段は頼りない緊張しい怖がりなのに二刀流になるとすべての感情をそぎ落として最強の忍びになる虚無の天才、戦い以外使えないから忍びの一家劉家の失敗作とも言われてるわね、まぁ普段刀を握って無い時に任務対象の懐に潜れない忍びじゃ難しいよねぇ」


笑いながら愛は鎖の付いたクナイを投げて胸の魁心玉を狙ってきた。

それを躱しながら岸雄は愛を切りつけに行く愛は素早く躱そうとするが岸雄はなぜか先回りするように動く


「え!なんで私の動きが分かるのよ!?」


千李は岸雄の動きに合わせて反対の方に行き愛を挟むように動く

するとだんだん後ろに追いやられ、あと少しで自陣営の線に入るところで愛は追いやられていることに気づく


「ちょっとぉまじで?私の動き2人揃って見きっちゃってるわけ?私が防戦一方とか上位選手以外で初めて!!!超面白いじゃん!」


そう言って愛は袴をめくって足についていた重りを外した。


「いいよ!いいよ!やっぱ戦いは全力がいいよね!!」


そう言うと愛は音速で千李に襲いかかる、だが岸雄が千李をライラックの方に突き飛ばし愛に木刀を向ける二人の刀が交差する


そして二つの魁心玉が割れる


『相打ち!岸雄選手!愛選手!相打ちです!!!!!!』


音弧の高らかな声が会場に響き渡る

沢山の熱気のある声、盛り上がりを見せる会場


息つく暇もなく体制を立て直した千李にライラックが切りつける


「まーだ終わってないよぉ期待の新星?相方倒れたからってボケっとしてたらその心臓もらっちゃうよ!」


両手の扇の形の木刀で舞うように攻撃してくるライラック、

その動きは劉線的で美しく芸術的なまでの刀さばき木刀の重さなど無いかのように

千李はそれを必死に受け流す、神経を研ぎ澄まし流れるような刀術を受け流し刀を繰り出す

それをライラックが受け流す、お互い避けることをせず請け合う木刀同士のカツン、カツンと言う音が会場に響く、その音はリズムよく舞うようなその戦いに皆、息を付くのも忘れるほど見惚れる、それは息のあった完璧な舞踏会のダンスを見ているように美しい、基本がしっかりとした二人だからこその戦い、まるで長年の付き合いをしている恋人のようなその戦いが千李の一撃で動く


受け流していた刀をはじき返して押し切るように進んでくる木刀を二つの扇の木刀で受ける

押し合う形になる


「仕掛けてきたねぇ技術じゃ互角でも力技なら勝てるってかぁ???甘いねぇそんなやわな鍛え方してねぇんだよっっと!」


ライラックは千李の刀を扇で開くように弾き飛ばす

そしてそのまま連続で切り付ける


「おらおら!せめてこないと負けるぞぉ期待の新星!」


切りつけながら挑発してくるライラック


「大将だけになってやばいのはアンタでしょう!」


その刀を返しながら千李が答える


「凱臥も深瑠姫も寸魏も私の敵じゃないんだなぁ!残念ながらね!」


「3対1でも勝てるってことっすか、凄い自信ですね!」


「あったり前!金帯優等生4強の私が!簡単に負けたりしないのだよ!」


「じゃぁその4強の名前もらいますね!」


切りつけてきたライラックの手をつかんで引き倒し心臓の魁心玉を貫き、勝負はついた。



わぁぁぁ!!!!!


鮮やかな戦いの幕引き、今まで団体戦1回戦で負け3位決定戦でも負けていた万年4位が7年ぶりの決勝進出となったのだった。


挿絵(By みてみん)

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