変態の扱い方を教えて下さい
変態のナヴァルをあしらいながら、リゼはため息を吐いた。
もうこの際、変態と呼ぼうかなと考えたがそれはそれで喜ぶに決まっている。
どう転んでも泣きを見るのはリゼだけだ。
ナヴァルは司祭なのではなく、あくまで補佐らしい。これが世に言う才色兼備だ。ナヴァルはこのままリゼの家に滞在する気まんまんのようで、帰れよと行ったところ「蹴られた所が!」と
リゼを脅してくるのだ。
リゼは天を仰いだ、勘弁してと。
あの時指輪を拾わなければ良かった。
そしたらこんな事にはならなかったのに。
「百面相してどうした?」
「誰のせいだ、誰の」
「恋人に対して冷たいなー、まあそれも燃えるけど」
意味深な言葉を吐く変態はほっといて
仕事をすることにした。
食卓を離れて部屋の隅にある小さいテーブルに向かった。椅子に座って引き出しから小さな石を取り出す。
リゼの仕事は魔法石を作ることだ。
魔法石とはその名の通り魔法がかけられた石。リゼは宝石に魔法をかけて、
魔導具を作り売っている。
純度がいいのでかなり売れている。
リゼは以外とお金持ちだ。伊達に聖女をやっていた訳ではない。
前世の知識は今では失われたものもあり貴重だ。簡単には広めることはできないが。
石を選んで魔法を書き込んでいると、
いつのまにかナヴァルが隣に座っていた。
「魔法石か?」
「そうよ」
「いいなー」
「なにがよ」
「俺もリゼに包まれたい」
「黙れ変態!」
ドカッ。
思わず拳が出てしまった。いきなり手を握られたので振り払おうとしたら気持ち悪いことをナヴァルは口走った。
考えるより先にパンチをお見舞いした
リゼはハッとした。
また、手が出てしまったと。
「ごめんなぐちゃって・・・」
「いや最高だった」
「は?」
「綺麗なストレートだ、ますます惚れたぞ」
「謝った私がバカだったわ」
殴った瞬間ナヴァルの顔が歪んだから
痛かったのだと思ったのに、逆効果だった。
恋する乙女のようにうっとりしている
ナヴァルにリゼは真顔になる。
上気する頬に潤んだ目、ナヴァルの美しさと合わさってなんかやばいことに
なっている。
ー男なのに私より綺麗とか腹立つ。
イラッとしたリゼは顔を背けた。決めた、変態は無視しよう。
「リゼ、もう一度やってみてくれ」
「・・・」
「リゼ」
無駄に綺麗な顔を近づけてきたナヴァルにフンッと鼻をならす。
だが、あまりに近すぎてキスの寸前みたいになっていることに気づいたリゼは悲鳴を上げた。
「近いわよ!!」
思い切り突き飛ばされたナヴァルは床に転がった。やり過ぎたと手を差し出すリゼの目に写ったのはナヴァルの、
恍惚とした笑顔だ。
口元をひくつかせるリゼを余所にナヴァルは語りだす。
「女に言い寄られたとき俺もやったことがあるが・・・」
「知らんがな」
「なかなかいい」
ー救いようがないです、神様。
リゼは今度こそ頭を抱えた。