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波乱万丈の魔術師  作者: 流星明
第1章 世に再び現れる英雄
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閑話4 フィンの日常 後編

次は、カレル様に会いに行きます。彼が作業している場所に向かったら、学校の校庭を魔法でならしてました。‥‥殲滅の魔術師は、どこを目指してるんでしょうね? いっそ、土木の魔術師に改名した方が良いと思うんですが。


変わった魔法の使い方をしている彼の周りには、興味津々な面持ちで見ている生徒が大勢いますね。音がうるさいのに、好奇心が勝ったのでしょう。


しかし、作業の振動と音がうるさくて、カレル様に声をかけても聞こえない可能性があります。とりあえず、周りにいる生徒達にも聞こえるよう、大きな声で呼ばなくては。


「カレル様、ヴェラ様からのプレゼントですよ。箱の中身は、オレジュの実と銀貨100枚。もらいたて、ほやほやの立派な賄賂ですよ!!」


「アホかああ!! そう言う事は、でかい声で言うもんじゃないだろう!?」


どうやら聞こえたようです。良かった、良かった。おや? 生徒達が何やら話してますな。


「ヴェラ様からカレル様にだって! 本当に賄賂なのかな?」


「ヴェラ様は、そんな事をしない! 大方、メディア様のいたずらだろう」


「もしかしたら、賄賂って言いながらのプレゼントじゃない? セリス様の目を誤魔化すなら、それ位はしないとね」


うん、1人正解がいました。最後の生徒の方は、深読みしすぎです。いや、メディア様がそこまで考えた可能性も無きにしもあらず。真相は不明ですが、後で聞いてみるとしましょう。


「フィン、悪ふざけも大概にしろ。俺が悪徳領主だって噂が経ったらどうしてくれる?」


「心配無用ですな。カレル様の献身的な働きぶりは、ヴェネルセの人々が全て見届けております。人柄も同時に見ているはず。とてもとても、賄賂をもらうような領主とは思いますまい」


「止めろ、恥ずかしい。俺は当たり前の事をしているだけだ。で? 俺をからかいに来ただけじゃないんだろ? 用事は何だよ」


「ここでは駄目ですね。校庭の真ん中に行きましょう。あまり聞かれたくない話ですので」


その当たり前が出来ない領主が、この世にごまんといるんですがね。まずは用件をすましておきましょう。カレル様に、とっては辛い話ですが。


「セリス様の件です。名声や聖騎士の実力があるのは認めますが、商会の会頭には向いておりません。適性が聖騎士Sに剣術Sなのは良いとしても、商人Dに人物鑑定Dなんですから。私の鑑定魔法の精度はご存知でしょう?」


「‥‥マジか。師匠の適性は、本当に武に片寄ってるな。だが、フィン。師匠の力があればこそ、黙らせられる連中がいるんだ。教会や大商人に各国の王とかな。それに、師匠はヴァイツァー商会に執着している。お前が知らないはずはないよな?」


もちろん、知っていますとも。かつて、私はセリス様とその両親を商会から追放しました。もっとも、それを間違いとは思っていませんがね。下の者を人間と思わず、酷使したあげくに冷酷に捨てる。そんな奴の下で働きたいとは、思いませんからな。


「カレル様もご存知のはずですよ? 我々が立ち上がった理由を。そうしなければ、貴方とレーナがいた孤児院も無くなっていたはずです」


「確かに、お前達がいなければ孤児院は取り壊されていただろう。だが、師匠は違う。俺達の面倒を見てくれていたし、色々と孤児院の仕事を手伝ってくれた。だから‥‥」


ふむ、それは否定出来ませんね。セリスお嬢様は、両親の反対を押し切ってまで孤児院通いをされていましたから。ですが、それはカレル様の思っている理由では無いのですよ。とある資格をとる為ですからね。


「お甘いですなあ、カレル様。セリスお嬢様は、貴方達を助けようと思った訳ではありませぬ。聖騎士候補となるべく、善行を積みに行っていたのです。それが証拠に、カレル様とレーナ以外の孤児院仲間に会っていないではありませんか」


今、商会やヴェネルセで働いているのは、カレル様とレーナだけではありません。かつての孤児院仲間をカレル様が集めて、仕事を持たせています。もし、少しでも心配するのであれば、かつて世話をしていた子供達に会いたいと思うはずなんですが。


「フィン様、カレル。こんな所で、そんな話をしてたのか? 私は、セリスお嬢様の考えに気づいていたけどね。使える者は使って、いらなくなったら捨てる。あの両親に似た悪い考えを持ってるって」


「‥‥いたのか、レーナ。だが、フィン。俺とレーナは善行を積んでいない。むしろ悪行の方が多いのに聖騎士になっているが?」


「簡単ですな。戦乱の世になったからです。善良な弱者と悪辣な強者、どちらが強いと思います? 魔族にぶつけるなら断然後者ですよ」


カレル様、とうとう何も言えなくなりましたね。別に、セリスお嬢様の行為自体が悪い訳ではありません。世に『やらない善より、やる偽善』という言葉がありますし。


私が嫌だと思うのは、かつて施した事を忘れず、延々とたかり続ける根性です。カレル様は、言動や態度と違って人が良すぎますな。


「カレル様、お忘れなきよう。ヴァイツァー商会は確かに貴方が再興し、ヴェネルセという根拠地をも作り得ました。ですが、セリスお嬢様は何1つせず、会頭の座におられる。これを人々がどう見ますかな? 今は構いませんが、何年か経ったら会頭交代を検討して下さい。私の話はそれだけです」


私はカレル様と話を終え、屋敷へと戻りました。その途中で遠目に見た時、レーナが彼と色々と話をしているのが見えていましたよ。だからでしょうか、その夜に私の部屋を訪れる者がいました。


「フィン様、もう少し優しく言ってくれよ。カレルの奴、へこんでたぞ。まあ、貴方からしたらセリスお嬢様を更迭したいんだろうけどな。獣人の間で、セリスお嬢様の会頭就任に不満と怒りの声が上がっている。イローナを中心とした派閥が、下手したら商会を離脱しかねないもんね」


彼女の情報は正しい。もし、会頭にカレル様が就任していれば、獣人達は何も言わなかったでしょう。間違いなく商会の功労者ですからね。


ですが、セリスお嬢様が就任した事は彼らの怒りを招きました。商会の為に何もしていない者が、会頭になったんですから当然です。ヴァイツァー商会の構成員のうち、6割が獣人達です。これは商会の存続に関わる大問題と言えましょう。


「もし、イローナ達が離脱すれば我々の商会は終わりです。ヴェネルセ単体では立て直せないでしょう。もっとも、その件は解決しましたよ。リーナ、私を恨むなら恨んで下さい。貴女にとっては面白からざる話ですからね」


しかし、彼女は動じませんでした。不敵な笑みを浮かべて、私を見ているだけ。すぐに気付きましたよ。リーナは既に知っていると。さすが、あのメディア様の扱きについていく女性です。アサシンランクが、SSになってますし。貴女は人間をやめる気ですか?


「フィン様、私を甘く見るなよ。大体の情報は掴んでるんだ。さぞ、セリスお嬢様が怒り狂うだろうね。それと、カレルには全部話してある。そこまでの事態に、なっているとは思ってなかったらしい。昔から、物事に集中しだすと周りが見えなくなるのは悪い癖だね」


まあ、そこがカレル様の良い所なんですがね。職人気質と言った所でしょう。さて、そろそろ彼女は準備を整えたでしょうか? 商会を磐石にする一手、上手くいけばセリスお嬢様を牽制出来ます。成功を願ってますよ、イローナ。

次回で閑話は、ひとまず終わります。イローナとファーブル王夫妻の話です。

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