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波乱万丈の魔術師  作者: 流星明
第1章 世に再び現れる英雄
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閑話2 メディアとレーナの捕物帖

「特別監査官のメディアである。調査の結果、貴殿方の罪状は明白だ。神妙に縛につけい!」


「‥‥その口調は何ですか? あんた達、逃げたら全員あの世行きだよ。無駄な抵抗は止めた方が良いね」


「ひいっ、お許しを!」


私はレーナ=マルロン。世間じゃ聖騎士って言われてるらしいけど、関係無いね。私はアサシンとして、カレルの後ろを守るだけさ。


今、私達はダークエルフ領内の村を回り、不正や横領を仕出かした奴等を取っ捕まえている所だ。メディアと言う化物師匠と共に。初めて会った時から、私には分かってしまった。


『戦ったら死ぬのは、私だと』


そう思って以来、私は彼女に教えを乞うて技術を習得している。今回の調査もそれを兼ねてのものだ。しかし、師匠の言葉使いは独特だ。まるで、劇を見ているかのように思わせるんだよね。


「はあ、村長連中ときたら溜め込んでますね。家の床下やわらの中、石壁の隙間まで金貨や財物の隠し場所にするんですから。いかに上層部が腐敗していたか分かりますね」


「これ、どうしますか? 財産はダークエルフ領の財源に充てるとして、この犯罪者達は」


私達が調査したダークエルフ領にある村は、全部で70近くあった。その内、不正や横領をしていた村長やその関係者は50人にのぼる。うん、腐ってるね。昔の私だったら全員即座に殺してた。だけど、今はしないといけない事がある。


「財産に関しては、貴女の言う通りにします。ヴェラは借金の検討をしているようですが、1年か2年は税収ゼロでも持ちこたえるでしょう。この犯罪者達には‥‥。そうですね、男性と年配の女性は鉱山奴隷に、女性は春を売ってもらいましょう。今まで、散々良い思いをしたのです。ここらで地獄を味わうのも一興ですよ」


師匠の情け容赦ない処罰に、権力者だったダークエルフ達は青ざめる。たちまち泣き叫ぶ声や怒号、果ては言い訳が始まる。正直、うんざりするね。


自分達の犯した罪を軽く考えすぎだ。下手をしたら、魔王から自治権剥奪される所だったのに。まあ、ヴェラ様とカレルが正常化するって約束したから助かったんだけど。


「い、嫌だああ。頼む、どうかご慈悲を!」


「私達知らなかったの。お父さんが不正をしていたなんて!」


「わ、我々は民を率いてきた責務を負っている。故に少しは利を取っても‥‥」


「黙りなさい!! 危うく自治権を剥奪される所だったんですよ。そしたら、我々は他の種族の支配下に入るでしょう。男は奴隷として働かされ、女は娼婦に成り下がる。ダークエルフ全体が苦境に陥る所だったんです。何だったら、この場で首と胴体が泣き別れでもいいんですよ?」


「ふん、やれるものならやってみろ。我が家は代々ダ‥‥」


あっ、師匠がキレた。見事に首が飛んだね。首の切断面が綺麗で惚れ惚れする腕前だ。うん、皆黙った。師匠が本気で殺る気だって分かったみたいだから。


「さて、立場は理解出来たかい? 生きて地獄を見るか、今死ぬか。選択肢は2つしかないよ。好きな方を選びな!」


結論から言えば、皆生きる事を選んだ。今からの人生、いやエルフ生か? 大変だろうけど同情は出来ない。だって、出てきた金貨や財物だけで、金貨3000枚位の価値があるからね? どんだけ溜め込んでるんだって、私も思ったよ。


師匠がヴェネルセとミスリル鉱山に彼らを送り届けた後、私にお礼を言ってきた。すごく疲れた表情を浮かべながら。


「レーナ、お疲れ様でした。同族の不始末の片付けを手伝ってくれて。財政赤字も解決出来ましたし、ようやく肩の荷がおりましたよ」


「2週間近くかかりましたからね。師匠、気にしないで下さい。カレルの言いつけですもん、しっかり仕事をしますよ。帰ったら、夜に可愛がってもらう約束ですから」


「あらあら、それはごちそうさまです。でも、うかうかしているとその座を奪われますよ? 私は姫様とヴェラをカレル様に近付ける予定ですから」


私の恋敵は目下4人。商会会頭のセリスお嬢様、領主代行のライラ様、ダークエルフ領主にして7大魔将の1人のヴェラ様。そして、私の親友にしてヴァイツァー商会の実質的な支配者イローナ。うん、全員怪物過ぎるね。しかも、師匠はライラ様とヴェラ様を推してる。油断なんて出来るものじゃない。


「分かってますよ。私のアドバンテージは、関係を持ってる事と孤児院時代からの幼なじみだって事ぐらいですから。それに関係を持てたのは、イローナとヴェラ様の配慮のおかげですし」


「ふーーん。セリス様より貴女の方が強敵ですね。自分の立ち位置を見失わず、周りがしっかり見えてますもの。ヴェラから話は聞きましたよ。カレル様の様子を見かねて、レーナが体を許したと。でも、貴女はそれで良かったの? セリス様の代わりに、抱かれていたものでしょうに」


「そ、それは‥‥」


師匠の言葉に胸が痛む。確かに、カレルにとって私はセリスお嬢様の代用品に過ぎなかった。正直に言えば、かなり嫌だ。でも、今はちゃんと私の事を見てくれている。あの人の次にだけれど、愛してくれているはず。


そういつも考えるけど、セリスお嬢様に対する憎しみが、私の中から沸き上がるのが分かる。今もだ。それを必死に抑えようとした時、師匠が、私を優しく抱き寄せてくる。その抱擁は不思議と暖かかった。


「貴女はもっと自分を大切になさい。セリス様の代わりではなく、レーナ=マルロンという女性を見てもらうよう努力すべきですよ。私も色々と手伝いますから」


「ありがとうございます、師匠。私、頑張りますね」


こうして私は師匠の協力を得る事になった。それが、後にあんな事を引き起こす切っ掛けになるとは思わなかったけどね。でも後悔はしていない。それが私の運命だったんだと思うから。

次回、フィンの話です。商会の内部事情と彼の能力について。

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