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知識の宝庫〜異世界で上を目指す方法〜  作者: あやた
第2章 学園〜小等部〜
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第五十話 脱出

自分の頭上を見上げると、その光の届かない暗闇、圧倒的な水量…不安に押しつぶされそうになる。


(…アヤトくんだけでもなんとかならないかな)


何も聞こえない、何も見えない世界。


今この世界には、ルナとアヤトしか存在しない。


不安と少しの暖かい感情。


ルナは少し周りの同年代の子供達と比べ、精神的に大人びていた。


その原因は妹のリリーだろうか。


ルナとは正反対の子供っぽい性格のリリー。


双子として生まれた為に誕生した瞬間などはほんの数分程度しか違わない。


しかし、姉という立場から妹を危険な目には合わせられない。


目のはなせないリリーという妹の為、自由奔放にはなれなかったのだ。


そのせいで大人びてしまったルナは、同じクラスメイトのアヤトには近しいものを感じていた。


アヤトは前世を合わせると20歳を超えている人生。


普通に考えれば精神的には多少大人となってもおかしくはない。


しかし、前世の記憶のある転生者だとは誰一人知らない。


アヤトの自分と近しい性格や考え方に惹かれるところも多かった。


さらには、5階層の階層主からの不意打ち…これからパーティーメンバー全員を救う姿は頼もしかった。


その姿を一番近くで見ていたサーラはアヤトに今までに無い感情を抱いたのではないだろうか。


(そういえば…サーラちゃんとそのことについて話そうって言ったまんまだったな)


サーラのアヤトを見る目が変わったことに気づいてしまったルナは少し揶揄ってみようと考えて誘っただけだった。


しかし、命の危険が大きいと分かりきっている中、私を『命』懸けで助けようとしてくれている存在に心を動かされない訳は無い。


(揶揄うつもりだったけど…恋のライバルになりそうね)


暗闇の湖の底で生きる目標を見つけ出す。


その時だったーーー湖の底の泥が巻き上がり肌に触れるのを感じ取った。


(リリー達…ではなさそうね)


一瞬は助けが来たのかと思ってしまった。


しかし泥を舞い上げるその存在は…人の影よりも大きな存在であった。


その存在からは強い力を感じる。


(まずい…階層主?)


その力の巨大さに、自分たちが階層主のフロアに繋がる扉から侵入してきたことを思い出す。


(この状況じゃ何も出来ない…)


必死に気配を殺すことに集中する。


その大きな力の存在が一際大きく力を込める。


たちまち湖の底に積もっていた泥が全て巻き上げられた。


その一瞬…大きな石柱ですらゆっくりと動いたほどだ。


(!?…今ならアヤトくんの足が抜けるかもしれない)


大きな水流が巻き起こる中、必死にアヤトを抱きしめて手探りで足を引き抜く。


(…ぬ、抜けた!)


その瞬間であった。


大きな水流に身体が持っていかれてしまう。


ぐるぐると天地が何度もひっくり返る、アヤトとルナ。


足掻く気力の無い2人は、大きく流されていると何かに腕を掴まれる。


その掴まれた腕を、ゆっくりと目を開いて確認する。


(…サーラさん)


そこには必死に息を止めてここまで潜ってきてくれたのであろう、サーラの姿があった。


少しだけ明るい水中には、パーティーメンバーの顔が映る。


大きく流された2人は、運良く水深10m付近まで上がって来れたのだ。


パーティーメンバーに手を引かれて浮上するルナはアヤトの身体を決して離そうとはしない。


(…よかった)


消え行く意識の中、ここでようやくお互いの唇が離れた。


何度も離れそうになった唇だったが、ここまでなんとかつなぎ止められた。


意識を失いかけたその時…


(…なんとか生きて返って来れた)


水面に顔を出す『知識の宝庫』のメンバー。


もう何もする力も残っていないルナはサーラに身を任せる。


消え失せそうな意識の中、最後の力を振り絞りテレパシーでリリーとの意識を繋ぐ。


(リリー…)


(お姉ちゃん!大丈夫?無理しないでよ!)


もはや目すら開けていない姉を心配するリリー。


(気をつけて…底に何か居る…強い何かが…)


とだえとだえの意識の中、湖の底に居た何かを警戒するように促す。


湖の中から救出された2人が陸地に上げられる。


もうルナの意識も既に無くなっている。


心配する2人の心臓がかろうじて動いていることに安堵するメンバー。


なんとかポーションを口移しで飲ませ回復を試みる。


そんな中、1人湖を警戒するリリー。


「みんな!警戒して、何か来るよ!」


その時だった、またあの時の地鳴りが響く。



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