第三十五話 ミーティング
次の日、エマからダンジョン探索の許可証を受け取った。
「これで最初の問題はクリアだな」
「ああ…次はどのダンジョンに挑戦するかを決めないとな」
学園内には複数のダンジョンが存在する。
ダンジョンによって出現モンスターや難易度も違えば、階層数も違う。
自分たちに合ったダンジョンを選択するのも重要となる。
「それじゃあ、初ミーティングでも開こうか?」
「そうだな。じゃあメンバーは俺が集めておこう」
「じゃあ、また放課後で」
そういって、地獄のリングに上がっていくジェルマンの背中を見つめるアヤト。
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「第1回『知識の宝庫』ミーティングを始めようと思う」
この場を仕切るのはジェルマンである。
なぜリーダーのアヤトが仕切らないかというと、単純に恥ずかしいからだ。
こんな人前で話すのもままならないアヤトには、仕切ることなど到底無理だ。
入学式では、なぜ堂々と挨拶できたのか?
加護の力を使い、原稿をひたすら読むということで乗り切れたのだ。
「じゃ、まずは…無事に探索の許可は下りた」
「やった!いつ行くの?明日?明後日?」
「そんな直ぐには行かないよ」
机に身を乗り出すリリーを制するアヤト。
「そうだ、まずはどのダンジョンに潜るか決めようと思う」
ジェルマンが話を進行させる。
「なるほど…既に候補は絞っているのか?」
「ああ、初心者向けの低層のダンジョンをいくつか候補にしている」
ハナビの質問に、既に候補をピックアップしているとのことだ。
(やっぱりジェルマンがリーダーやった方がいいんじゃないかな?)
「まずは1番手頃なものだと、最下層が3階のダンジョン」
「やだ、つまらない!」
ジェルマンの候補を即座に潰してきたサーラであった。
「…サーラつまらないってなんだよ?」
「だって3階層じゃ階層主が居ないじゃない!」
ダンジョンでは5階層ごとに階層主が存在する。
階層主は1度討伐された後に、一定期間経過すると再出現する。
階層主という存在は、他のモンスターと比べ強さは格段に上がり、イレギュラー性も発現する。
強さが上がり、イレギュラーということは、その分危険性が倍増するということだ。
「…ってことは5階層以上が良いってことか?」
「10階層でもいいんじゃない?」
「それは危険すぎるから却下だ」
「い・や・だ」
そこから全く折れないサーラにリリーも加勢してきて収集がつかなくなってきた。
「じゃあこれならどうだ?」
「…最下層が23階のこのダンジョンは、上層階はそこまで強いモンスターは出てこない」
「それに今回は週末2日間という期限付きだから、そこまで長くは潜れない」
少しばかりサーラが大人しくなる。
(よし、このまま畳み掛けるぞ…がんばれジェルマン!)
意気込みだけで実際に話し合うのはジェルマンに丸投げだ。
「期間が決まっているから、行けるところまでってことでどうだ?」
「…わかった」
「ふー…潜るダンジョンを決めるだけでも一苦労だな」
「みんなもこのダンジョンでいいか?」
今回あまり発言をしなかった3人にも同意を求める。
「私たちは構いませんよ」
3人を代表してルナが答えてくれる。
「よし、じゃあ次はいつ行くかだが『今週末!』」
ジェルマンが話し終わる瞬間にサーラとリリーが答えた。
アヤトとジェルマンは目を見合わせて「抵抗しても意見は変わらない」とお互いに意思を通わせる。
「…じゃあ今週末、4日後ってことで」
「だいたいの必要物資は用意して、マジックバックに入れてある」
この世界ではマジックバックは貴重品だ。
ダンジョンのレアドロップ品でしか見つかっていない。
それをなぜアヤト達が持っているかというと…
「これはユリカ姉さんが貸してくれたんだ」
そう言って黒くて小さな何の変哲も無いバックを取り出した。
「なにか持っていくもので邪魔になりそうなものがあったら、前日までに僕に預けてくれ」
こうして第1回『知識の宝庫』のミーティングが終了した。
(最初っからこんなんで大丈夫なのかな…)
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