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さようなら  作者: けふまろ
本編
12/20

12 冬休みが近付いて

 バッグは結構安いものにした。見た目はなかなか容量がありそうだが、入れられるのは3㌔まで。生まれたての赤ちゃんがすっぽり埋められる。いやそんなゲスイことしないけど。

「じゃあ、次は早速、事件資料を調べよう」

 森口さんはバッグの中からファイルを取り出す。この事件の資料ファイルは、そろそろ延長しないといけない。

「いや待って!」

 翔のお母さんだ。

「どうしたんですか? 翔子さん」

 森口さんはファイルを見たまま翔子さんに尋ねた。


「私、翔に会いたいの」


 翔子さんは、大声でそう言った。


「え……?」


 森口さん、悠美香、私は、翔子さんを見た。


「私、翔が生まれたとき、ちょうど勤めていた会社のピンチだったの。他の会社と交友関係が上手く行かなくて、私は妊娠中でも、動き回って、走り回って。

 お腹の中の子供は、どんどん弱っていってる……って思っていたの。

 涙が出そうなほど大変だったときに、直香は、「お母さん頑張って!」って、仕事の現状も、お腹の中の子供のことも分からないはずなのに、そんな言葉を言ってくれて、私はとても嬉しかったの。

 そして、会社のピンチも何とか免れて、取引先が増えた頃に、翔が生まれたの。

 でも翔は、ちょっと体が弱くって、持病を持っていて、大変だったの。心臓が少しずれていて、お医者さん呼んで、大変な時期だったわ。

 それでも、私は嬉しかったの。翔が幸せなときに生まれて、たとえ持病を持っていたとしても、良かったと思ってるの。翔を愛していたのに。なのに、いきなり誘拐されて……。身代金を持ってこなければ殺すって。しかも、麗香ちゃんにも迷惑をかけているんでしょう?

 本当に可愛い息子なのに、誘拐されて、本当に最悪以外の言葉ないわよ。悲しいよりも、嫌だって気持ちよりも、自分の子供が誘拐されて、最悪って気持ちの方が強かった。私は今すぐにだって翔に会いたいわ。直香と翔は私の希望の星。殺されたりしたら……」


 最後の方は、翔子さんは涙目になっていて、殆ど聞こえなかった。

「……大丈夫ですよ。翔子さん」

「え?」

 森口さんの言葉に、翔子さんは驚きを隠せない様子だった。


「僕達が絶対、翔君を見付け出します!

 ……だから、また息子さんに会える日まで、希望は捨てないでください!」


 森口さんは、自信満々にそう答えた。


「ありがとうね……」


 翔子さんは涙を流した。


 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 やがて私達は、バスに揺られ、数々の港町に行った。

 3年前の誘拐殺人事件のことを詳しく調べ、摸倣犯がしそうなことを図書館の中で会議したときにピックアップし、それを翔の家族に伝え、港町や人気のない路地裏などを散策していく。


 現金三億円を渡すのは12月25日。クリスマスまで何も出来ないのは、可哀想すぎる。私の良心が許さない。神様が許しても、私は許さん。というか、神様も許さん。


 そんなこんなで、私は悠美香、森口さんと共に捜査を進めてきた。

 終業式の12月25日までに、翔を見付けないと!



 私達が捜査を着々と進めていたら。

 12月25日……終業式の日は迫っていた。

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