それからの日々
やはり、あの後直ぐに殿下から焼き菓子の要求があった。それから季節が巡りカリンは一つ歳を重ね離れではささやかながら心を込めて祝った。当然僕も16になり国家魔法魔術師試験に向けて研究棟に篭りながら、気分転換にカリンに薬草学を教える。
アナスタシアにはやたらと縁談の話が増えたとウィレムに聞く。
「だけど、どれも釣書さえ見ずに突っ返すんだぜ。誰か想い人がいるならそう言って欲しいと母上も零してる。」
ふーん、あの人に想い人・・・。誰だ?
「身分が釣り合わないんじゃないのかぁ
?」
時々研究棟に来る友人に意見を言うと、公爵夫妻は相手の身分職業は気にしないから嫁き遅れだけは避けたいと言ってるらしい。弟としては最近気になる令嬢がいるらしく、姉より先に自分が纏まるわけにはと気を揉んでいるわけだ。そんな日常を過ごしながらカリンの背丈も伸びていき薬草学はとっくに終えてしまい、次は無難に癒術学を教えている。
そうして気がつくと卒業間近。
国家魔法魔術師試験には5級から特別国家魔法魔術師A級試験まであるが何度も受けるのが面倒な僕はまず国家魔法魔術師1級試験を受ける。この頃は自分の力加減も制御できる様になりこれに受かれば卒業し、その後は・・・どうするかな。魔法省からは既に声が掛かっているが、なにせ養父母がいるからやりにくいと思い悩むが、ゆっくり考えればいいかとも思う。
窓の外には雪が舞っている、名付けの儀をした日を思い出す。
カリンは次は10歳になる。あれから5年経ったのか、早いな。
舞い落ちる雪の華を眺めながらぼんやりしていると、カリンがお茶を飲みましょうと声を掛けてきた。
「すぐ行くから、用意しといて。」
春にはフェンリルが結婚を控えている。
静かに降りしきる雪が積もり始めた、まるで僕らの年月の様に。