14異世界転生したけど記憶がないので、告白を断ろうと思います!!
演習が終わった後の放課後。
ルノはアリスに「図書室で予習をしていく」と告げ、重い足取りで校舎の裏庭へと避難していた。青々とした芝生に腰を下ろし、深くため息をつく。
(もうダメ……胃に孔が開いちゃう……。絶対消去魔法だなんて、そんな物騒なもの使えるわけないじゃない……っ!)
ポケットの中でドライフラワーをなでつけながら、ルノは今後の学園生活に絶望していた。このままでは「破壊神」か何かの如く崇められ、いずれ本当に強力な魔物と戦わされる羽目になってしまう。
「……あの、シュバルツ様」
不意に声をかけられ、ルノは跳ね起きるように振り返った。
そこに立っていたのは、さきほどの演習で同じグループにいた上級生の男子生徒——名門・グレイル伯爵家の嫡男であるエリオットだった。
「ひゃいっ!? あ、えっと、グレイル先輩……?」
「急に声をかけて申し訳ありません。ですが……今の演習の光景を見て、どうしても一刻も早く、私のこの想いをお伝えしたく思いまして」
エリオットはすっと洗練された動作で膝をつき、胸に手を当てた。その情熱的な瞳に射抜かれ、ルノの嫌な予感が最高潮に達する。
「貴女の放ったあの圧倒的な美と絶望の波動……! あの瞬間、私は理解したのです。私のような凡才が貴女の前に立つなどおこがましい。ならば、生涯をかけて貴女の僕となり、その至高の輝きを一番近くで支える伴侶となりたいと!」
「え……ええっ!?」
「シュバルツ様! 私と結婚してください! 我がグレイル家のすべてを貴女に捧げます!」
夕日を浴びながら真剣な面持ちで手を取ろうとしてくるエリオット。
(求婚ーーーーー!? なんで!? どうしてそうなるの!? 「足留めして」って祈ったらゴーレムを吹き飛ばして、今度は伯爵家の令息に求婚されてるの!?)
あまりの展開の速さに、ルノの頭は完全にキャパシティを超えていた。
「あ、あの! 私はまだ一年生ですし、その、結婚とかそういうのはちょっと……っ!」
「なるほど……! 軽々しく愛を口にする私を試しておられるのですね。分かります、貴女ほどの存在ならば当然の御身知らみ……! わかりました、私はまず貴女に相応しい男になるべく、今日から血の滲むような修練を重ねます!」
「違います! 試してないです! 本当に言ってる意味がわかりません!!」
「では、また明日お声がけいたします、私の愛しき絶対無の姫君!」
爽やかな笑顔を残し、風のように走り去っていくエリオット。
残されたルノは、その場にぽつんと立ち尽くした。
「絶対無の姫君ってなぁに……?」
遠くから「ルノー! 一緒に帰りましょう!」と走ってくるアリスの姿が見え、ルノはついにその場に泣き崩れた。ポンコツ令嬢の平和な学園生活は、まだ始まったばかりだというのに、完全に遠のいてしまっていたのだった。




