巨砲
あらすじ
迷いは、ない。
〜7日目〜
いよいよやってきたタイムリミット。
体調も悪くはないし、決心もついた。
今日、決着をつける。
「あのクワガタとかあんたに懐いてたみたいだけどいいの?」
「あの子たちはあの木でしか生きられないんだ。人間のエゴかもしれないけど一緒の方がいいのよ」
「そっか」
ならしょうがない、可哀想だがやるしかない。
おれはあの木へと足を踏み出す。
「行ってくるよ」
おれは右手を木へと向ける。イメージするのは今までの銃などのスケールが小さいものでは無い。
またぶっ倒れないように、すぅ、と息を整え身体中の魔力のパイプを丁寧に丁寧に右手に繋いでいく。
…多少クラクラはするが、また身体中を駆け巡るような不快感はない。
今なら、行ける。
「___魔術、起動!」
今のおれは、唯の大砲だ。
そういえば、あの人と出会ったのはこのくらいの時期だったな、と回顧する。
まだこの木が今ほどは大きくなかった時だった。
雨宿りしてた時、あの人は虫と格闘していた。
結構危ないところだったみたいで、虫が私に懐いてなきゃやばかった。
感謝されたなぁ。
プロポーズや、式もここだった。
あんまり賛成してなかった両親も泣いて喜んでいたっけ。
娘もここが好きだった。
昔、迷子になった時にまさかと思って木の下に行ってみたら泣きながら待っていたこともあった。
あの人は帰ってくることが少なかったから、キャシーは寂しがっていたけど、帰ってきたらちゃんと家族サービスはしてくれた。
キャシーが冒険者になりたい、って言った時はあの人、とても反対していたっけ。
それでもあの人に憧れていたって言われた時、素っ気ないふりしていたけど、陰で泣いていたよね。
あの人が死んだ時、遺品をかき集めてあの木の下に墓を作った。
骨とか、集められなくてごめんなさい。きっと帰りたかったよね。
お酒に弱くて、すぐ泣いて、いびきがうるさくて、でも私にとってのヒーローだった。
ああ、そうか。あの子は、ダイゴはあの人に似てるんだ。
楽観的に見えて責任感が強いところとか、あの人にそっくり。
だから、ダイゴにならあれを任せられるような気がするのだろう。
「…ケネス」
あの人の名前を呼びたくなった。
おれの手に集まった巨大な質量の炎の塊が『神木』へと走る。
それはただ無慈悲なように見えたが、どこか暖かな光を放ちながら木の大部分を包み込んだ。
見てくださってありがとうございます!




