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P-125 長老達への報告


 長老達の住むログハウスに入るとすでにカルダスさん達がすでに来ていたようだ。

 俺の顔を見た長老が、左手の座を指さした。

 誰も座っていない場所だから、少し気が引けるんだよなぁ。


 胡坐をかいてその場に座ると、他の連中が納得顔で俺を見ている。

 以前、長老からこの場を俺の席とすると発言があったから文句をいう者もいないようだ。だが、この位置はカイトさんやアオイさんが座っていた位置らしい。

 そんな優秀な先人達と比べられるのかと思うと、ちょっと気が重くなってしまうんだよなぁ。


「ナギサが来たから、そろそろ始めるか。遅れる者もいるだろうが、後で教えれば良い。

 さて、ナギサよ。島の状況を教えて貰えぬか?」


「分かりました。以前お渡しした地図より詳しい地図が出来ましたのでこれで説明いたします。2枚お渡しします。長老と皆さんで見ながら聞いてください」


 地図を3枚取り出し、1枚を長老に渡すと、もう1枚を近くの男性に手渡した。

 長老の前の囲炉裏越しに並んでいた男性達が、手渡した地図を床に広げてその周囲を丸く囲み始めた。


「地図の右上に矢印があるはずです。その矢印の方角が北になります。島は大きく西に入り江を広げており、入り江の中は穏やかですが西方向に行くりと潮が流れています。

 残念ながら、その原因はまだわかりません。おそらく入り江のどこかに東からの塩の出口があると推測しているのですが……」


 現在までに作った島の施設を1つずつ紹介したところで、今度は確認事項に移る。


「少人数での開拓ですから現愛のところはそこまでになります。

 乾季明けのリードル漁を行った後に島での作業を再開したいのですが、1つ確認したいことがあります。

 長老の住むログハウスはこの高台の広場の西に作る予定ですが、カヌイのお婆さん達が住むログハウスをどこに作るか迷っています。

 水場の近くで海が見えることが条件とカルダスさん達から教えられましたが、現時点で島に水場がまだありません。

 地下水脈ができるまでに至っていないと考えています。将来的にはあれだけの大きさの島ですから間違いなく湧水は現れるでしょう。

 それまでの期間は、この岩場に大きな貯水池を作って対応しようと考えています。

 この岩場からなら、東と南の海を眺めることができますので、貯水池の傍にカヌイのお婆さん達のログハウスを作ることで納得していただきたいのですが」


「いろいろと考えねばならんことがあるようだが、ナギサはそれに代案を出してくれるから助かるのう。ワシ等の方から同意を取っておこう。その前にナギサの作る貯水地はどれほどの大きさなのだ?」


「南北40FM(12m)、東西80FM(24m)ほどの大きさを考えています」


「シドラ氏族の将来までを考えておるようじゃな。その大きさなら婆さん連中も文句は言うまい……」


 最後の言葉は長老達に顔を向けての言葉だ。長老達が頷いているところを見ると十分説得できると考えているように思える。


「だが、大きすぎねぇか? 作るのも簡単じゃねぇぞ」

「我らが毎日使う水を貯めるのだ。たぶん20日程度を考えているだろうし、我らの数を倍にしているに違いない。

 我等も簡単にできるとは思えん。だが子孫に誇れるものを残すのも我等の務めではないのか?」


 反対ではないのだろうが、その困難さを訴えた人物に長老が諭してくれた。

 将来的には水場ができるだろう。その時にだってこれだけの大きさがあるならいろいろと利用価値が出てくるに違いない。


「次に、島を結ぶ輸送船に関する提言です。

 現状では必要ありませんが、ある程度島に定住する者達が出てくるときには必要と考えています。

 島で出来た燻製と野菜を運ぶための輸送船は、高速であることと大型の保冷庫を持つ必要があるでしょう。

 保冷庫は島の保冷庫並みに十分に冷やすことができるものでなくてはなりません。

となれば、島の保冷庫より少し小さな保冷庫を作り高速船への搭載を行うことになろうかと。将来の野菜の輸送も考えれば保冷庫は2つほど必要に思われます」


 長老は黙ってうんうんと頷いて聞いてくれた。

 ある程度は考えていたのだろう。カルダスさんが魔道機関を3機搭載すると言い出すぐらいだからなぁ。


「かつて魔石12個を使う魔道機関を2つ搭載したカタマランを、トウハ氏族のアオイ様が作られたそうだ。あまりの速度に水面から船体が浮かんでいたらしい。

 その船は妻であるナツミ様が詳細な設計図をドワーフの職人に渡して作らせたようだが、何か足りぬようで何度改良しても水面に浮かぶような速度を出せなかったと聞いておる。

 軍船に技術が使われるのではないかと危惧したのであろうな。

 そこまでの速度は出せずとも、我等が漁に使うカタマランより速い船は、魔道機関の強化で適うだろう。カタマランの大きさもかなりの物になるに違いない。

 いつごろまでに必要だろうか? 急に作れるとも思えぬ、あらかじめ工期と予算を考えねばなるまい」


「島の開発には、やはり資材が必要です。台船を使って運んでいますが、ザバンを大型化したものですから搭載量がそれほどありません。保冷庫を付けない状態で早めに欲しいと思っています」


 とはいえ予算が問題だな。

 あまり高いとリードル漁の魔石の上納が多くなってしまうだろう。魔石の売り上げを少しずつ貯めてカタマランを更新するのがネコ族の基本だからなぁ。


「リードル漁の上納を増やすことになるってことか……」

「下手な連中は余り取れないようだ。その辺りも考えなくてはなるまい……」


 男達の間で呟くような声が聞こえてくる。

 誰もがたくさん採れるわけではないようだ。バゼルさんが20個を超えることが無いようにしているのは、そんな人質から羨まれることが無いよう配慮しているんだろうな。


「昔はたくさん採れたが、今では数を制限していることも確かだ。それはそれなりの理由があるのだが……。

 魔石15個で線引きすれば問題あるまい。

 魔石15個以上を得たものは氏族に魔石を2個ということにするぞ。更に魔石を得られる者もいるだろう。20個を超えたなら3個とすれば良い。

 カルダス、これで不満は出るだろうか?」


「ほとんどが魔石2個を納められそうだ。3個を納められるのは10人程いるんじゃねぇか?」

「前回は17個だったな。俺は2個納められるぞ!」

「俺は上手く当たれば3個ってことになりそうだ」


 だんだんと騒がしくなってきたが、長老達やカルダスさん達は笑みを浮かべている。

 煽ったということなんだろうな。


「静まれ! 全くしょうがねぇ連中だ。そう言うことで次のリードル漁は思い切り漁ができそうだ。だが、慌てることはねぇ。いつも通りに模様が浮き出たリードルを突けば良いんだからな」


 カルダスさんが、一喝するとログハウス内が静かになった。

 筆頭という役職は大声の持ち主でないと務まらないのかもしれないな。


「ナギサは、リードル漁が終わるまでに、どんな船を作るかをもう少し詳細にして欲しい。大きさと使う魔道機関を明確にしておけば我等で商船と交渉もできよう。

 次は雨期になるが、引き続きナギサに任せるぞ。カルダスは漁に専念して欲しい。ナギサの補佐はバゼルとガリムに任せる」


 カルダスさんが残念そうな顔をしてるんだよなぁ。この場は何も言わずに、長老と個別に調整するに違いない。

 俺の話が終わると、2、3の質問が長老からあった。

 サンゴの移植について聞かれたんだが、サンゴの一部を折り取って岩の割れ目に差し込んでいることを伝えると、感心してくれた。

 

「直ぐに小魚がやってくるじゃろう。先は長くとも、是非続けてくれ」

「大きいのを持って来ても良さそうに思えるが?」


「ニライカナイの海は龍神様の海じゃ。なるべく壊さぬようにすべきじゃろう。1FM(30cm)ほどならば、数年で元に戻るじゃろう」


 自然破壊は最小に、と言うことなんだろう。

 とはいえ地上部分は問題ないらしい。炭を作るためにあちこちの島の木を切り倒しているし、土を運んで畑も作っているぐらいだ。

 

 部屋の中を見渡して、他に質問が無いことを確認したところで、長老の住むログハウスを去ることにした。

 カルダスさん達には、これから長老の問い掛けがあるんじゃないかな。

 恨めしそうな顔をして俺が立ち上がるのを見ていたけど、まだあの中に加わる年代ではないことは間違いない。

 早めに帰って商船がやってくるのを待つことにしよう。


 トリマランに戻り、タツミちゃん達とワインを飲みながら長老達との話をしてあげる。

 宿題は運搬船だと話したんだが、あまり大きいと操船が難しいと言われてしまった。

 その辺りが課題だけど、場合によっては台船をタグボート代わりにできるはずだ。

 積載量と速度を重視して、構想を練ってみよう。


「漁には何時出掛けるにゃ?」

「バゼルさんが誘ってくれるんじゃないかな? 明日声を掛けられなかったら、ガリムさんに話をしてみるよ。少なくとも2日間は休みを取ろう。

 銛も研がないといけないし、トリマランの水瓶もあまり残ってないんじゃないか?


 先ずは水汲みからかな?

 その後は漁具を調べてみよう。錆は出てないと思うんだが、手入れをすればそれだけ長く使えるはずだ。

 それと、板を作るためのノコギリの案も途中で止まっていたっけ。

 クランク機構を使えばある程度自動化できそうなんだよなぁ。ノコギリへの送り機構は斜路を作って材木の自重でノコギリに当たるようにすれば良いんじゃないかな。

 どんな具合に組み合わせるかをゆっくり考えてみよう。


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