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P-122 皆で力を合わせて


 3日間サンゴを移植したんだが、入り江が大きいからなぁ。それほど広く移植できなかった。

 今度は測量を始めるけど、サンゴの移植はガリムさん達が交代で行うことになったらしい。

 ザバンの下に竹で編んだ大きなカゴを吊るしてサンゴを運ぶ方法は、石運びにも使えるということでザバンを連結した台船の下に丈夫なカゴを吊るしたようだ。

 

「東と南北に道ができてるにゃ!」

「見通せるだけだから、道とは言えないと思うな。でも、森から外に測量が進められるね」


 高台に最初に作った測量点のように、半ば埋もれた石を探して『×』印を刻む。

 後は三角測量を繰り返すだけだ。先ずは東の岩場を目指す。

 ここには大きな貯水池を作りたいから、森の中の広場と桟橋との高さも重要になるんだよなぁ。

 南はだんだん下っているようだが、耕作地の灌漑用水も考えないといけない。

 さすがに雨季は必要ないかもしれないけど、乾季は雨がたまにしか降らないからね。

 10日もカンカン照りなら、作物が枯れてしまうだろう。


 岩場の大きさは東西約150m。南北は100m程ありそうだ。傾斜が40度近くあるから、下手に登ると崩落しそうだな。だが、この石を使えば色々な施設ができそうだ。

 何せ俺の頭ほどの石ばかりだからねぇ。

 

 10カ所ほど動きそうもない石を新たな測量点にして岩場の全体像を何とか測量した。

 タツミちゃん達が夕食の準備を手伝いに出掛けたので、トリマランには俺一人だ。

 測定した測量点を、大きな紙に落とし込み、その地図を作る。

 断面図も作ってみたけど、やはりもう少し測量点を増やした方が良さそうだ。だけど、足場が悪いんだよなぁ……。


 貯水池の大きさも考えないといけない。

 将来を見込んで2千人の住民が20日間消費する量は、1人1日2ℓとするなら40㎥だ。これに灌漑用の水が必要だし、自然蒸発する水や漏れもあるだろう。

 2倍程度に考えておけば良いのだろうか?

 そうなると80㎥ってことになる。

 蒸発量を抑えるには開口部を小さくして深くすれば良いんだが、誰かが落ちると面倒だ。

 浅くて広い貯水池が基本になるんだろうなぁ……。

 傾斜があるのも問題だ。断面が三角形になってしまうから2倍の広さが必要だろう。

 奥行き8m、横10mで深さが1mの直方体なら、80㎥になる。断面が三角だから、単純に横を20mにすれば目標水量と言うことになるのだろう。

 縁まで満水と言うのはおかしな話だから、最大深さを1.5mほどにして、水量が増えた場合の放水路も作らねばなるまい。

 それと、水をどうやって流すかだ。

 岩場の上方に作れば問題は無いだろうが、岩場の角度は上に向かうほど角度が急になる。それに作る位置の足場も問題だ。俺の頭ほどの磯がゴロゴロだからなぁ。

 やはり揚水機を設けることになるだろうな。その場所は……。


「夕飯にゃ! たっぷり食べて、お酒を早めに切り上げれば良いにゃ」

「そうだね。下手な考えは寝てることと同じらしいから、皆とも相談して来るよ」


 リゾット風のご飯にスパイスの効いたスープをかけて頂く。

 さすがに女性達はそんなことをしないんだけど、男性達は俺と同じようにして食べてるんだよなぁ。

 この方が美味しいと思うんだけど、やはり行儀が悪いと思っているのだろう。


 食事が終わると、いつものように焚き火に集まりココナッツ酒を酌み交わす。

 情報交換や、場合によっては人数の増減の話もここで行われる。


「サンゴの移植はかなり面倒だな。限がないと言っても良いくらいだ」

「それで魚が寄ってくると思えば苦にはならんだろう。それで一カ所でまとめて取っ手は来ないだろうな?」


「さすがにそんなことはしないよ。6つ先の島の周辺だ。明日は東に行ってくるつもりだ」

「それで、まだ潮流の吹き出し口は分からないのか?」


「入り江に広くサンゴを移植してるんだ。その内に見つかるさ。それで石積みの方は順調なのか?」

「先端部まで1FM(30cm)の高さまで積み上げた。今は足元から2FMの高さに積み上げてるぞ。完成はかなり先になるだろうな。ここに移住してからも作り続けるように思えてきたぐらいだ」


 やはり気の桟橋を早めに増やすことになるんだろうな。

 竹の桟橋も良いんだけど、あれは仮設も良いところだ。数隻をどうにか繋げる感じだからね。


「ナギサの方は順調なのか?」

「岩場の測量をあらかた終えたところです。岩場を優先したのは、岩場の石を使って貯水池を作るためなんですが、シドラそ族の住人と南の耕作地の水瓶とするとなるとかなり大きなものになりそうです。案外、石の桟橋並みの時間が掛かるかもしれません」


「住民全部が使うんだからなぁ……。石の桟橋を終えてから作ろうと思ってたが、そうもいかんか」

「それに保冷庫と燻製小屋、炭焼き小屋も必要ですよ。燻製小屋は2つ以上作らないと、俺達の漁果に対応できなくなりそうです」


 燻製作業は2日程掛かるらしい。燻製が終わると直ぐに保冷庫に入れるわけにはいかないそうだ。

 1日燻製を行って1日そのまま放置する。その後保冷庫に移動するということだから、かなり面倒な作業なんだけど、爺さん婆さん連中が世間話をしながら行ってくれている。


「場合によっては保冷庫や炭焼き小屋も2つ作らねばなるまい。爺さん連中が文句を言いそうだ」

「それで暮らせるなら十分じゃねぇか。それにトロッコの木道が長くなりそうだから、喜ばれるかもしれんぞ」


 移動はトロッコも使えるし、場合によってはロープ・ウエイと言うことも可能だろう。

 高台の広場まではとりあえず階段を作るとして、将来の移動方法については少し後でもだいじょうぶだろう。


「ギョキョーも作らないといけねぇな。荷下しと燻製小屋への積み出しもあるから、石の桟橋辺りが良いんだが」

「高台に近いくて、桟橋に近いってことか……。傍に水場も欲しいところだな」


 水場は1カ所ではなく何カ所かに作った方が良いだろうな。出来れば流しっぱなしが良いんだが、水量が限られているからなぁ。岩場に水場でもあれば良いんだが、出来たとしてもあの山の緑がもっと増えてからになるだろう。

 

「考えれば考えるほど仕事が増えていくな」

「爺さん達はそれをやったということだ。シドラ氏族が暮らす島ができたんだからなぁ」

「アオイ様達が動いてくれたからじゃないのか? 長老になってもカタマランで他の氏族と色々調整をしていたと聞いたぞ」


 2人のことだから計画的に移住を行ったに違いない。

 そんな2人に比べられるのもなぁ……。


「ナギサも頑張ってるよ。長くこの世界で暮らしたアオイ様達と比べるわけにはいかないさ。だが、感謝しているぞ。これだけ大きな島を見付けてくれたんだからな」

「ここで話し合えば足りないことも分かるからな。全部ナギサの任せるわけにはいかないよ」


 ガリムさん達が慰めてくれたけど、元々が高校生の知識しかないんだからなぁ。こんな事なら、都市作りのシミュレーションゲームでもやっておくべきだったかもしれない。

 

「さて、明日も頑張らねばなぁ!」


 カルダスさんの言葉に、皆が焚き火を後にする。

 明日は南の測量を始めよう。

                ・

                ・

                ・

 南に下がりながら測量を続けていたある日。

 シドラ氏族の増援がやってきた。もっとも3隻だから、2家族が新たに増える勘定になる。今度戻るのはカルダスさんになるようだ。


「ご苦労だったな。島に変わりはないのか?」

「皆よくやってるよ。漁果は少し減ったようだが商船の方は余り気にしていないようだな」


「10家族ほどが抜けているからなぁ。他の氏族の漁果で何とかなってるのかも知れねぇぞ」


 カルダスさん達の話を聞くと、あまりこの島の開発に人を送ることもできないようだ。

 それでも、当主よりは増えたことになる。

 そろそろ小屋作りも始めないといけないだろう。

 

 簡単な地図を広げて、最初に作る小屋と場所を確認する。

 色々とあるんだが、先ずは炭焼き小屋と言うことになるらしい。


「2つ並べられるだけの広場ってことだな。大きさはシドラ氏族の小屋と同じで良いだろう」

「島の炭焼き小屋の大きさを知っているのか?」

「俺が図ってきたぞ……。横が8FM(2.4m)で奥行きが10FM(3m)だ。三角屋根で壁は無い」


 小屋はそれで良いとして、炭焼きガマはどうするんだろう?

 

「あのう……。小屋の前に、炭焼きガマを作らないといけないんでは?」

「そうだ! 炭焼きガマがどうなってるのかは調べたんだろうな?」

「あれって、薪を積んで土を被せれば良いんじゃないのか?」

 

 カルダスさんの友人なんだろうけど、かなりそそっかしい人物みたいだ。

 それでもできるんだろうけど、品が悪いと聞いたことがある。

 ここは皆でやった方が良いんだろうな。


「薪を蒸焼にできる窯を作ることになります。大体、こんな形に作れば良いと思うんですが……」


 ツボを盾に半分にして横に並べたような形だ。確か入り口で焚き火をして、後ろに煙突を作るんだったな。

 土を固めて作った炭窯を見学したことがあるのが役に立った。


「ナギサは知っているのか?」

「1度見ただけです。土を掘って作ってありました。でもこの島では土がありませんから石を積んで作ることになりそうです」


「先ずは1つ作るしかなさそうだ。水中の石組よりは楽だろうが隙間はどうするんだ?」

「それぐらいの土は運べるでしょう。石は岩場から運ぶことになりますよ」


 広場からかなり離れた場所に作ることになりそうだな。

 シドラ氏族が今の島に移住した時もこんなことが色々あったに違いない。

 単に小屋を作ると言っても、その役割をきちんと確認して自分の物にしておかないと役に立たないってことになりそうだ。


「海中の作業も飽きてきたからなぁ。皆で炭焼き小屋を作ってみるか!」


 カルダスさんの言葉に、皆が一斉に頷く。

 サンゴの移植も明日はお休みのようだ。女性達も含めると30人近いんだから、案外早くできるかもしれないな。


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