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P-068 見付けた貝に真珠が入っていた


 サンゴの穴の崖際に潜り、サンゴの傘の裏や岩の割れ目を探る。

 シュノーケリングをしている時には下で泳いでいたんだが、いざ潜ってみるとどこかに群れが散ってしまっていた。

 俺の殺気を感じたのかな?

 丹念に探っていると、サンゴの奥に大きなバヌトスを見つけた。

 ゆっくりと銛を近付け銛の柄を握った左手を緩めると、銛が手の中を滑って獲物のエラ付近に突き立った。

 力づくでサンゴの奥から引きずり出すと海面へと浮上する。

 少しカタマランから離れているけど、フィンを付けているからそれほど苦にはならない。

 銛先から獲物を外して、船尾に下ろしたクーラーボックスの中に入れると次の獲物を探す。


 60cmほどのフルンネと中型のブラドを突いたところで一休み。

 タツミちゃんが先に甲板で休んでいたけど、ブラドを2匹突いたらしい。

 クーラーボックスを引き上げて獲物をカゴに入れて保冷庫に移す。

 獲物を捌くのは昼過ぎになるのだろう。


「これぐらいのブラドが沢山いたにゃ。2匹突いて一休みにゃ」

「向こうを探ってるんだけど、フルンネは小さかったな。群れを作るらしいから、そのうちに回ってくると思うんだけどね」


 とりあえずは順調だ。俺が突いた3匹はオカズ認定を外れている。

 今夜の釣果次第では背負いカゴ1つを超えられるんじゃないかな?


 お茶を飲みながら、次に潜る場所をタツミちゃんと確認する。

 タツミちゃんは東に向かうらしい。

 おれは南に行ってみるかな?


 再び漁を始めると、今度はフルンネを見つけることができた。

 1mには届かないが、かなりの型だな。

 慎重に狙いを定めて、先ずは1匹。

 カタマランに運んで次を狙う。

 2匹目を破棄んでいる時に下の方で魚の群れを見つけた。

 大きさからすればブラドのようだな。やはりケオがいなくなったんで群れが移動してきたんだろう。


 3匹目のフルンネを突こうと探していると、群れの姿がどこにもない。

 移動してしまったんだろう。カタマランとの往復時間が無ければ、さらに1匹を追加できたかもしれない。

 素潜り漁でザバンが使われる理由は、たぶんこんなことを避けるためだったに違いない。


 バヌトスを探そうと海底に潜った時だ。

 砂地に、何かあるのに気が付いた

 海底の砂地にいたのは貝だったが、この世界にやってきてから貝を食べたことがなかったんだよなぁ。

 食べられないのだろうか?

 海底のあちこちに点在しているから、少し拾って夜釣りの餌にしてみようか。

 案外、カマルの切り身よりも良い餌になるかもしれない。


 数個拾ってカタマランの甲板に投げ出したところで、再び獲物を探す。

 3匹目は、岩の割れ目の奥に張り付いたバヌトスだった。

 素潜り漁は大きいのが突けるけど、体力任せの漁であることは間違いない。

 無理は禁物だから、再び甲板で一休みを取ることにした。


「この貝を見つけたのかにゃ?」

「そうだよ。南の海底にあったんだ。夜釣りの餌にしようと思ってね」


「あまり取れないから、食べる機会は少ないにゃ。餌ではなく私達が食べるにゃ!」

「なら、もう少し取ってこようか?」

「私も行くにゃ!」


 かなり乗り気だな?

 手カゴまで用意しているぐらいだ。タモ網があるんだから網で袋を作ってみようか?

 貝やロデニルを入れるには都合が良さそうだ。


 休憩を終えたところで、タツミちゃんを連れて南に泳ぐ。

 場所をシュノーケリングしながら確認して、タツミちゃんに教えると、すぐに潜ってしまった。

 夕食が期待できるとなると、やる気が出てくるのが不思議だ。

 世の中を動かす原動力は食欲ということになるのだろうか?

 その辺りは、酒を飲みながらバゼルさんと話しても良さそうだな。

 その前に必要なことは、魚を突くことだ。

 

 再び海底に潜って獲物を探す。

 先ず見つけたのは、バルタスと呼ばれるイシダイだった。

 50cmには少し足りないけど、言い値で売れるんだよね。

 笑みを浮かべそうになるのを必死でこらえながら、獲物に近づき銛を打つ。


 あまり暴れなかったから、魚の急所を銛先が上手く捉えたんだろう。

 とはいえ、次からの獲物はブラドだけになってしまった。

 良いことばかりは続かないってことなんだろう。


 浮かんできたタツミちゃんに素潜りを終えようと伝えると、頷いて語真rくぁんに向かって泳ぎ始めた。

 タツミちゃんも疲れたに違いない。

 やはり素潜り漁は、多くとも1日10匹が良いところだと思うな。


 すでに3時近くになっている。

 南中時を12時にしておいたから、それほど狂わないだろう。ソーラー式のダイバー時計だから、まだしばらくは使い続けられるに違いない。


 ココナッツを割ってジュースを2人で頂く。

 タツミちゃんが手カゴに入った買いを見て、にんまりと笑みを浮かべているんだけど、それほど美味しいのだろうか?


 ジュースを飲みながら慣れた手つきでタツミちゃんが魚を捌き始めた。

 フルンネ2匹は甲板で捌いていたけど、その他はいつものテーブルで行っている。

 次の船にはもう少し良いものを揃えてあげたいな函の上に載せた板ではねぇ……。


 魚を捌き終えると、今度貝の入ったカゴを保冷庫から持ち出した。

 包丁で貝を2つに割っているけど、見てる方が冷や汗ものだ。

 小さな包丁みたいなものがあれば良いんだろうけど、商船で探してあげたほうが見ている俺の精神衛生上も好ましく思えてならない。


「あったにゃ!」

 

 突然大きな声を上げた

 何があったんだろうと、パイプを咥えながらタツミちゃんに顔を向けると何かを摘まんで嬉しそうに空に掲げている。


「何か見つけたの?」

「真珠にゃ。この貝にはたまに入ってるにゃ」


 思わずベンチから腰を上げてタツミちゃんのところに行って、手の中の真珠を見せてもらった。

 直径は俺の小指の詰めぐらいの大きさだから1cmには満たないだろう。5mm以上はあるんじゃないかな。

 きれいなピンクが混ざったような乳白色だ。

 でも天然ものなら、この世界でも高く売れるんじゃないか?


「きれいだね。イヤリングにしたら良いんじゃないかな?」

「貰っても良いのかにゃ?」


「もともと餌にしようと取ってきた貝だし、沢山採ったのはタツミちゃんだろう? タツミちゃんの好きに使っていいよ」


 う~んと考え込んでしまった。

 1個だけだからね。イヤリングなら2個は必要か。

 でもまだ10個以上貝が残ってるんだから、もう1個ぐらいはあるんじゃないかな。


 一服を楽しみながら、タツミちゃんが買いを開いている姿を見守っていると、何度か嬉しそうな声を上げている。

 貝を全て開いた結果、何と真珠が4個も見つかった。

 20個以上あったはずだから2割近くに真珠がじゃ行っていたということになるんだろう。

 天然物では、それほど採れるものではないと聞いたことがあるけど、この世界は少し違うようだ。


「本当に貰っていいのかにゃ?」。

「良いよ。暮らしは漁で立てられるんだし、タツミちゃんにはいつも苦労を掛けてるんだからね」


 俺の話を嬉しそうに聞いたタツミちゃんだけど、今度竹串に貝の身を刺し始めた。

 どうやら、竹串に刺して炙り焼きにするみたいだ。

 新鮮だから生でも食べられるんだろうけど、ネコ族の人達は必ず熱を通すようだ。俺としては刺身が食べたいときもあるんだけどね。

 地理的には熱帯地方に位置するはずだから、生物に足が付くのが早いのかもしれない。

 それを防ぐために熱を通して食べるんだろうな。


 だんだんと日が傾いてきた。

 夕暮れ前に夜釣りの準備をして、ランプを2つ釣るし終える。

 夕暮れが始まるころに夕食が始まる。

 竹串に刺した貝は一度焼いたところで魚醤を付けて再度炙ったようだ。

 これは中々だな。

 できれば、ココナッツ酒を飲みながら頂きたいところだ。

 

 明日は帰投することになるから、夜釣りは早めに始める。

 俺がブラドを1匹釣り上げたころに、夕食の後片付けを終えたタツミちゃんが参加してくる。

 3時間ほどで、10匹程度の魚を追加して竿を畳む。 

 最後は、開いた魚を屋形の屋根に干して今日の仕事がすべて終わりになった。


「しかしあの貝に真珠があるとはねぇ……」

「売れば1個銀貨2枚以上になるにゃ。大事にするにゃ」


「素潜りでは崖の割れ目やサンゴの下ばかり見てたけど、海底も見合いといけないんだな」

「あまり見る人はいないにゃ。そんなに息続かないにゃ」


 だよなぁ……。

 短い潜水時間だから、どうしても獲物を探すことが優先してしまう。

 あの貝の色は黒だから砂地では良く目立ったのだが、砂の色は千差万別だ。茶色の砂地だったら先ず見つけることはなかったに違いない。


 2日間の漁を語り合いながらワインを飲む。

 明日の夕暮れ前には島に到着できるだろう。商船が来ていれば良いんだけどね。


 翌日は朝から忙しい。

 屋根のザルを回収して、保冷庫に一夜干しを入れるのは2日tが狩りの仕事だけど、タツミちゃんはその後で朝食作りがあるからね。

 最初に起きて、とりあえずご飯を炊いていたようだけど、ご飯の後はオカズ作りだ。もっとも、スパイスの効いたスープを掛けて食べるから、スープがオカズでもあるんだよなぁ。


 朝日が昇る前に朝食を終えると、俺達を率いてきたオルバスさんの船に向かってカタマランを進ませる。すでに2隻が近くに集まっているから、白旗を操船櫓の後ろに立てて準備が出来ていることを示すことにした。


「まだ朝食中なのかな?」

「カマドが1つだと、中々作るのが面倒にゃ。大きなカタマランなら必ず2つ付いてるにゃ」


 プレッシャーを感じるけど、もう2年ぐらいはこの船に乗ることになるんじゃないかな?

 とはいえ、確かに甲板が小さいんだよなぁ。

 リードル漁で頑張って上級魔石を手に入れなければなるまい。

 色々と付け加えたい装備もあるし、何と言っても遠くまで漁に出掛けられそうだ。

 


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[一言] お願いです、誤字報告受付解禁してください。 本作含めて好きなのですが、校正していないので時折酷く読みにくいのです。
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