病〜やまい〜
第2章 病
さちこの父風駕はその日からさちこと話すことが少なくなった。
丸一日、一回も話さない日や、一回も目をあわさない日もあった。
それどころか、部屋から一歩も出ない日も少なくはなくなってきた。
その様子を毎日見ていたさちこの母風花は堪えきれずに、さちこに聞いた。
「ねぇ、さちこ。いったい風駕となにがあったの?」
「…べ、別に何にも無いよ」
無愛想なさちこに母、風化の勘が働いた。
「あんた、風駕にひどいこと言ったんだな?」
ずいっと近づいてきた母に吃驚して、読んでいた雑誌を落としてしまった。
さちこは不機嫌な顔をしていった。
「だって、あの話し方メッチャキモイんだよ?おかかはなんでおパパと結婚したの?」
逆に、問う。
すると風花は何かひらめいたときのように手をポンと鳴らした。
「そっか…あんたに入ってなかったっけな」
「何を?」
興味がないと言ったような声で聞く。
「あんたの姉のこと」
「はい!?」
さちこが驚愕の声を上げると、風花はやっぱりな。というような顔をしていた。
風花はさちこに姉のことで知っている限り総てのことを話した。
さちこには2人、姉がいた。
1人は都市の近く中のよかった姉。
そしてもう1人はさちこの知らない姉。
さちこはもちろんその姉の存在を知らなかった。
その姉は5歳のとき無理矢理、或るヒトに引き取られたのだという。
そのときのショックで風駕は心の病になってしまった。
それが10年ぐらい続いたとき、次は仲の良かった姉が風駕の前で残酷な殺し方で殺された。
その日から心の病は深くなってしまった。
そして、あと一人。
残された子"さちこ"を一生懸命守ろうとしてあんなふうになってしまったという。
あれでも、毎日必死にさちこだけには暗い顔を見せまいとがんばっているのだという。
このことをいつになく真剣に聞いていたさちこは、風化が話し終えた後、無言で自分の部屋へといった。
その夜。
さちこは考えた。
深く、深く…




