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「いちいちそんなこと言わなきゃなんねーの?」
・・・・・・・・・・・
そんな言い方しなくたって・・・・
あたしは電車の窓から流れる景色に目をやった。
不機嫌な顔した雄輔の横顔が
窓に映る。
何不機嫌になってんのよ・・・
変なヤツ。
あたしはそれ以上何も言わず
目を閉じた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
それは翌朝のこと。
「昨日さぁ・・・」
「ん?」
昨日窓から雄輔が見えたのを思い出し、
「駅の近くにいたよね。
どこに行ってたの?」
と、いつもの席に座って電車に揺られながら
何げなく口にした。
足も痛くて、心も弱る。
人間、怪我するとダメだね。
いつもならどうってことない一人の帰り道が
妙に寂しくて足も重かった。
雄輔と一緒に帰りたかったな・・・
そう思っただけ。
それなのに・・・・
何か詮索してるように聞こえたか
もしかしてやましいことでもあったのか
それは知らないし
いちいち突っ込む気もなかったけど
あっさりバッサリ切られると
いい気はしない。
何なのよ雄輔!
悪い日ってあるんだろうか。
教室では、雄輔の周りに友達が集まり
何やらマンガの貸し借りが始まった。
その中にあたしは
どう考えても入っていける雰囲気ではなく
あたしも自分の友達のところに行って
話をし始めた。
それからだった。
なんとなく変な距離感が生まれ始めたのは。