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翼よ、あれがパリの灯りだ  作者: 三重野 創


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世界やりなおし機

「とんでもない時代になったよ、レオンくん」

 遙か彼方の西国で、戦争が勃発した。


「国際政治の碩学が何十年も前から発していた警告が、現実のものとなりましたね」

 彼のことは私もよく知っている。裁紅谷姉妹もマークしている人物である。


「なんかさ、極悪事件が毎日のように流れるし、神様もこんなハズじゃなかったと悲しんでるんじゃないかな」

 神、か。いくらなんでもメシヤくんに教えるわけにはいかないな。


「良いニュースもあるにはあるのですが、それを上回る悪事が覆い隠している印象です」

 どんなに非道い時代でも、春になれば桜は咲く。


「ポピュラスならさ、とっくにハルマゲドンが起きてるよ」

 色んな決まり事で雁字搦めになった時、そのように御破算したほうが上手くいくケースもあるだろう。対象が世界となると、人智を超えているが。


「最終戦争、世紀末を思わせる雰囲気はあります」

 ノストラダムスの大預言は、完全に解釈を読み違えて広まってしまった。外れるも何も、世界が滅びるなどどは一言も書いていない。


「人生やりなおし機って道具がSFであるけど、世界やりなおし機なんて話も作れそうだよ」

 メシヤくんは人を見て話題を選んでいる。素っ頓狂な話をして白眼視されることに馴れているため、自然と身についたのだろう。


「人生をやりなおすと、元の人生より悪くなるのがよくある筋道ですね」

 私としては同じ人生を何回も繰り返すほうが恐怖なのだが、諸君たちは違うのだろうか。


「そうなんだよね。たぶん多くの作家たちが、そういうどうにもならない思考をやめさせようと誡めてるんだと思うけど」

 自分が変わらなければ、転生しても状況は同じだと教え諭さなければならない。良識あるクリエイターならば。


「おっしゃる通りです」

 なんでもありは、ストーリーとしてそう面白いものではない。


「たださ、僕はこうも思うんだよ。どんなことがあっても、人生に絶望してはいけないってね」

 マリア嬢が惹かれるのも無理はない。


「生物学的な壁はあるでしょうが、本当にその精神でいたいものです」

 出産可能な年齢や平均的な寿命以外は、後からいくらでも取り返せる。


「生物学的なって言葉が出たけど、そこでも可能性は残しておきたいんだよね。それこそが人生の核となってくる部分だしさ」

 その葛藤をクリアしさえすれば、確かに人類に悩みなど皆無だろう。


「たとえばさ、50・60になったとするよね? あるいは90歳になったとして」

 普通で言えば、間もなくお迎えが来る年齢だ。


「でもさ、僕は人生って何が起きるか分からないって心の底から思うんだよ。その年齢で子供を授かっていない、もしくは独身だったとしても、死にさえしなければどう転ぶか分からないって本気で信じてるんだよ」

 数々の修羅場をくぐり抜けたメシヤくんならではの言葉だな。


「聖書にも出て来ますが、アブラハムの妻・サラは、90歳でイサクを産んでいます。寿命で言えばメトシェラは969歳との記述があります」

 私のほうが遙かに長生きではあるが。


「そうそう、そうなんだよね! そういうのを踏まえていると、生き方も自ずと変わってくるに違いないんだよ。途中で投げ出すなんて、絶対にしちゃいけないことなんだ」

 スポーツが端的に示しているが、最後の最期まで分からないのは、人生も同じである。


 そう、彼の名は藤原メシヤ。諦めの悪い男・・・







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