第三十話
オフ会を終えて家に帰る。そして、ヘッドギアを手に取り、ベッドに寝っ転がって頭に被った。そして《エターナル・リルミナ》にログインした。
宿屋を出て、広場のベンチに腰を掛けて、牛男が来るのを待つ。
(オフ会の時、何かを言いたそうにしていたけど、なんだったんだろう)
気になって考え込んでしまう。気づかぬうちに、何か失礼なことでもやらかしてしまったか? 不安になりつつ俯いて地面を見ていると、その地面に人影が映った。その人影が声をかけてくる。
「お待たせしました」
顔を上げると、おにおんぐらたんさんだった。頭が牛なので、笑顔かと言われると判断しにくいが、今まで見てきた感じでは、笑顔であろう。そして、何かを吹っ切れたように言ってきた
「中央エリアの《エルドリス》に行きませんか?」
突然の提案で、驚きのあまり目を丸くした。ゲーム慣れしていないおにおんぐらたんさんが、まさか中央エリアの《エルドリス》を知っているとは驚きである。
だが、相手から提案してくれるのは、正直ありがたい。なんと理由をつけて《エルドリス》に行こうかと悩んでいたから。微笑み返して返事をする。
「ええ、いいですね。行きましょう」
私たちは街を出て、島のガレオン船が到着する船着き場で、次の便を待っていた。
しばらく待ち、《エルドリス》行きのガレオン船が到着した。こんなに待つなら、街中で待ちたかったが、残念なことに時刻表はない。まあ、仕方がないと思いつつ乗船した。
そして、再び暇な船旅。牛男と二人でベンチに座り、海を眺めている。すると、ふと思い出したように、牛男に質問をする。
「おにおんぐらたんさんは、《エルドリス》で何かやりたいんですか?」
そう質問してみると、わたわたと狼狽え始めた。
「い、いえ、色々な所に行ってみたいと思っただけです」
なんかやけに動揺している。これ以上追及すると可愛そうなので、やめておくことにする。
再び海に視線を向けると、海カモメが平和そうに飛んでいる。すると、隣から視線を感じる。顔を向けると、牛男は顔をそらした。それが面白く感じてしまい、わざと他を見ているふりをして、視線を感じたら牛男を見るということを、何度か繰り返して遊んだ。まあ、牛男には申し訳ないけど、船旅は暇なのだ。船自体がセーフティエリアだし、そもそも敵も出てこない。そして、とうとう中央エリア《エルドリス》の街、《サンクチュアリ・シティ》に到着した。
そして、時間も時間なので、宿屋でセーブをして、街の散策は翌日の楽しみにとっておいた。




