第二十九話
次のオフ会の日になった。前回と同じ場所で待ち合わせなのだが、今回は如月さんが先に待っていた。
「こんにちは。お待たせしました」
「いや、僕も来たばかりですから」
その言葉が本当かどうかは分からないけど、お互い逆ではあるが、男女のやり取り的で嬉しく感じ、ちょっと照れてしまう。
「じゃあ、行きましょうか?」
「どこに行くのか、もう決まっているのです?」
「はい、水族館です。この前の海底エリアで、蓮見さんが楽しそうに魚たちを見ていましたから、一緒に行きたいなって思って」
如月さんは、頭をポリポリと掻きながら、照れたように答えた。
サンシャインシティの水族館に向かう。途中でキャッチに捕まらないように、如月さんと腕を組みながら。本当は腕を組むのが逆な気もするけど、如月さんの方が身長が高いし、恰好も逆なので、他人の目からしたら、この方がしっくりしていたりする。そして、水族館に着いた。
水族館はイベントが二つやっており、一つは『極もうどく展』と『帰ってきた♡性いっぱい展』という、どちらも何とも言えないイベントであった。
片方は青ざめそうだし、片方は赤面してしまいそうだ。如月さんの方をこっそりと横目で見ると赤面しつつ焦っている。どうやらこんなイベントがやっているとは、思わなかったのであろう。如月さんの顔に泥を塗らないために、助け舟を出す。
「こっちの『極もうどく展』を見たいです。今、ゲームが海底エリアだから、いかにも敵として出てきそうで面白そうですしね」
如月さんは、少しほっとした顔をした。入場料を支払って、二人で中に入って行く。
順路に沿って見学していくと、毒を持った生物が沢山いる。正直な所、可愛いとは思えない。どちらかというと、見た目が気持ち悪い。実際の毒を持った生き物って、見た目も毒々しい。
態度には出さないようにしたつもりだが、如月さんは予定と違ったせいか、しょんぼりとしているように見える。せめてショップを楽しもうと綿あめを買ったが、『もうどく展極わたあめ』という名で、見た目も毒々しい綿あめだった。でも食べてみると普通に美味しい。水族館はそこそこで切り上げて、ファーストフード店に入った。
土曜日なので賑わっている。私が席を確保して、如月さんがハンバーガーと飲み物を買ってきてくれた。そして、食べながら雑談をする。
「……なんかすみません。ゲームの中みたいに、綺麗な景色をお見せしたかったのですが」
やはりしょんぼりしている。私は必死にフォローする。
「いやいや、楽しかったですよ。まあ、如月さんはゲームみたいな感じのを見たかったみたいですから、また今度一緒に来ましょうね」
フォローついでに、ちゃっかりと次のデートの約束までしてしまった。
「は、はい、そうですね」
如月さんの笑顔が戻った。牛男の時とは違い、表情がわかりやすい。いや、クール系イケメンなのだが、牛男を見ていたから、人の表情を察する力が鍛えられたのかもしれない。
そんなことを考えていながら雑談をしていたら、何かもじもじとしている。気になるので聞いてみた。
「なんか落ち着かないようですが、どうしました?」
「い、いえ、あのゲームのことでちょっとありまして」
「ゲームのこと? なんですか? 気になるので教えて下さいよ」
話しやすいように、笑顔で聞いてみた。だが、逆に頬を赤くして言いにくそうにしている。なんだろう?
結局、今回のオフ会で、如月さんはそのことを言えないまま、お開きとなった。




