第二十六話
今日も仕事を終えて家に帰る。夕食を食べて早速、ゲームにログインした。そして、街の広場のベンチでおにおんぐらたんさんを待っていた。
なんとなくデート……いや、オフ会の待ち合わせを思い出し、照れ隠しに足をパタパタとさせてしまう。そこへ、おにおんぐらたんさんからメッセージが届いた。
『ログインしました。今、どこですか?』
私はメッセージの着信音に驚いて、慌てて返事を送る。
『広場のベンチに座ってます』
そしてすぐに牛男の姿が見えた。
「お待たせしました」
「いや、私も今来た所ですから」
なんとなく赤面してしまう。まあゲーム内なので赤面仕様はないけど。なんか私だけが意識しているみたいで恥ずかしい。恥ずかしさを誤魔化すために、話題を振った。
「さて、街の外に出て、狩りをしますか?」
牛男が考えるような顔つきをしている。ように見えるだけでよくわからない。普通に人間のアバターならば、表情がわかりやすいが、なにしろ頭が牛ですから。すると牛男が答える。
「いや、街中を散策しませんか?」
「え?」
「あの、えっと、この街は水族館みたいで綺麗だなって。そのまま素通りも勿体ないので、デートでもしませんか?」
これは……デートのお誘い? そして照れている? ひょっとして脈があるのか? と錯覚してしまう。
街中を歩いていると、ドーム状の結界外側を、魚たちが泳いでいる。海底にある街と言っても、深海魚が泳いでいうわけでもなく、大小さまざまで、色とりどりの魚が泳いでいる。その景色に見惚れていると、不意に手に温かさを感じた。
視線を手に向けなくても、その温かさを何かは気づいている。これは手を握られたときの温かさである。
期待をしてしまう。現実の世界で、恰好は逆ではあるが、普通に男女である。考えようによっては、他人に白い目で見られることのないはずだ。いや、恰好が逆だから白い目で見られるのか? 頭の中が混乱してきた。
おにおんぐらたんさんは、どう思っているのだろうと、それとなく視線を向けた。表情を読み取ろうとしても、少し反対側を向いている。照れているのか? そう考えると、思わずにやりと小悪魔的な笑みになってしまう。
「おにおんぐらたんさん、どうしてそっちを向いているのですか?」
そして、握られた手を、むにむにと握り返す。
「い、いえ、あの、その」
動揺しているようだ。何となく嬉しく、そして、どことなく微笑ましい。でも、あまり意地悪はしないでおく。
「一緒にお魚を見ましょうよ」
「は、はい」
これが現実の水族館デートならば、記念にぬいぐるみとかを買ったりするのだけど、売っているのは、サメの着ぐるみなど、アバターの外見を変える物である。流石にサメの着ぐるみを買う気にはならない。せっかくアバターを可愛くしたのに、そんなものを着たら、顔をサメの口から出して、サメに食われたようになってしまう。
街中を散策して満喫した頃には、かなり時間が経過していた。
その為に今日は、これでログアウトすることになった。
宿屋でセーブする。セーブしてもしなくても、今日は何もしなかったので、意味はないのだが、ルーティーンとしてやらないと、気持ちが悪くなってしまっている。お互いにおやすみの挨拶をしてログアウトした。




