第十七話
魔物を倒しながら進んで行く。今更ながらに思う。足場が悪く、靄で視界が良く見えなかったにもかかわらずよく戦えていたな? と疑問が頭に浮かぶ。ラッキーだったのかもしれない。今は靄が先ほどまでかかっていたのか、湿った岩肌に足を取られそうになりつつ戦っている。前回のときとは違う魔物で、岩を纏ったカモシカである。
魔物を倒し終えた直後に牛男が足を滑らせた。
「あいたー!」
不幸中の幸いというやつである。魔物を倒し終えた後に転んでなにより。私はくすくすと笑いながら牛男に回復魔法をかける。
「かっこ悪い所を見せちゃったな」
牛男は苦笑いしつつ頭をポリポリと掻いている。その光景を見て、思わず私も笑ってしまう。『見た目もいまいちだから大丈夫ですよ』と心の中で思ってしまっても、馬鹿正直には言わないでおく。
牛男は立ち上がり、お尻をポンポンとはたいている。いくらリアルに近いゲームと言ってもそこまではする必要ないと再び笑いそうになった。
ゲーム開始時の私と違って、今の私はゲーム自体よりも、おにおんぐらたんさんと過ごす時間が楽しくなっている。見た目よりも人柄に好意を持った。優しさの他に愛嬌を感じる。いや、愛嬌というよりも面白さかな。
雪原エリアほどではないが、山岳エリアも涼しげであった。しかし、魔物と戦っていると熱くなってきて、防寒用コートを脱いでアイテムボックスにしまった。
防寒用コートを脱いでも戦っていると暑くて、今にも汗をかきそうである。まあそこまでは再現されていないから汗の匂いが平気だろうか? とか心配するという問題は起きないけど。魔物を倒し終えたタイミングでオニオングラタンさんが声をかけてきた。
「なんか段々暑くなっている気がしますね?」
その言葉で私はピンときた。
「火山エリアに近づいているせいかもしれませんね」
「VRゲームってそこまで再現されているのですか?」
おにおんぐらたんさんは、まだVR初心者なのでわかっていないようなので教える。
「そうですね。ゲームに寄りますけど、このゲームは寒さが再現されていたように、暑さも再現されているみたいですね。まあ熱くならないと、山岳エリアと火山エリアの境界がわからなくなっちゃいますけどね」
「なるほどです」
私の拙い説明で納得してくれたようだ。そして何度か戦っていると火山エリアに入り込んだ。辺りは熱気が凄く、マグマの川が流れている所がある。マグマの川はごぼごぼと嫌な音を立てて煮立っている。もしもあんなところに足を滑らせて落ちたりでもしたら、HPなんてすべて吹き飛んでしまうであろうかと思えるほどの熱量だ。
ここから直接火山エリアの港町に向かうのもありかもしれないけれど、また安定の遭難になりそうな気がするので、ひとまずセーブをするために、一番近くの町に向かった。
そして、《ファイア・スプリング》という名の街に辿り着く。
宿屋に向かいセーブをする。時間も時間なので今日の探索はここまでにしようということでお開きになった。
ヘッドギアを外すと、部屋のデスクに置いた。そしてまたベッドに寝っ転がる。今日、ゲーム内でネックレスをつけて貰ったことを思い出す。ネックレスをつけて貰った嬉しさによる喜びと、その時の牛男のギャップの面白さを思い出したので、今の私の笑顔は恐らく顔面崩壊レベルで変な顔をしているだろう。
そして、その想いを胸に抱きしめて眠りについた。




