第十二話
早速二人で狩りに出かける。だが、心の中で『急な用事』という言葉が引っかかっている。もしかして、恋人とデートをしていた? リアルのことを聞くのはタブーなので聞けない。もやもやしつつ、狩りを続ける。
ぼんやりとしながら戦っていたら、魔物の攻撃を受けてしまった。
「アニエスさん!」
HPゲージがぐんと減り、私は慌てて気を取り戻した。回復をしつつ、私もメイスで応戦して、なんとか敵を退けた。おにおんぐらたんさんが私の方へと駆け寄ってくる。
「なんかぼーっとしてるみたいに見えますけど、なんかあったのですか? 大丈夫?」
なんかあります。大丈夫ではありません。その優しさのせいでぼーっとなっちゃってるんです! とは言えずにいる。言えないけど、顔に熱気を感じてしまい、慌てて手をブンブンと振りつつ答える。
「いえ、何でもないです!」
「そうですか? 少しお疲れのようですし、街に戻って休憩でもしますか?」
街をぶらつく……それってデートになるのかな~? などと心配して貰っているのに、邪なことを考えつつ、とりあえず街に戻った。
街中を二人で並んで歩く。なんか申し訳なさと気恥ずかしさで、内心身悶える。
すると牛男が声をかけてきた。
「ゲームの中だから身体は疲れないでしょうから、心の疲れかもしれませんね? 気分転換に何か食べますか?」
「はい」
「じゃあ、酒場じゃなくてレストランに行きましょうか」
レストランは酒場よりも金額が少々お高め設定。おにおんぐらたんさんは、装備の為にメルを貯めたいだろうに、私なんかの為に優しいな~。と思いつつレストランに入る。目的が心の疲れをとるということなので、スイーツを食べることにした。私がフルーツタルトを選び、筋肉ムキムキの牛男がティラミスを頼んだ。失礼な話かもしれないけど、なんかアンマッチだな。注文した品が出て来た。
「「いただきます」」
二人でそう言うと食べ始める。フルーツの程よい甘みとさっぱり感がして美味しい。牛男にチラリと目を向けると、巨体故かスプーンにすくったティラミスが小さく見える。その姿を見るとなんか吹き出してしまいそうになる。
ビジュアル的にはともかく、雰囲気的にはいい感じなので、リアルのLINEの連絡先を交換できないかと聞いてみることにした。
「あの……LINEの交換とか出来ませんかね? その方がお互いに合流しやすいと思うんですよね」
あたふたしながら、強引に理由をつける。そんな私を見て笑顔で微笑む。いや、頭が牛だから微笑んでも可愛いとかかっこいいとか思わず、どちらかというと不気味さを感じる微笑みなんだけど……。
「ええ、そうですね。連絡先を交換しておきましょうか。昨日はご迷惑をおかけしちゃったし」
慌てて首を横に振り、否定する。
「いえいえ、迷惑なんて掛かってないですよ」
そして、お互い連絡先の交換をした。




