第十三話
連絡先を交換できたことで思わず顔がにやけてしまいそうになる。だが、この仮想空間では、それが再現されてしまうので、必死にこらえる。にやけ顔にならないうちに話を切り替える。
「そろそろ狩りに向かいますか? 出来れば次の街に向かいたいですけど、今日は無理そうですね」
「アニエスさんはもう大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫です。ご心配をおかけしました」
リアルでの連絡先の交換が出来たことが嬉しくて、おにおんぐらたんさんに、彼女がいるのでは? という不安は今の私の頭からは消え去った。
レストランを出て、更に町の外へと出て魔物を狩る。この辺りはキタキツネが現れる。氷で出来たうっすらと透き通るような見た目をしたキタキツネだが。思わず神秘的な外見に見惚れてしまう。
そういえば、今いたこの街がどこらへんなのかを確認していなかった。昨日、おにおんぐらたんさんが来なかったときは、私一人で倒していた。まさか雪原エリアのスタート地点の街? 嫌な予感がよぎった。
牛男が戦っていたキタキツネを倒し終えると、そのことを相談してみる。
「おにおんぐらたんさん。昨日、おにおんぐらたんさんがいない時に、私がこの街の近辺を一人で狩りをしていたのですが、キタキツネを私一人で苦労なく倒せていたのですよ。もしかしたら、今拠点にしている街って、雪原エリアのスタート地点かもしれません。いったん街に戻って、街の名前を確認しましょう」
「ええ? ほんとに? 吹雪で遭難してスタート地点に着いちゃったのかもしれませんね。このゲームってレベルやステータスが隠れステータスになっていて見えないから、僕たちとキタキツネの強さの差も分からないですしね」
急いで私たちは街に戻った。そして入口の街の名前が書かれた石碑を確認する。【ホワイトキャッスル】と書いてあった。今まで気にしていなかったが、既に存在していた高い建物に視線を移す。嫌な予感に対して、首がギギギギと音が鳴りそうな動きをして。そして、視線の先には氷で出来た城がある。慌てて私は地図をアイテムボックスから取り出し確認する。
はい。嫌な予感は的中しました。ここは雪原エリアの《カラドリウス》からスタートするプレイヤーの街でした。牛男が買った斧は山岳エリアから装備していた物よりも、グレードが高かったので気づかなかった。
「え~、また遭難して振出しに戻った……」
すると、牛男がぷっと吹き出した。
「一人だったら嫌な気分だったかもしれないけど、アニエスさんが一緒で良かったです。一人だとただ迷子になっているという感覚ですが、二人だと冒険をしているという感じがありましたので」
私も釣られて笑ってしまう。
「あはは、そうですね。私も一人だと『これなんの苦行?』ってなってゲーム辞めちゃっていたかもしれないです。おにおんぐらたんさんのおかげで楽しめています」
街の宿屋でセーブをして、今日は落ちることにした。




