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辺境魔法学校  作者: 金暮 銀
【クーデター編】
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第七章 妖怪王国食糧事情(二)

 三日後、神宮寺は剣持に戦略室に呼ばれた。戦略室に行くと、二十代後半の女性が一人いた。女性は身長が百五十㎝で、小柄な体型をしていた。

 女性ははっきりした顔立ちをしており、褐色の肌をしている。髪は黒髪を肩まで伸ばしている。服装はクリーム色のワンピースを着て、紫のショールを肩から掛けていた。


 剣持が柔和な顔で紹介する。

「神宮寺はまだ会っていないから、紹介する。こちらは、ラメッシュ・チョープラーさん。辺境魔法学校のインド分校の副校長をしている」

(この人がウトナピシュテヌ第七席のチョープラーさん。席順でいうと、水天宮先生の一つ上か)


 チョープラーさんが微笑んで、手を合わせて軽く会釈をする。

「初めまして、ラメッシュ・チョープラーです」

 チョープラーは綺麗な日本語を話した。


「初めまして、去年ウトナピシュテヌの末席に加えていただいた。神宮寺誠です」

 剣持が柔らかい表情で教える。

「チョープラーさんは、元語学教師だ。ヒンディ語、日本語、英語、ロシア語、スワヒリ語ができる」


「日本語ができた。良かった。俺なんて、英語すらろくに話せないから、自己紹介すら怪しいものです」

 チョープラーさんが控えめな態度で発言する。

「生きていく上で必要なので覚えました。よろしくお願いします」


 簡単な顔合わせが済むと、チョープラーさんと別れた。

(水天宮先生は死体をインドからも輸入していると話していたな。インドから日本に死体を輸出している業者を知らないだろうか?)


 戦略室の外で待ち、チョープラーさんが外に出てくるのを待った。

 チョープラーさんが一人で部屋から出てきたので、声を懸ける。

「チョープラーさん、実は困った問題を抱えておりまして、相談に乗っていただけないでしょうか」


 にっこりと微笑んで、チョープラーさんが質問する。

「インド産の人肉を買いたい話ですか?」

(さすが、インド分校の副校長をしているウトナピシュテヌだ。常にアンテナを張って情報を集めているんだな)


「そうです。実は食べられるほど新鮮な人肉を集めています。しかも、纏まった量が欲しい」

 チョープラーさんが携帯電話を取り出す。

「わかりました。メール・アドレスを交換しましょう。業者から連絡が行くようにします」

「ありがとうございます」


 神宮寺はメール・アドレスを赤外線通信で交換する。

 チョープラーさんが穏やかな顔で付け加える

「ただし、人肉は私への手数料を上乗せするので、辺境魔法学校に卸す価格よりは高くなりますよ。とはいっても、水天宮さんの提示する価格よりは、ずっと安いですが」


「わかりました。手数料を上乗せするのは構いませんよ。ただ、価格で折り合えるかは、交渉次第ということで」

「お互いにいい取引になるように祈りましょう」


 チョープラーさんと別れる。夜には、『二日後に辺境魔法学校に伺います』とのメールが来ていた。

 二日後、食肉業者を名乗る、クマールなる男が、辺境魔法学校のロービーに現れた。


 クマールは身長が百六十㎝で、痩せた、褐色肌のインド人だった。クマールは頭を剃り上げており、眼鏡をしている。服装は茶のスーツを着て革靴を履いていた。


 クマールが両手で名刺を差し出して、にこやかな顔で挨拶する。

「こんにちは、食肉卸のナンディ・クマールです。肉のことなら何でもお任せください。もちろん、神宮寺さんがお望みのお肉を扱っていますよ」

「ここじゃなんですので、サロンで話しましょう」


 クマールを連れて移動し、サロンの端にある椅子に腰掛ける。

「さっそくですが、お肉の話をしたい。質はどの程度で、価格はいくらですか」


 クマールが柔和な笑みを浮かべて質問する。

「その前に、お肉について何点か質問があります。用途は何ですか? ゾンビ用ですか?」

「バーザック死兵として使うのが目的じゃない。あくまで食用ですよ」


 クマールが愛想よく応じる。

「OK、わかりました。なら、解体して肉と内臓にわけたほうがいいですか? 解体したほうが手間ですが、こちらとしては運びやすい。税関にも言い訳しやすい」

「なら、解体してください。見つかって、荷揚げできないのが、一番困る」


「あと、男性と女性どっちがいいとか、ありますか」

「とにかく、量が必要です。性別の区別はなくてもいい。ただし、子供は入れないでください」

 子供を入れるな、は神宮寺の判断だった。


 クマールは笑って答える。

「大丈夫ですよ。肉なので、価格は重さで決めます。一体いくら、ではないですよ」

「そうじゃない、嗜好の問題です。若すぎる肉は評判が良くないんですよ」


 適当に理由を付ける。

 クマールは、そういうものかと深く聞かなかった。

「そうですか。私は食べないのでわかりませんが、顧客の要望なら聞きます」

「子供を入れないは、くれぐれも忘れないでください」


 クマールが慣れた調子で話を進めていく。

「肉はチルド保存で空輸する方法と、マイナス四十℃で冷凍にして、船便で運ぶ方法があります。チルドの空輸のほうが美味しくいただけます。ですが、空輸は高く付くので量を運ぶなら、冷凍品をお勧めしますね」


「冷凍品の質はどうなりますか?」

「今は冷凍技術が発達しています。解凍法を間違わなければ、冷凍品でも美味しくいただけますよ」


「品質は大事ですが、量が必要なので冷凍の船便でお願いします」

「わかりました。さっそく神宮寺さんの提示した条件で手配します。価格はこれぐらいで、いかがでしょう」


 クマールはメモを取り出して、㎏当りの価格を書き込む。人肉の値段はスーパーで売っている和牛の価格よりは安かった。

(今の時代、人間の価格は、牛より安いのか)


「わかりました。その値段でいいです。まず、五t分を輸入します。どれくらいの日数が掛かりますか?」

「冷凍肉が五tなら大丈夫。当てがあります。お肉は解体する時間を含めても五日以内に発送できます。ただ、船便で羊の肉と一緒に送るので、輸送には二十日ほど見てください」


「支払いは、日本円でいいですか?」

「問題ないですよ。では、二十五日後を楽しみに待っていてください」


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