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辺境魔法学校  作者: 金暮 銀
【クーデター編】
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第六章 着々と進む準備(四)

 神宮寺は粛正官室長の仕事をする。妖怪の登用とシェルターの普請は翡翠と八咫さんに任せた。

 約六週間が経過した日の金曜日、久々に神宮寺の私室に神宮寺、翡翠、八咫さんが揃った。

「城の完成は、どうなっていますか?」


 八咫さんが穏やかな顔で報告する。

「麻美ちゃんがバーザック死兵を貸してくれたから、今のところは順調に進んでます。お米が運ばれてくるまでには、巨大冷蔵庫は完成します」


「家臣の登用のほうは、どうなっている?」

 翡翠が苦い顔で報告する。

「まだ、百に届かん。妖怪の国を作るいうても、そんなの不可能だと決めて懸かられて、半信半疑だ」


「説教童子の件は、どうなっている?」

 翡翠がむっとした顔で告げる

「こちらから接触を試みておるが、警戒されて、返事はない。説教童子は諦めたほうがええかもしれんのう」


 八咫さんが澄ました顔で説明する。

「鬼は京都の敵。京都が摘発と駆除に力を入れておるから、神経質になっているのかもしれん」

「説教童子のたちの勢力は、どうなんだ?」


 八咫さんが理知的な顔で説明する。

「苦しいはずです。おそらく、もう、あらかた仲間を討たれて、集団はちりぢりになって説教童子の元には百名も残っていないでしょうな」

「そんな窮状なら、俺の話に飛びついてもいいようなものだけどな」


「さあ、そこらへんの事情は、ようわかりません」

「わかった。俺が動く。京都と掛け合って、鬼を辺境魔法学校に逃がすように話を付ける」


 八咫さんが表情を曇らせる。

「うまく行くやろうか? 京都は神宮寺さんの提案を呑むとは思えません」


 翡翠も苦い顔をして反対した。

「儂も反対じゃ。京都と接触した事実がばれれば、説教童子は態度を硬化させる可能性があるぞ」

「でも、このままでは、説教童子を含む鬼たちが全滅する」


 八咫さんが冷徹な顔で認める。

「そうなりますなあ」

「なら、何もしない手はない。俺が動く」


 翡翠は渋々の態度を取った。

「御大将の決断なら、是非もなしか」


 翌日の火曜日の夜に、神宮寺は札幌に出て、月形さんの事務所に顔を出した。

 月形さんと葉山さんが揃っていたので、葉山さんにお願いする。

「京都の実力者と話がしたい。説教童子の件だ。説教童子の包囲網を解いてほしい」


 葉山さんは、表情を固くして反対した。

「鬼は人を喰らう。その鬼の王を京都は逃がすわけがない」

「全ては大義と俺の夢のためだ。今は少しでも兵力が必要だ。そのために、俺は説教童子を仲間に引き入れたい」


 葉山さんは神宮寺をきつく見据える。

「でも、説教童子を逃がすなんて、無理だ」

「なんのためのパイプ役だ! こういう時に役に立ってこその仕事だろう。京都との接触を試みてから、意見を言ってくれ」


「わかった。そこまで拘るなら、京都に話を持っていってみるわ」

 葉山さんに京都の接触を頼んだ、その週の金曜日に、葉山さんから札幌の月形さんの事務所に呼ばれた。


 金曜の夜に出向くと、葉山さんが複雑な顔で告げる。

「神宮寺と話がしたい人物が現れた。相手は現京都守護衆の管理官の葉山 莞爾(かんじ)――私の父だ」


「京都守護衆の管理官か。京都では、どの程度の地位の人物なんだ?」

「京都守護衆の管理官は、現場のトップだ。この上には、京都寺社聖会議と呼ばれる京都の魔道師を統括する評議会があるだけだ」


「そうか。現場の最高責任者なら会う価値があるな。説教童子の件についても、話ができるかもしれない。それで、会談の時と場所は?」

「明日の昼に京都の家で会いたい、と」

「随分と急だな」


 月形さんが机の上に黒のスーツを置く。スーツの上にJRと飛行機のチケットを置いた。

「七時四十分の飛行機に乗れば、二時間で伊丹空港に着くわ。そこから車で八十分で、葉山さんの実家よ。会談に五時間掛かっても、その日の内に札幌に戻ってこられるわよ」

「ありがとう、さっそく明日、葉山さんのお父さんに会ってくるよ」


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娘さんをください、ていうか既にもらいました。
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