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辺境魔法学校  作者: 金暮 銀
【クーデター編】
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第六章 着々と進む準備(三)

 翌日、翡翠と八咫さんを連れて、米の確認を名目に、別棟シェルターに入った。

 別棟シェルターは地下十階構造で、地下一階が商店街、地下二階から地下四階が居住区、地下五階がインフラ設備、地下六階から地下十階が、米の冷蔵庫になっていた。


 地下六階の倉庫には、すでに袋に入った米が三万トンほど積まれていた。

 積まれた米袋を見て翡翠が唸る。

「これが、二十万石の米か。かなりの量だな」

「悪い、翡翠。状況が変わった。百万石を一括で払わせてくれ。この下にある七層から十層にも米が入る。米の搬入は九十日後だ。米は冷蔵すれば三年は保つだろう」


 翡翠は感心した顔で告げる。

「百万石の米か。儂はいいが。よく、用意できたの」


 八咫さんが穏やかな顔で申し出る。

「神宮寺さん、ここのシェルターやけど、うちらで自由に使わせてもらうわけには、いきませんやろうか?」

「実は赤虎さんから、きちんと管理をするなら完成までの予算を付けてやる、と申し出があった。俺は申し出を受けようと思う。そうしないと、米が悪くなる」


 八咫さんが薄ら笑いを浮かべる。

「まるで、神宮寺さんの進むべき道を示しているようやね。でも、これはうちらにとってはチャンスでもありますな」

「そうだ。そこで、翡翠と八咫さんにお願いがある。このシェルターを完成させてくれ」


 翡翠が嫌そうな顔をする。

「なんや。御大将は(わし)に、人足の真似をしろと命じるのか?」

 八咫さんが優越感に浸った顔で告げる。

「うちは構いませんよ。翡翠さんは所詮は猫。城の普請は荷が重いやろう」


「城の普請」と聞き、翡翠は慌てて態度を変えた。

「待て、待て、やらんとは言うておらん。城の普請は家臣の仕事じゃ。我らに任せておけ」


「そうか。よろしく頼むぞ」

「それで、ここが完成したら、どうします?」

「ここは単なる米の置き場所ではない。俺の城にする。ここが俺たちの拠点だ」


 八咫さんが、涼しい顔をして発言する。

「拠点は必要です。でも城は、所詮、ただの建造物です。大事なのは支える人です」

「なにが言いたいんです?」


 八咫さんは微笑んで進言する。

「神宮寺さんの夢のため。ここに、神宮さんと共に歩む配下を集めましょう」

「具体的な考えが、あるんですか?」


「あります。ここに妖怪の国を造るといって、妖怪、怪異、悪霊、鬼を呼び込みます」

「妖怪の国ねえ。それで、人材は集まりますかね?」


 翡翠が神妙な顔で告げる。

「御大将、今の世の中、妖怪も鬼も人間たちに住処をことごとく奪われ、息を殺して隠れ住むしかない。妖怪の国ができるとなれば、移住したいと考える奴らは多いぞ」


(人間の権力者がどこまで当てになるか、わからない。なら、ここは行き場のない妖怪を集めて立ち向かったほうが戦力になるかもしれないな。どうせ、福音計画が実行されれば、妖怪も鬼も、消えるしかない)

「わかった。やるか。ここを完成させて、妖怪の国にするか」


 八咫さんが提案する。

「ほな、うちがここの完成を請け負いますから、翡翠さんは妖怪の仲間を集めて、ここに連れてきてください」


 翡翠が、むっとした顔で意見する。

「なんで、儂が、そんな仕事をせにゃならん!」

「うちは京都に眼を付けられていますから動き辛い。それに、妖怪の事情に疎い。その点、翡翠さんは、京都十傑から逃げおおせられるほどに速く、隠密行動に長けている。それぞれ、役割分担ですわ」


 翡翠が了承しないので、神宮寺から命じる。

「わかった。なら、翡翠よ。家臣の登用のほうを頼む」


 翡翠が殊勝な顔で頭を下げる。

「御大将がそう言うなら、儂が探してくるわ」

「では、全ては俺の夢のために頼む」


 八咫さんが柔和な顔で頼んだ。

「それで、神宮寺さん。この妖怪王国の建国をするに当たって、問題もあります。翡翠さんとうちだけでは、人手不足や。もう一人、重臣を増やしてほしい」

「あと一人、増やせか。いいですよ。宛はあるんですか?」


「現代の鬼の王様、説教童子を仲間に加えたいと思います」

 翡翠が不機嫌な表情で、異を唱える。

「おいおい、あの説教好きの小僧か? あまりいい気はせんのう」


「なんだ? 問題があるやつなのか?」

 八咫さんは涼しい顔で勧める。

「ただの説教好きの鬼ですわ。せやけど、鬼の仲間内では人望が厚い。仲間に惹き入れられれば、説教童子の名声で、鬼が仰山と集められます」


(魔法先生の首を取るには、頭数があったほうがいいな)

「わかった。なら、翡翠は説教童子との接触も試みてくれ」


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