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辺境魔法学校 作者:金暮 銀
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第七章 重要な扉が開かれ、翻弄される者(四)

 授業開始になると、魔法先生と剣持が入ってきた。驚いたことに、剣持の後ろには、小清水さんの姿があった。

 だが、直感的に、小清水さんは人間ではないと確信した。学生証として身に着けていた、ハート型の紋章がついた《十六番》と彫られた指輪も、していなかった。

 魔法先生はいつもの笑顔で話を始めた。
「皆さんは、もうダレイネザルに認められた魔道師です。これ以上は授業で人が減る事態もないと思うので、自己紹介をしましょう」

 自己紹介と言われても、三人とも既に知った仲だった。とはいえ、魔法先生がやれというので、知り合い同士で自己紹介し合う、ぎこちない自己紹介を三人で行った。

 最後に小清水さんが残ったが、魔法先生が「日直さんは必要ないので」と飛ばした。

 自己紹介をさせてもらえなかった小清水さんだが、笑っていた。でも、笑顔は、神宮寺が知る小清水さんの笑顔ではなかった。小清水さんの笑顔は、受験会場にいた受付の女性の笑顔だ。小清水さんは、人間ではない、雑用係の人形として帰ってきた。

 魔法先生がいつもの言葉で、授業せずに言葉を続けた。
「もう、皆さんは魔道師用のより強力な魔道書を自由に読める力があるので、これからは魔道師用の図書室で独学してください。会館は十時~十五時三十分までとします。その間、土日も自由に勉強してください。何か雑用がありましたら日直に言ってください」

 魔法先生の横では、もう神宮寺たちの記憶なんて忘れたかのように小清水さんが、ただ笑顔で佇んでいる。神宮寺は小清水さんのそんな笑顔を見ていて、いたたまれなかった。

 魔法先生が言葉を続けた。
「三週間ほど経ちましたら、成果を試すための機会を用意します。内容は簡単です。詳しくは剣持先生が担当しますので、三週間後、剣持先生から聞いてください。力試しは三日もあれば終るでしょう。後は仕上げの学習を六月三十日まで各自で行って、七月一日が卒業式です。卒業式は教室で行います。では、卒業の日に教室で会いましょう」

 魔法先生が教室を出て行く前に、思い出したように戻ってきた。
「そうだ、忘れるところでした。卒業式前日の六月三十日に、選択制の特別演習があります。もし受ける人がいるなら、事前に剣持先生に仰ってください。では、私は、これからロシアの魔法学校との技術交換会に行ってきます。私がいない間は、授業については全て剣持先生にお任せします。では、よろしくお願いしますよ。剣持先生」

 魔法先生は肝心な特別演習の中身がなんなのか言わずに、すぐに立ち去った。

 すぐに月形さんが特別演習の内容を質問すると、剣持は淡淡と説明した。
「魔法先生との戦闘だ。魔道師になったばかりのお前たちが、四週間の勉強をしたくらいで習得できる魔法で魔法先生に勝つのは、杓文字を武器にキラー衛星に立ち向かうくらい勝ち目がない。特別演習は、これから先、お前たちが己より強い敵に遭遇した時にパニックになって最悪の行動を取らないように訓練する授業だ」

 剣持が厳しい口調で注意した。
「ただし、魔法先生との戦闘は、単なる演習ではない。この演習ばかりは、殺し合いに近いため、場合によっては、魔法先生が生徒を殺してしまう事態もある」

 珍しく嘉納が手を上げて、真剣な顔で質問した。
「剣持教官。二つ質問があります。一つ、協力してくれるもんがいたら、協力者から銃や爆薬を調達してもらって、武器を持ち込んでもいいですか。一つ、生徒の側が魔法先生を殺してしまったら、どうなるんですか」

「武器の持ち込みは可だ。魔法先生を殺した場合だが、魔法先生は演習の目的上、殺すつもりで挑んでくるように、と仰っている。下手に手を抜くと、怒りを買って殺されるぞ」

 嘉納はどこか鬼気迫るような顔で聞き直した。
「心構えの話ではないんです。ほんまに殺してしまった場合。演習上の事故として、辺境魔法学校は殺した人間や、協力者、関係した人間の家族に報復を加えたりせえへんのですよね。そこだけは、はっきりさせてください」

 剣持は嘉納の言葉に何かを感じとったのか「魔法先生に確認しておく」とだけ答えるに留めた。神宮寺はこの時、嘉納が辺境魔法学校にやってきた別の目的が見えた気がした。

 嘉納は魔道師になるのも目的の一つだが、できることなら、特別演習を利用して魔法先生の暗殺を試みるつもりだ。
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